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第二十四話 上級社会の生き方
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美術館に来るのは久しぶりね。ここは黒の国で一番大きな美術館よ。美術館の名前はオルセー・メトロポリタン・ルーブル美術館。もちろん表の世界からのパクリよ。
「やはり一流の施設は違うわね」
小百合が田舎者丸出しでキョロキョロと落ち着きがない。
「芸術のたしなみがない庶民はこういう上級民が来る場所には似合わないわね」
「うるさいわね。ちょっと戸惑っただけじゃない」
小百合が戸惑うのも無理ないわ。一般の美術館とは品が違うんですもの。作品の価値はもちろん、見に来ている人だって伯爵以上の人ばかりよ。
「でも、この展示の仕方ってまずいんじゃない? 絵に触ろうと思えば簡単に触れそうよ」
「触っちゃダメよ。ここに展示されている作品は日本円で二兆円以上する物ばかりなのよ」
「ええ!」
小百合は慌てて絵から離れた。本当に庶民なのね。
「私と違ってあなた方は一般市民なんだから絵の見方も知らないのよね?」
気持ちいいわ。今日は私の天下よね。この下々の民に上流貴族とはどういうものか教えてあげるチャンスだわ。
「懐かしいわね。私も小さい頃にはたくさんの絵を描いたわ」
私は見下す目で小百合と芽依を見てやった。
『これは素晴らしい! まさしく天才ですよ。プリンセス様』
『本当にこの歳でこのような絵をお描きになるなんて信じられませんわ!』
「てな感じよ。どう少しは見直したかしら?」
「それって、お姫様だから単に『下手!』って言えなかっただけじゃないの?」
「何ですってー!」
「美術館ではお静かにお願いします」
美術館の人に注意されてしまった。もう、小百合のせいよ!
「私は天才なのよ。城に戻ったら私の作品を見せてあげるわ」
「へえ、そんなに天才ならなぜ今まで言わなかったの?」
「能ある鷹は爪隠すって言うでしょう」
ふん、勝ったわ。所詮庶民は庶民ね。プリンセスの私と張り合おうなんて一万年早くてよ。
「じゃあ、この中で一番凄い絵はどれなの? 理由も教えてくれるかしら?」
「いいわよ。教えてあげるわ」
私は展示されている作品を見て回った。
「そうね。『この考え込む人』も凄いけど、こちらの『叫べ!』もいいわね」
私が呟きながら歩いていると、とてつもなく素晴らしい作品を見つけた。
「これよこれ。この作品はまさしく天才ね」
「これって小さな子どもが描いた様な絵じゃない」
「そこが凄いんじゃない。人には見栄というものがあるわ。だからついつい見栄えを良くしようと体裁を整えてしまうものなの。でもこの作品にはそれが全く感じられないわ。まさしく天才ね」
「でもこんな絵だったら芽依でも描けそうだよ」
「甘い! この域に行くまでにどれだけの修行がいると思ってるのよ。誰でも描けるもんじゃないわ」
「それにしても壁にも掛かってないし豪華な額縁にも入ってないのは不自然よ」
「その発想が庶民なのよ!」
その時小さな男の子がやってきた。
「あ、あった! お母さんこんな所に置き忘れてたよ」
「見つかって良かったわね。せっかく今日の写生大会で描いた絵をなくしたら大変だったわ。美術館主催の写生大会なんて貴重なのよ」
「・・・・・・・・」
「マリー、これはどういうこと? あの絵が一押しなのよね」
『な、何よ! 人間はミスをしながら生きていくものなのよ!』と心の中で叫び続けている私なのだった。
「やはり一流の施設は違うわね」
小百合が田舎者丸出しでキョロキョロと落ち着きがない。
「芸術のたしなみがない庶民はこういう上級民が来る場所には似合わないわね」
「うるさいわね。ちょっと戸惑っただけじゃない」
小百合が戸惑うのも無理ないわ。一般の美術館とは品が違うんですもの。作品の価値はもちろん、見に来ている人だって伯爵以上の人ばかりよ。
「でも、この展示の仕方ってまずいんじゃない? 絵に触ろうと思えば簡単に触れそうよ」
「触っちゃダメよ。ここに展示されている作品は日本円で二兆円以上する物ばかりなのよ」
「ええ!」
小百合は慌てて絵から離れた。本当に庶民なのね。
「私と違ってあなた方は一般市民なんだから絵の見方も知らないのよね?」
気持ちいいわ。今日は私の天下よね。この下々の民に上流貴族とはどういうものか教えてあげるチャンスだわ。
「懐かしいわね。私も小さい頃にはたくさんの絵を描いたわ」
私は見下す目で小百合と芽依を見てやった。
『これは素晴らしい! まさしく天才ですよ。プリンセス様』
『本当にこの歳でこのような絵をお描きになるなんて信じられませんわ!』
「てな感じよ。どう少しは見直したかしら?」
「それって、お姫様だから単に『下手!』って言えなかっただけじゃないの?」
「何ですってー!」
「美術館ではお静かにお願いします」
美術館の人に注意されてしまった。もう、小百合のせいよ!
「私は天才なのよ。城に戻ったら私の作品を見せてあげるわ」
「へえ、そんなに天才ならなぜ今まで言わなかったの?」
「能ある鷹は爪隠すって言うでしょう」
ふん、勝ったわ。所詮庶民は庶民ね。プリンセスの私と張り合おうなんて一万年早くてよ。
「じゃあ、この中で一番凄い絵はどれなの? 理由も教えてくれるかしら?」
「いいわよ。教えてあげるわ」
私は展示されている作品を見て回った。
「そうね。『この考え込む人』も凄いけど、こちらの『叫べ!』もいいわね」
私が呟きながら歩いていると、とてつもなく素晴らしい作品を見つけた。
「これよこれ。この作品はまさしく天才ね」
「これって小さな子どもが描いた様な絵じゃない」
「そこが凄いんじゃない。人には見栄というものがあるわ。だからついつい見栄えを良くしようと体裁を整えてしまうものなの。でもこの作品にはそれが全く感じられないわ。まさしく天才ね」
「でもこんな絵だったら芽依でも描けそうだよ」
「甘い! この域に行くまでにどれだけの修行がいると思ってるのよ。誰でも描けるもんじゃないわ」
「それにしても壁にも掛かってないし豪華な額縁にも入ってないのは不自然よ」
「その発想が庶民なのよ!」
その時小さな男の子がやってきた。
「あ、あった! お母さんこんな所に置き忘れてたよ」
「見つかって良かったわね。せっかく今日の写生大会で描いた絵をなくしたら大変だったわ。美術館主催の写生大会なんて貴重なのよ」
「・・・・・・・・」
「マリー、これはどういうこと? あの絵が一押しなのよね」
『な、何よ! 人間はミスをしながら生きていくものなのよ!』と心の中で叫び続けている私なのだった。
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