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第3章 未来への旅立ち
第36話 ユリナの爆弾発言
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ユリナのアパートに来て二週間の時が流れた。
俺たちはすっかりここの生活に慣れようとしている。そんなある日のこと萌はユリナに尋ねた。
「ねえ、美容室で髪切りたいな。ちょっと気分転換に」
「美容院だね。でもどのくらい切るつもり?」
「そうね。十センチくらい」
「ええ、そんなに切っちゃうの? 今の髪型似合ってるのに」
「もし髪を切って似合わなかったら、薬で髪のばせばいいし」
「よく知ってるわね。カルカロのこと」
「未来なんだから、髪を伸ばす薬くらいあるだろうって思ったのよ」
萌の髪は肩に当たるくらいの長さだ。因みに胡桃の髪は胸あたりまである。
パソコンのことと言い今回の薬と言い萌はどうしてこんなに想像力が豊かなんだ?
「萌の想像力って凄いな。でも、どうして急に髪を切ろうって思ったんだ」
「だって、宮本君と進展ないし、ここらでイメチェンしようかなって」
「いっそのこと坊主にしたら」
突然、胡桃が会話に入ってくる。当然、萌はむっとした顔で胡桃を睨む。
また喧嘩を始めるのかと思ったらそうでもなかった。
「私も美容院行きたいかも。髪先整えたいし」
「じゃあ、一緒に行こう」
「二人で行ってきたら。美容院ならここから百メートルくらいのところにあるから」
「行こう、行こう。美容院てどうせ顔認識ないから」
「萌って本当に凄いな。その通りだ」
「だって、レストランと同じじゃない」
「なるほどね」
こうして二人はユリナに書いてもらった地図を持って出かけていった。萌は想像以上に頭が切れるのかも知れないぞ。
「でも出かけて大丈夫なのか?」
俺は素朴な気持ちで聞いた。
「このところ、警察が捜してる様子もないし、大丈夫じゃないかな?」
「ならいいけど」
「ねえ、それよりお願いがあるんだ」
「ああ、何でも言ってくれ」
「クローゼットの上にある棚から自動たこ焼き機を取ってほしいんだ。踏み台を使って取ろうとしたんだけど、うまく取れなくて」
「何だそんなことか。任せてとけ」
俺は踏み台を借りると自動たこ焼き機とやらを取って渡した。
「やっぱり男の人って背が高いんだね」
ユリナの身長は170cmくらいだと思う。俺は172cm。だとしたら2cm高いことになる。やはり少しでも高い方が・・・・ん? たった2cmじゃねえか。
「ユリナでも余裕で取れるんじゃねえか?」
「こういうの男の人に頼んでみたかったんだ」
ユリナもよくわからない人種かも知れないぞ。
「未来にもたこ焼きってあるのか?」
「あるよ。今、たこ焼きに様々な具を入れて焼くのが流行ってるんだ。烏賊や肉や魚。お菓子だって入れちゃうかな?」
美味しそうな気もするが、はずれもありそうだな。
「今から作って食べちゃおうか」
「いいよ、あいつらが帰ってからで」
「でも、暫く帰ってこないよ。美容院に髪のリフレッシュコースがあって、たぶんそれを頼むことになるだろうから」
ここで俺はとんでもないことに気付いた。
「そういや、あいつらここの言葉を話せないじゃないか」
「心で念じてもオーケーなんだ。どうせかみ切るのもロボットだし。何も言わなかったらリフレッシュコースが付いてくることになっているのさ」
なるほど奥が深いな。でも、萌も胡桃もこのことを知らずに行ったんだろ? 大丈夫なのか?
「だったら先に作るか。腹も減ってきたし。どうやって作るんだ?」
「簡単だよ。材料を入れてスイッチを押すだけ。ランダムに具も入れてくれて、自動で作ってくれるんだ。具は冷蔵庫に入ってる物を適当に入れちゃお」
待つこと数分、たこ焼きがころころ転がってきた。
「いい臭いだな」
「でしょう? このたこ焼き器で作るたこ焼きは天下一品名なんだ。さあ、食べよ」
ユリナは何か嬉しそうだ。いいことでもあったのか?
