上 下
23 / 68
第二章 旅立ち

第二十三話 ええーーーーー!!!!!

しおりを挟む
 私達一行は小さな宿に泊まることになった。このメンバーで初めてのお泊まりだ。何か嬉しいな。
「残念だが大きな部屋は取れなかった。3人と2人に分かれて寝ることになる」
勇者様がフロントから戻ってきていった。
「じゃあ、くじ引きしようよ」
こういう時真っ先に提案するのはどうやらアイラのようだ。

「くじ引きの結果、アイラとクレアとサラ、私と麗華ちゃんで寝ることになった」
勇者様と一緒の部屋だ。ラッキー!
「え? ええーーーーー!!!!!」
「どうかしましたか?」
クレアが驚いて聞いてきた。
「ご、ごめんなさい」

 勇者様と同じ部屋ってことは勇者様と一晩過ごすってことだよね? しかも二人きりで。そんなの無理だよー。い、嫌じゃないけど心の準備が。
「どうした? 顔が真っ赤だが」
「何でもありません」
勇者様、何でこんなに落ち着いてるんだろ?
「あああああと一緒の部屋が良かったな」
「アイラさん、私と一緒の部屋では不満ですか?」
「別にクレアが嫌だって言ってないじゃん」
アイラさんてこんな大胆なこと平気で言うんだ? 凄い凄すぎるよ!

 ガチャ。
「いい部屋だね」
「は、はい」
「ん? どうして入ってこないんだ? もしかして本当に私と一緒の部屋が嫌なのかな?」
「そ、そ、そんなことないです」
私は慌てて部屋に入ると扉を閉めた。

「ふつつか者ですがよろしくお願いします」
「麗華ちゃんて時々面白いね」
勇者様はゲラゲラ笑っている。もう、こっちは真剣なのに。
「麗華ちゃん先にシャワー使っていいよ」
ボンッ! 『麗華、先にシャワー浴びて来いよ』(私にはこう聞こえる)
「わ、わ、私もう寝ます」
どういう態度を取っていいかわからなくなった私は布団に潜り込んだ。

 そして三時間経過。勇者様寝ちゃったのかな? 物凄く静かだけど。 

 ガタ。ええーーー! いよいよ? どうしようどうしよう?

 ガチャ。あれ? ドアの音?

 もう! どうして可愛い女の子が一緒の部屋で寝てるのに何もしないわけ? 私は自分の枕を勇者様が出て行ったドアに投げつけた。

 可愛く・・・・ないか? 私って高校生にもなって子ども体型だし、胸も殆どないし、周りにはクレアさんやアイラさんみたいな美人がいるし、別にサラさんが美人じゃないって言ってるんじゃないけど。

 ガチャ。
「あれ? 起こしちゃったかな? ごめんごめん」
「いえ、そんなことないで・・・・ええーーー! 勇者様が着てるのってワンピース・・・・もしかしてネグリジェ!?」
「ああ、寝る時はいつもこれさ」
「勇者様ってそんな趣味があったんですか!?」
「何を驚いてるんだ?」
「それにしてもウエストは細いし胸だって大きい?」
「寝る時は金属の胸当てを外すからね」

「もしかしてあああああが男だと思ってたのかい?」
「ポチ、どうしてここに?」
「何でもいいけど宿に着くなり僕を犬小屋に繋ぐのはよしてくれないかい?」
「だって・・・・ええーーーーー!!!!! 勇者様が女!? でもでも声だって低いし髪の毛だって短いしかっこいいし」
「残念ながら私は女だよ」
そ、そんな・・・・私の初恋が一瞬で終わってしまった・・・・。

『羊が1568797匹、羊が1568797匹・・・・』
こうして私はある意味眠れぬ夜を迎えるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...