上 下
48 / 50
第3章 仲良し3人組

第48話 毒キノコ

しおりを挟む
 町での買い物を満喫した私たちは魔王城へと向かっています。最も私はコルクの杖レベル0.3を手に入れただけなんですけどね。

 魔王城への道のりはミーニャさんの能力で瞬く間に帰れる・・・・と思いきや、
「どうせならゆっくり歩いて帰りましょうよ」
とナナカさんが言い出し現在歩行中です。実に時間と体力の無駄ですよね。普段から運動をしていない私にとっては体力の無駄は体に応えます。

 その道すがらナナカさんが何かを発見しました。
「ねえ、この綺麗な色のキノコって食べられるかな?」
「わからん。多分大丈夫だろう」
ミーニャさんの言葉は全く信用できません。
「赤い色だからきっとストロベリー味だよね」
そんなわけないですね。

「よし、帰ったら炊事係に渡すことにしよう」
「ダメです!」
ミーニャさんの常識の無さにも驚かされます。
「どうしたリ-サ。急に大きな声を出して」
「大体に於いて綺麗な色をしたものは毒がある可能性が高いんです!」
「リーサが必死で主張するなんて珍しいな」
毒キノコを食べさせられたら大変ですからね。

「大丈夫なんじゃない? せっかく美味しそうなキノコを大量に見つけたのに」
確かに同じキノコが沢山生えています。
「じゃあ、毒かどうか確かめよう」
ミーニャさんがとんでもないことを言い出しました。
「どうやって確かめるのですか?」
「リーサ、食べてみろ」
「何を言い出すんですか! 絶対に嫌です!」
あまりに予想通りな展開に驚きです。
「生じゃ無理よね~」
「そういう問題じゃないです!」

「仕方ないなあ」
と言いながら、ミーニャさんが辺りをキョロキョロと見ています。
「あいつでいいか」
と言うと前にいたトカゲ型の野生モンスターに小石を投げました。

「ギヤー」
トカゲ型のモンスターがこちらに向かってきます。ミーニャさんを見ても土下座をしないところを見るとレベルの低いモンスターですね。
「ギヤー」
トカゲ型のモンスターは大きな鳴き声を上げ私たちを威嚇しています。

「ほれ、これを食ってみろ」
パク。
「ギヤーギヤーギヤー」
「もがき苦しんでますね」
「やはり毒であったか」
「まだ分からないわよ。人間には無毒でめっちゃ美味しいかもしれないじゃない」
ナナカさん、諦め悪すぎです。

「こっちには紫色のキノコがあるよ。美味しそう」
明らかに毒の色ですよね。
「私ちょうどエコバッグを持ってるから」
「持って帰らないで下さい!」
油断していると毒殺されかねません。

「今度は赤に白い斑点があるキノコ発見」
「それってベニテングダケですよね?」
「毒なの?」
「はっきり毒です!」
「もしかして食べたら巨大化するかもしれないし」
「しません!」

 私たちが魔王城に帰ったときにはもう日が暮れていました。
「ラスボス様、ご無事で何よりです」
「腹が減った。すぐに食事の支度をせい」
「かしこまりました」

「はい、お土産♪」
ナナカさんがエコバッグを差し出したのを見て、私は腕をナナカさんの首に回しこれを阻止しました。この光景は立てこもり犯が人質にするのとほぼ同じです。
「何を言っとるんじゃい!」
「・・・・・・・・」
何とも言えない空気が流れています。
「もう、毒キノコなんて炊事係に渡したらダメじゃない」

「ほう、これはポイズンションビノンですね。珍しいキノコです。早速料理しましょう」
「毒キノコですよね?」
「猛毒です」
「猛毒のキノコを料理してどうするんじゃい!」
「・・・・・・・・」
「毒抜きをすれば大丈夫です。美味しくいただけますよ」
「え? そうなんですか? あらやだ私ったら」
命惜しさにとんでもない言葉遣いをしてしまいました。人間土壇場に追い込まれると何をやらかすかわかりませんからね。

 そして実食。
「とっても美味しいです」
何でしょう、この味覚。今までに食べたことのない味です。まるで体が宙に浮いていくような。天に召されていくような。

 は!
「毒入ってないですよね?」
「大丈夫です。しっかり毒抜きをしましたから」
みんなの言葉が信じられなくなっている私なのでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運命の魔法使い / トゥ・ルース戦記

天柳 辰水
ファンタジー
 異世界《パラレルトゥ・ルース》に迷い混んだ中年おじさんと女子大生。現実世界とかけ離れた異世界から、現実世界へと戻るための手段を探すために、仲間と共に旅を始める。  しかし、その為にはこの世界で新たに名前を登録し、何かしらの仕事に就かなければいけないというルールが。おじさんは魔法使い見習いに、女子大生は僧侶に決まったが、魔法使いの師匠は幽霊となった大魔導士、僧侶の彼女は無所属と波乱が待ち受ける。  果たして、二人は現実世界へ無事に戻れるのか?  そんな彼らを戦いに引き込む闇の魔法使いが現れる・・・。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...