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そして朝はやってくる。
俺が家を出ると小百合がいた。
「おはよう」
「どうしたんだ?」
「一緒に登校しようと思って。今日から晴れて恋人同士だし」
「そうか。じゃあ、行こうか」
「そんなに慌てなくても大丈夫よ」
するとその時。
「いや、早く行った方がいいかなって」
「どうして?」
その時、見事にバッドタイミングで、
「あなた忘れものよ」
とハンカチを持ったマリーが家から飛び出てきた。
「何でマリーがいるのよ」
「小百合こそ何してるの?」
「あなた帰ったんじゃなかったの?」
「帰るのを止めたのよ」
「どういうこと?」
小百合は俺の方を見る。
「まさか四郎君が余計なことを言ったんじゃないわよね。『大好きだ』とか」
「いや、そんなことは」
恐るべし女の第六感。
「じゃあ、どうしてマリーがいるのよ」
「私は今日からマリーじゃないの。桂木真理よ」
「真理はわかるけど何で葛城なの?」
「漢字が違うわよ」
その時小百合は重要なことに気付く。
「まさかあなた人間の姿で四郎君の家に泊まったんじゃないわよね?」
「そうよ。食事も葛城家に交じっていただいたわ」
「ちょ、ちょっと。信じられないわ!」
俺は慌てて付け足した。
「芽依の部屋で寝たから」
「どこで寝たって危険なことには違いないでしょ!」
「俺の部屋には真理の両親がいるし」
「あんな毛玉、出し抜こうと思えば何とでもなるわよ!」
「それは絶対無理だと思う」
「とにかくあなたは一気に不利になったのよ。諦めて一人で学校へ行きなさい」
「どうしてそうなるわけ?」
この二人の争いはもう少し続きそうだと思いながら俺は溜息をつく。
「ちょっと聞いてるの?」
二人の声が秋晴れの空高くに響いた。
「ブラックテイルな奴ら」第一部 完
俺が家を出ると小百合がいた。
「おはよう」
「どうしたんだ?」
「一緒に登校しようと思って。今日から晴れて恋人同士だし」
「そうか。じゃあ、行こうか」
「そんなに慌てなくても大丈夫よ」
するとその時。
「いや、早く行った方がいいかなって」
「どうして?」
その時、見事にバッドタイミングで、
「あなた忘れものよ」
とハンカチを持ったマリーが家から飛び出てきた。
「何でマリーがいるのよ」
「小百合こそ何してるの?」
「あなた帰ったんじゃなかったの?」
「帰るのを止めたのよ」
「どういうこと?」
小百合は俺の方を見る。
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「いや、そんなことは」
恐るべし女の第六感。
「じゃあ、どうしてマリーがいるのよ」
「私は今日からマリーじゃないの。桂木真理よ」
「真理はわかるけど何で葛城なの?」
「漢字が違うわよ」
その時小百合は重要なことに気付く。
「まさかあなた人間の姿で四郎君の家に泊まったんじゃないわよね?」
「そうよ。食事も葛城家に交じっていただいたわ」
「ちょ、ちょっと。信じられないわ!」
俺は慌てて付け足した。
「芽依の部屋で寝たから」
「どこで寝たって危険なことには違いないでしょ!」
「俺の部屋には真理の両親がいるし」
「あんな毛玉、出し抜こうと思えば何とでもなるわよ!」
「それは絶対無理だと思う」
「とにかくあなたは一気に不利になったのよ。諦めて一人で学校へ行きなさい」
「どうしてそうなるわけ?」
この二人の争いはもう少し続きそうだと思いながら俺は溜息をつく。
「ちょっと聞いてるの?」
二人の声が秋晴れの空高くに響いた。
「ブラックテイルな奴ら」第一部 完
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