俺はたこ焼きを一つフォークで刺してほおばった。本当は爪楊枝で食べたいところだが、この世界にもあるのだろうか? まあ、贅沢は言わないでおこう。で、肝心のたこ焼きの中身はするめだった。意外と美味しい。
「美味しいだろ」
「今のところな」
俺はこの先の不安を考慮に入れて言った。
「ねえ、私たちが一緒に生活するようになって二週間が経つけど、ここでの生活はどうだ?」
「ああ。いいと思うぜ」
「それはよかった」
「本当に迷惑かけてるよな」
「そんなことないよ。とても楽しいし。初めは男の人と生活するのって緊張したけど、今は大丈夫」
「ごめん」
俺は思わず謝った。完全にユリナに迷惑を掛けている。
「そんな気にしないで。実は私男性が苦手だったんだ。だから恋人どころか男友達もいない」
「じゃ、かなり嫌だったんじゃないのか?」
「そんなことないよ。でも、一緒に生活してみて良かったと思ってる。もしかして真歴君だからかもしてないけど」
「俺だから?」
「うん。なんか真歴君て話しやすいよね」
「そ、そうか?」
ユリナの意外な言葉に俺は少し照れてしまった。
暫くの間があった後、ユリナがもじもじしながら俺を見た。
「どうしようかなぁ?」
「どうしたんだ?」
「初めての二人きりだし」
「何だ?」
「こんな機会滅多にないもんね?」
「だからどうしたんだ? ユリナらしくないな」
「そうだよね。言っちゃおっと。私、真歴のこと好きになっちゃったみたい」
突然の爆弾発言である。
「な、何言い出すんだ!」
俺は雷に打たれたように体がはじけた。話がややこしくなるだろうが! こんなの胡桃と萌に聞かれたらただでは済まないぞ。一人だけでも恐怖なのに、今回は二人の攻撃を受けることになる。
「私のこと嫌い?」
「もちろん嫌いじゃない。だがしかし・・・・」
「分かってるよ。真歴君には胡桃や萌がいることくらい」
ユリナは俺を見つめ続けた。
「そ、そんなこと急に言われても」
俺は動揺を隠せないでいる。当たり前だ。こんな展開誰が想像できるというのだ。ただでさえ女性に免疫がない俺だぞ。こんな時なんて言ったらいいのかさっぱりわからん。
「でも、この気持ち伝えたかったんだ。伝えないと気が済まない性格だから」
ユリナはフォークでたこ焼きをつつきながら言う。俺は何を言っていいかわからず黙り込んでいた。
「もちろん伝えただけ。付き合ってなんて言わないよ。強力なライバルが多いし」
「言っとくが俺は胡桃も萌も付き合ってるわけじゃないからな」
「真歴君て優しいね」
いや本当のことを言っただけなのだが。
俺たちはすっかりここの生活に慣れようとしている。そんなある日のこと萌はユリナに尋ねた。
「ねえ、美容室で髪切りたいな。ちょっと気分転換に」
「美容院だね。でもどのくらい切るつもり?」
「そうね。十センチくらい」
「ええ、そんなに切っちゃうの? 今の髪型似合ってるのに」
「もし髪を切って似合わなかったら、薬で髪のばせばいいし」
「よく知ってるわね。カルカロのこと」
「未来なんだから、髪を伸ばす薬くらいあるだろうって思ったのよ」
萌の髪は肩に当たるくらいの長さだ。因みに胡桃の髪は胸あたりまである。
パソコンのことと言い今回の薬と言い萌はどうしてこんなに想像力が豊かなんだ?
「萌の想像力って凄いな。でも、どうして急に髪を切ろうって思ったんだ」
「だって、宮本君と進展ないし、ここらでイメチェンしようかなって」
「いっそのこと坊主にしたら」
突然、胡桃が会話に入ってくる。当然、萌はむっとした顔で胡桃を睨む。
また喧嘩を始めるのかと思ったらそうでもなかった。
「私も美容院行きたいかも。髪先整えたいし」
「じゃあ、一緒に行こう」
「二人で行ってきたら。美容院ならここから百メートルくらいのところにあるから」
「行こう、行こう。美容院てどうせ顔認識ないから」
「萌って本当に凄いな。その通りだ」
「だって、レストランと同じじゃない」
「なるほどね」
こうして二人はユリナに書いてもらった地図を持って出かけていった。萌は想像以上に頭が切れるのかも知れないぞ。
「でも出かけて大丈夫なのか?」
俺は素朴な気持ちで聞いた。
「このところ、警察が捜してる様子もないし、大丈夫じゃないかな?」
「ならいいけど」
「ねえ、それよりお願いがあるんだ」
「ああ、何でも言ってくれ」
「クローゼットの上にある棚から自動たこ焼き機を取ってほしいんだ。踏み台を使って取ろうとしたんだけど、うまく取れなくて」
「何だそんなことか。任せてとけ」
俺は踏み台を借りると自動たこ焼き機とやらを取って渡した。
「やっぱり男の人って背が高いんだね」
ユリナの身長は170cmくらいだと思う。俺は172cm。だとしたら2cm高いことになる。やはり少しでも高い方が・・・・ん? たった2cmじゃねえか。
「ユリナでも余裕で取れるんじゃねえか?」
「こういうの男の人に頼んでみたかったんだ」
ユリナもよくわからない人種かも知れないぞ。
「未来にもたこ焼きってあるのか?」
「あるよ。今、たこ焼きに様々な具を入れて焼くのが流行ってるんだ。烏賊や肉や魚。お菓子だって入れちゃうかな?」
美味しそうな気もするが、はずれもありそうだな。
「今から作って食べちゃおうか」
「いいよ、あいつらが帰ってからで」
「でも、暫く帰ってこないよ。美容院に髪のリフレッシュコースがあって、たぶんそれを頼むことになるだろうから」
ここで俺はとんでもないことに気付いた。
「そういや、あいつらここの言葉を話せないじゃないか」
「心で念じてもオーケーなんだ。どうせかみ切るのもロボットだし。何も言わなかったらリフレッシュコースが付いてくることになっているのさ」
なるほど奥が深いな。でも、萌も胡桃もこのことを知らずに行ったんだろ? 大丈夫なのか?
