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第二章
第83話:エリス、話し合いに同席する4
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私情をバリバリ含んだエリスは、心の内から煮えたぎるような思いが溢れていた。
公爵家のミレイユに対して、良い印象など一つもない。それなのに、事務的な作業を淡々と進めて、アーニャを精神的に追い込んでいる。
街や村の生活環境に大きな被害を及ぼす、特定環境破壊第二級など知ったこっちゃない! 国と冒険者ギルドの間で定められた規則なんて、どうでもいい!
未来の弟の嫁をいじめる奴は許さない! 幸せ家族計画に向けて、エリスは爆走する!
「公爵家様の指揮下にある兵士は、非常事態に関わる魔物と戦闘せず、厳しい役割を冒険者に押し付けるということですか? 冒険者と兵士の扱いが平等だとは思えません。税を納める民を守る気がなく、金銭だけで解決しようと受け取れる貴族特有の対応は、いかがなものかと思います」
スラスラと言葉が出てきたエリスは、一介の受付嬢が言っていいラインを大幅に超え、ギルドマスターの部屋は凍りつかせた。
フンッ! と鼻息を荒くするエリスの冷酷な目がミレイユに向けられ、敵対の意思表示は明らか。さすがのアーニャも、今日のエリスは怖いわね、と手が付けられないくらいであり、キョロキョロと目を動かして周囲の様子を確認していた。
「エリスくん、場をわきまえたまえ。アーニャくんの担当とはいえ、ミレイユ嬢は公爵家を代表して……」
「同席しろとおっしゃったのは、ギルドマスターですよね。アーニャさんの期待を裏切るな、そう言っていたようにも記憶しておりますが、いかがでしょうか。問題があるようでしたら、お伺いしますけれど? 私は何か間違ったことを言いました……かッ!!」
グイグイとラインを超えるエリスは、ギルドマスターのバランが上司であると忘れている。横から口を挟めない空気を作り出し、アーニャよりも強い圧でバランの口を閉ざすことに成功。アーニャのことで頭がいっぱいになり、後先を考えないエリスは、用もないのに話さないでくださいね~、と、すんんんごいプレッシャーを飛ばしていた。
これには、さすがのミレイユも乾いていない喉を紅茶で潤し、無理やり心を落ち着かせる。
「では、冒険者や兵士と連携が取れないと、アーニャ様もおっしゃっておりましたので、西門を一人でお任せする、という形でいかがでしょうか」
どうしますか、アーニャさん! 言ってやってくださいよ! というエリスの強気な目線と共に、アーニャは注目を浴びた。異様な空気で答えを求められたアーニャは、私に選択肢はないわよね……と、ちょっぴり弱気になっている。
「し、仕方ないわね。それで妥協してあげるわ」
その結果、アッサリと受け入れた。そして、これは世間一般に知られるアーニャの強さを考慮すると、最大限の譲歩になる。未来の弟の嫁を守りたいと思う、エリスのファインプレイであった。
なお、本人はミレイユを打ち負かしたことに清々しい気持ちでいっぱいである。
「わかりました。冒険者ギルドには、私の方から連絡を入れさせていただきます。バラン様も、それでよろしいですか?」
「ミレイユ嬢が許可を出すなら、何も言うまい。アーニャくん、貴重な時間をいただいて悪かったね。当日はよろしく頼む。エリスくんは、ミレイユ嬢を冒険者ギルドまで送って差し上げなさい」
「……えっ?」
やり切ったー、と開放的な気分で浸っていたエリスは、予想だにしない命令をもらってしまう。アーニャの担当という地位を武器に攻め続けたことで、とんでもないブーメランが返ってきたのだ。
失礼極まりないことを言った以上、ちゃんと謝罪をしなさい、という意味が込められているのは、明白だった。
「送って、差し上げなさい」
「はいぃ……」
バランに念を押され、気の抜けた声で返事をしたエリスは、どうしよう、やっちゃった……というオーラが滲み出ている。
