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第1章 運命の出会い

第14話 ミーニャの正体

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 今日はこの宿でゆっくりするそうです。私はクロシッポの毛をさすりながら窓辺に腰掛けてくつろいでいます。この平穏無事な時間が続いてくれればいいのですがそうも行かないようです。

「随分クロシッポはリーサに懐いているんだな」
「そのようです」
「クロシッポの毛は気持ちいいか?」
「はい、とても」
「そうか。クロシッポよ。私の膝に来るが良い。私にもその気持ちいい毛を触らせてくれ」

ピーン! クロシッポが直立不動になりました。
「どうした。早く来ないか」
ギコギコ。クロシッポがぎこちなく進んでいます。
「ほお、確かに気持ちの良い毛並みだな」

 ミーニャさんがクロシッポを撫でながら言っていました。
「おい、クロシッポ」
ピシッ!
「お前震えてないか?」
「キュピー」
「まさかこの私が怖いなんて思ってないわよねー」
ぶるんぶるん。
「良かった。嫌われたのかと思っちゃったじゃない」
ミーニャさんがクロシッポをコツンと叩きます。
「キュピピー!」
クロシッポが逆Uの字になって土下座しています。ミーニャさんてそんなに怖いのでしょうか?

「あのう、ミーニャさん。少し聞いてもいいですか?」
「別にいいぞ」
「ミーニャさんて話し方が突然変わりますが、どちらの話し方が本当のミーニャさんなのですか?」
「こっちだ。可愛い言い方はよそ行きなの。特に親しい人にはこのしゃべり方だ」
「そ、そうですか」
優しいしゃべり方が嘘だったのですね。少し残念です。

「何か不服でもあるのか?」
「いえ、と、とんでもない。お願いですから怒ったような言い方は止めてください」
ドドドドド! やっぱり。

「貴様! ミーニャ様に何を言った!?」
「私は別に素朴な疑問を言っただけで・・・・」
「あら私は怒ってなんかいないわよ」
ミーニャさんが可愛く首を傾げた。
「しかし不服でもあるのかとおしゃっておりましたが」
「あれは冗談よ」
「お願いですから心臓に悪い冗談は止めてください!」
思わずツッコんでしまいました。

「私は怒ってないからお前達は引き上げていいぞ」
「いえ、ミーニャ様に何かあっては大変です。こちらのブラックデーモンキングに護衛させましょう」
ひぇーーー! これまた心臓に悪そうな怖いモンスターです。絶対に指先一つで人を殺せるタイプだと思います。

「いやいらん! 私を誰だと思っているのだ? 私こそこの世界のラスボ・・・・おほん。この世界で一番の美少女よ!」
ミーニャさん。誤魔化すの下手すぎです。でも、今ラス何とかって言いました? ラスの付くご職業でしょうか? ラスと言えばラスク? これは食べ物ですね。絶対に違います。ラスト? 最後ですよね。何か怖い響きです。
「しかし・・・・」
「私の命令に逆らうのか?」
「滅相もございません!」
怖いモンスター達が帰って行きます。

 それにしても何でしょう。もうラスの付く言葉を思いつきません。あ! もしかしてラスボス? まさかそんなはずはありません。ラスボスと言えばこの世界を牛耳る最強のモンスターです。そんな存在がこんな身近にいるはずはありません。それは怖いモンスターを一括して土下座させたりしてますが・・・・。
「ええーーー!!!」
「どうかしたか?」
「な、な、なんでもありませぬ」
やばいです。ラスボスと旅をしているなんてどうしましょう? 私のようなちっぽけな存在など気分次第で消されてしまいます。ああ、神様! 私をお助けください!

「何でいきなりお祈りをしているのだ?」
「べ、別にお祈りなんてしていません」
「嘘をつくと後悔するぞ」
「はい、お祈りをしておりました」
私は思わずクロシッポを抱きかかえてミーニャさんから視線をそらすのでした。
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