ブラックテイルな奴ら

小松広和

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第四十四章 マリーの変化

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 俺達が黒い渦巻に入ると懐かしの部屋へと戻ってきた。半日ほど向こうの世界に行っていただけだが、もう何日間も経っているかのように感じられる。
「やっと帰ってきたって感じね」
小百合は大きく伸びをしながら言った。
「キュピー」「おあえい」
留守番をしていたはずの二号と三号が俺たちに飛びついてきた。二号はマリーに飛びついたが、三号はなぜか俺に飛びついてきた。何で俺なんだ? こいつのことだからマリーでなかったら小百合か芽依に飛びつくだろうに。
「早速、黒魔術を高める準備をしなくちゃね」
そう言うとマリーは得意の黒魔術で大なべを降らせると材料を揃え始めた。
「あら? マリー、随分と元気になったわね」
小百合が目一杯の嫌みで言う。
「苦労して集めたファイヤードラゴンの髭だもんね」
そんな大人の嫌みなど全く気にしない芽依が無邪気な笑顔で言う。
「素朴な疑問なのだが、お前の魔法で材料を揃えることはできなかったのか?」
「出すものがどんな物質でできているのかを熟知してないと出せないの。それに魔術で出したものを材料として用いても何の効果も出ないのよ。つまり黒魔術で出したものを材料に使った時点でその魔術は失敗することになるの」
なるほど難しいものだな。でもよく考えてみればその通りだ。簡単に魔力を上げられるのなら誰だってしているだろう。
「ところでマリー。あなた尻尾アクセサリーに戻らなくていいの?」
「いけない! 忘れてた!」
マリーは慌てて呪文を唱えると尻尾アクセサリーの姿に‥‥
「え?」
「どうしたんだ? マリー」
「あれ? 変身できない‥‥」
マリーはやや俯きながらぼそりと言った。
「変身できないってどういうこと? 尻尾アクセサリーになれないってこと?」
「そういうことになるかな?」
「ちょっとー? じゃあ、ずっと人間の姿のままってこと?」
小百合は少し強い口調になる。
「まあ。それはそれでいいじゃないか」
俺は鼻の下を伸ばして言った。
「あ! その格好のままだったら公安局に捕まるのか」
「たぶん捕まらないと思う」
「はあ!! どういうこと!?」
「表の世界で立派な功績を挙げた者は人間の姿でいることを認められるの。願いが叶ったんだわ」
マリーは両手を組み、天を仰いだ。二号と三号はマリーの周りをグルグルとまわりながら祝福をしている。
「冗談じゃないわよ! まさか人間の姿のままで四郎君の家にいるつもりじゃないでしょうね!」
「当たり前じゃない。他にどうしろと言うの?」
「前のように私の家に来なさいよ」
「嫌よ! あんな汚い家」
「き、汚いって何よ! 私の家は洋風近代建築で家具だっていいものを揃えているのよ。純和風の築五十年以上のちゃぶ台が似合うこの家と一緒にしないで!」
「何か滅茶苦茶言われてるね。お兄ちゃん」
芽依が俺に向かって小さな声で言った。
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