「では、話し合いを解散とする。ワシは風に当たってこよう。アーニャくんも、外の空気を吸ってきた方がいいだろう」
エリスとミレイユを二人にして、謝罪させる気満々である。ワシは知らんぞ、と言わんばかりにバランは部屋を出ていく。
「エリス、大丈夫?」
「……はい。全然」
「そう。じゃあ、私はジルの元へ戻るわね。色々助かったわ。でも、本当に部屋を離れても大丈夫? 一緒に残っててもいいわよ」
「……全然大丈夫ですよ。余裕、ですから。……はい」
自分のために頑張ってくれたエリスを気遣うアーニャは、何度も振り返りながら、部屋を後にする。バタンッと閉じられた扉の音が虚しく、ギルドマスターの部屋がシーンッと静寂に包み込まれてしまった。
「エリスさんは、本当にアーニャ様と仲が良いのですね」
「は、はい……。あの、本当にすいませんでした」
全力で頭を下げたエリスの目は、死んでいる。
「いいえ、真っ当な言い分でしたから、お気になさらずに。ですが、仕事中は私情を別にしていただけると助かります」
「今後は、気をつけます……。それで、あの、冒険者ギルドまでお送りいたしますが」
口頭の注意程度であれば、エリスにとってはラッキーである。これ以上、事態が悪化しないようにするため、早くミレイユを冒険者ギルドへ送り届けようと、エリスは思ったのだが。
「お恥ずかしい話ですが、初めてアーニャ様とお会いしまして、少々緊張しておりました。エリスさんからも反撃をいただくとは思っておらず、ちょっと腰が抜けてしまいまして……」
なんと、ミレイユは足にまったく力が入らず、立てなかった。こんなことが実際に起こるのかと本人も驚くほど、足が言うことを聞かない。話し合いの場で貴族がみっともない姿を見せるわけにはいかないと、気合でやり過ごしていたのだ。
そして、話し合いが終わってエリスと二人きりになり、緊張の糸がプツンッと切れてしまったいま、足にバイブレーション機能を搭載しましたー、と言わんばかりにブルブルブルと震え始める。
「だ、大丈夫ですか?」
「予想以上にアーニャ様の圧が厳しく、初めて死を覚悟しました。でも、それ以上にエリスさんが怖くて、ですね」
「そ、そんなにですか!?」
「今まで何度かお会いしましたが、べ、別人みたいですね。公爵家としましては、本当にエリスさんにご迷惑をおかけしたことを反省、いえ、猛省しているのですが……」
エリスが謝罪する場を設けられたはずが、逆に今までの出来事をミレイユに謝罪される展開が生まれる。これには、さすがのエリスも困惑した。
思っていた展開と違う。ミレイユ様、こんなにアタフタとする人だったっけ? と。
「すいません、ちょっと取り乱してしまいまして。実は私は人見知りの心配性で、猫を被っていないと自分を落ち着かせることができず、話し合いや社交パーティーが苦手で、えっと、あの! 文通をしませんかっ!!」
唐突に公爵家の令嬢が文通を求めてくるなど、絶対にあり得ないことである。動揺しすぎなミレイユを見れば、何か言い間違えていることは明らかだった。
謝罪文を書いて公爵家に提出しなさい、ということだと、エリスは察した。
「わかりました。後日、送らせていただき……」
「あーあー! 初めは私から送らせていただきますし、返信用封筒を同封します。専用の封筒を使わないと、私の元へ来るまで色々とチェックが入ってしまうと言いますか、監視の目が厳しくてどうしようもなく、あの、今度送りますから!」
顔を真っ赤にして恥ずかしがるミレイユに、厳格な公爵家のイメージが変わり始める。アタフタする姿が弟のジルと重なり、親近感を抱いてしまったから。
三年前にこういう姿を見せてくれたら、お近づきに慣れていたのかもしれないと思い、エリスはちょっと胸が苦しくなるのだった。
公爵家のミレイユに対して、良い印象など一つもない。それなのに、事務的な作業を淡々と進めて、アーニャを精神的に追い込んでいる。
街や村の生活環境に大きな被害を及ぼす、特定環境破壊第二級など知ったこっちゃない! 国と冒険者ギルドの間で定められた規則なんて、どうでもいい!
未来の弟の嫁をいじめる奴は許さない! 幸せ家族計画に向けて、エリスは爆走する!
