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第31話 草壁君の家
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琉生が店から出て行くのを確認してから紗椰ちゃんが言った。
「次は柚衣の番だよ」
「私もこんなのするの?」
「しないよ。草壁君は頭いいから、きっとすぐ見破られちゃうからね」
ホッ。
「とりあえず明日3人で会いに行こう」
「会いに行く?」
「そう、学校では他の女子がうるさいから、草壁君の家に会いに行くの」
「家って、どこにあるか知ってるの?」
「調べればわかるよ」
何か凄いことになってきた。
「私~、知ってるよ~」
いつの間にか戻ってきた野乃葉ちゃんが意外な言葉を発する。
「何で知ってるの!?」
ちょっと焦る私。
「草壁君の家は~、有名だよ~」
「有名?」
私と沙耶ちゃんは声をそろえて聞いた。
「行ってみれば~、分かるよ~」
次の日の夕方、私たちは野乃葉ちゃんに案内されて草壁君の家に向かった。電車で3駅。世間一般的には近い距離と言えるのだろうが、私たち徒歩通学生にしては遠い。それに紗椰ちゃんは草壁君の家に行ってどうするつもりなんだろう? まさか家に上がったりはしないよね? そんなことして、もし草壁君の両親にでも会ったら何て挨拶していいかわからないよ。『将来のお嫁さん候補の百瀬柚衣と申します』かな?
「絶賛妄想中に悪いんだけど着いたみたいだよ」
紗椰ちゃんが私の背中をトントンと叩いた。
「ここだよ~」
「こ、これが草壁君の家!」
私の目の前には私たちの背丈の2倍はあるだろうという門がそびえ立っている。そして門の奥には学校の校舎より大きいのではないかと思える洋館が建っているのだ。
「柚衣、この話はなかったことにしよう。中園君と末永く暮らせ」
「沙耶ちゃ~ん!」
「冗談だよ。冗談」
「でも野乃葉ちゃんが有名だって言うの分かるわね」
紗椰ちゃんが感心したように呟いた。
「この地域じゃ~、一番の大邸宅なんだよ~」
私ってとんでもない人を好きになっちゃったみたい。
「とにかくインターフォンを探そう」
沙耶ちゃんがあちこち見るが見あたらない。
「これじゃないの~???」
10分後、ようやく野乃葉ちゃんが見つけた。
「おお! 立派すぎて分からなかったぜ」
沙耶ちゃんはそう言うと躊躇なくボタンを押した。
「はい、草壁でございます。どちら様でしょうか?」
男の人の声が聞こえてきた。もしかして草壁君のお父さん? だったら将来のお義父さん? なんちゃって。そんなこと考えてる場合じゃないよ。緊張してきた。
「私は裕哉さんの友達の夏上沙耶と申します。裕哉さんはお見えでしょうか?」
「暫くお待ちください」
5分ほど待つと門が自動的に開いた。自動で開く扉!? こんなのあるの?
「どうぞお入りください」
「はい」
私たちはおそるおそる門を通り玄関へと向かう。極度の緊張感に包まれながら歩くのはある意味お化け屋敷より怖い気がする。
「凄い羊羹よね!」
「何興奮してるの? 漢字間違ってるよ」
「興奮と言うより緊張感で死にそう」
それにしても玄関までが遠い。
わー、凄く広い庭! お花が綺麗! もし、草壁君と結婚したらこんな家に住めるの?
「柚衣、あんた今、中園琉生のことすっかり忘れてるでしょう」
「何で?」
「何となく」
玄関の近くまで行くと一人の老人が立っていた。この人が草壁君のお父さん? わーどうしようどうしようどうしよう!
「落ち着け」
紗椰ちゃんが私の髪の毛をグイッと引っ張った。
「次は柚衣の番だよ」
「私もこんなのするの?」
「しないよ。草壁君は頭いいから、きっとすぐ見破られちゃうからね」
ホッ。
「とりあえず明日3人で会いに行こう」
「会いに行く?」
「そう、学校では他の女子がうるさいから、草壁君の家に会いに行くの」
「家って、どこにあるか知ってるの?」
「調べればわかるよ」
何か凄いことになってきた。
「私~、知ってるよ~」
いつの間にか戻ってきた野乃葉ちゃんが意外な言葉を発する。
「何で知ってるの!?」
ちょっと焦る私。
「草壁君の家は~、有名だよ~」
「有名?」
私と沙耶ちゃんは声をそろえて聞いた。
「行ってみれば~、分かるよ~」
次の日の夕方、私たちは野乃葉ちゃんに案内されて草壁君の家に向かった。電車で3駅。世間一般的には近い距離と言えるのだろうが、私たち徒歩通学生にしては遠い。それに紗椰ちゃんは草壁君の家に行ってどうするつもりなんだろう? まさか家に上がったりはしないよね? そんなことして、もし草壁君の両親にでも会ったら何て挨拶していいかわからないよ。『将来のお嫁さん候補の百瀬柚衣と申します』かな?
「絶賛妄想中に悪いんだけど着いたみたいだよ」
紗椰ちゃんが私の背中をトントンと叩いた。
「ここだよ~」
「こ、これが草壁君の家!」
私の目の前には私たちの背丈の2倍はあるだろうという門がそびえ立っている。そして門の奥には学校の校舎より大きいのではないかと思える洋館が建っているのだ。
「柚衣、この話はなかったことにしよう。中園君と末永く暮らせ」
「沙耶ちゃ~ん!」
「冗談だよ。冗談」
「でも野乃葉ちゃんが有名だって言うの分かるわね」
紗椰ちゃんが感心したように呟いた。
「この地域じゃ~、一番の大邸宅なんだよ~」
私ってとんでもない人を好きになっちゃったみたい。
「とにかくインターフォンを探そう」
沙耶ちゃんがあちこち見るが見あたらない。
「これじゃないの~???」
10分後、ようやく野乃葉ちゃんが見つけた。
「おお! 立派すぎて分からなかったぜ」
沙耶ちゃんはそう言うと躊躇なくボタンを押した。
「はい、草壁でございます。どちら様でしょうか?」
男の人の声が聞こえてきた。もしかして草壁君のお父さん? だったら将来のお義父さん? なんちゃって。そんなこと考えてる場合じゃないよ。緊張してきた。
「私は裕哉さんの友達の夏上沙耶と申します。裕哉さんはお見えでしょうか?」
「暫くお待ちください」
5分ほど待つと門が自動的に開いた。自動で開く扉!? こんなのあるの?
「どうぞお入りください」
「はい」
私たちはおそるおそる門を通り玄関へと向かう。極度の緊張感に包まれながら歩くのはある意味お化け屋敷より怖い気がする。
「凄い羊羹よね!」
「何興奮してるの? 漢字間違ってるよ」
「興奮と言うより緊張感で死にそう」
それにしても玄関までが遠い。
わー、凄く広い庭! お花が綺麗! もし、草壁君と結婚したらこんな家に住めるの?
「柚衣、あんた今、中園琉生のことすっかり忘れてるでしょう」
「何で?」
「何となく」
玄関の近くまで行くと一人の老人が立っていた。この人が草壁君のお父さん? わーどうしようどうしようどうしよう!
「落ち着け」
紗椰ちゃんが私の髪の毛をグイッと引っ張った。
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