「だったら先に作るか。腹も減ってきたし。どうやって作るんだ?」
「簡単だよ。材料を入れてスイッチを押すだけ。ランダムに具も入れてくれて、自動で作ってくれるんだ。具は冷蔵庫に入ってる物を適当に入れちゃお」
待つこと数分、たこ焼きがころころ転がってきた。
「いい臭いだな」
「でしょう? このたこ焼き器で作るたこ焼きは天下一品名なんだ。さあ、食べよ」
ユリナは何か嬉しそうだ。いいことでもあったのか?
俺はたこ焼きを一つフォークで刺してほおばった。本当は爪楊枝で食べたいところだが、この世界にもあるのだろうか? まあ、贅沢は言わないでおこう。で、肝心のたこ焼きの中身はするめだった。意外と美味しい。
「美味しいだろ」
「今のところな」
俺はこの先の不安を考慮に入れて言った。
「ねえ、私たちが一緒に生活するようになって二週間が経つけど、ここでの生活はどうだ?」
「ああ。いいと思うぜ」
「それはよかった」
「本当に迷惑かけてるよな」
「そんなことないよ。とても楽しいし。初めは男の人と生活するのって緊張したけど、今は大丈夫」
「ごめん」
俺は思わず謝った。完全にユリナに迷惑を掛けている。
「そんな気にしないで。実は私男性が苦手だったんだ。だから恋人どころか男友達もいない」
「じゃ、かなり嫌だったんじゃないのか?」
「そんなことないよ。でも、一緒に生活してみて良かったと思ってる。もしかして真歴君だからかもしてないけど」
「俺だから?」
「うん。なんか真歴君て話しやすいよね」
「そ、そうか?」
ユリナの意外な言葉に俺は少し照れてしまった。
暫くの間があった後、ユリナがもじもじしながら俺を見た。
「どうしようかなぁ?」
「どうしたんだ?」
「初めての二人きりだし」
「何だ?」
「こんな機会滅多にないもんね?」
「だからどうしたんだ? ユリナらしくないな」
「そうだよね。言っちゃおっと。私、真歴のこと好きになっちゃったみたい」
突然の爆弾発言である。
「な、何言い出すんだ!」
俺は雷に打たれたように体がはじけた。話がややこしくなるだろうが! こんなの胡桃と萌に聞かれたらただでは済まないぞ。一人だけでも恐怖なのに、今回は二人の攻撃を受けることになる。
「私のこと嫌い?」
「もちろん嫌いじゃない。だがしかし・・・・」
「分かってるよ。真歴君には胡桃や萌がいることくらい」
ユリナは俺を見つめ続けた。
「そ、そんなこと急に言われても」
俺は動揺を隠せないでいる。当たり前だ。こんな展開誰が想像できるというのだ。ただでさえ女性に免疫がない俺だぞ。こんな時なんて言ったらいいのかさっぱりわからん。
「でも、この気持ち伝えたかったんだ。伝えないと気が済まない性格だから」
ユリナはフォークでたこ焼きをつつきながら言う。俺は何を言っていいかわからず黙り込んでいた。
「もちろん伝えただけ。付き合ってなんて言わないよ。強力なライバルが多いし」
「言っとくが俺は胡桃も萌も付き合ってるわけじゃないからな」
「真歴君て優しいね」
いや本当のことを言っただけなのだが。
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