「公爵家様の指揮下にある兵士は、非常事態に関わる魔物と戦闘せず、厳しい役割を冒険者に押し付けるということですか? 冒険者と兵士の扱いが平等だとは思えません。税を納める民を守る気がなく、金銭だけで解決しようと受け取れる貴族特有の対応は、いかがなものかと思います」
スラスラと言葉が出てきたエリスは、一介の受付嬢が言っていいラインを大幅に超え、ギルドマスターの部屋は凍りつかせた。
フンッ! と鼻息を荒くするエリスの冷酷な目がミレイユに向けられ、敵対の意思表示は明らか。さすがのアーニャも、今日のエリスは怖いわね、と手が付けられないくらいであり、キョロキョロと目を動かして周囲の様子を確認していた。
「エリスくん、場をわきまえたまえ。アーニャくんの担当とはいえ、ミレイユ嬢は公爵家を代表して……」
「同席しろとおっしゃったのは、ギルドマスターですよね。アーニャさんの期待を裏切るな、そう言っていたようにも記憶しておりますが、いかがでしょうか。問題があるようでしたら、お伺いしますけれど? 私は何か間違ったことを言いました……かッ!!」
グイグイとラインを超えるエリスは、ギルドマスターのバランが上司であると忘れている。横から口を挟めない空気を作り出し、アーニャよりも強い圧でバランの口を閉ざすことに成功。アーニャのことで頭がいっぱいになり、後先を考えないエリスは、用もないのに話さないでくださいね~、と、すんんんごいプレッシャーを飛ばしていた。
これには、さすがのミレイユも乾いていない喉を紅茶で潤し、無理やり心を落ち着かせる。
「では、冒険者や兵士と連携が取れないと、アーニャ様もおっしゃっておりましたので、西門を一人でお任せする、という形でいかがでしょうか」
どうしますか、アーニャさん! 言ってやってくださいよ! というエリスの強気な目線と共に、アーニャは注目を浴びた。異様な空気で答えを求められたアーニャは、私に選択肢はないわよね……と、ちょっぴり弱気になっている。
「し、仕方ないわね。それで妥協してあげるわ」
その結果、アッサリと受け入れた。そして、これは世間一般に知られるアーニャの強さを考慮すると、最大限の譲歩になる。未来の弟の嫁を守りたいと思う、エリスのファインプレイであった。
なお、本人はミレイユを打ち負かしたことに清々しい気持ちでいっぱいである。
「わかりました。冒険者ギルドには、私の方から連絡を入れさせていただきます。バラン様も、それでよろしいですか?」
「ミレイユ嬢が許可を出すなら、何も言うまい。アーニャくん、貴重な時間をいただいて悪かったね。当日はよろしく頼む。エリスくんは、ミレイユ嬢を冒険者ギルドまで送って差し上げなさい」
「……えっ?」
やり切ったー、と開放的な気分で浸っていたエリスは、予想だにしない命令をもらってしまう。アーニャの担当という地位を武器に攻め続けたことで、とんでもないブーメランが返ってきたのだ。
失礼極まりないことを言った以上、ちゃんと謝罪をしなさい、という意味が込められているのは、明白だった。
「送って、差し上げなさい」
「はいぃ……」
バランに念を押され、気の抜けた声で返事をしたエリスは、どうしよう、やっちゃった……というオーラが滲み出ている。
「では、話し合いを解散とする。ワシは風に当たってこよう。アーニャくんも、外の空気を吸ってきた方がいいだろう」
エリスとミレイユを二人にして、謝罪させる気満々である。ワシは知らんぞ、と言わんばかりにバランは部屋を出ていく。
「エリス、大丈夫?」
「……はい。全然」
「そう。じゃあ、私はジルの元へ戻るわね。色々助かったわ。でも、本当に部屋を離れても大丈夫? 一緒に残っててもいいわよ」
「……全然大丈夫ですよ。余裕、ですから。……はい」
自分のために頑張ってくれたエリスを気遣うアーニャは、何度も振り返りながら、部屋を後にする。バタンッと閉じられた扉の音が虚しく、ギルドマスターの部屋がシーンッと静寂に包み込まれてしまった。
「エリスさんは、本当にアーニャ様と仲が良いのですね」
「は、はい……。あの、本当にすいませんでした」
全力で頭を下げたエリスの目は、死んでいる。
「いいえ、真っ当な言い分でしたから、お気になさらずに。ですが、仕事中は私情を別にしていただけると助かります」
「今後は、気をつけます……。それで、あの、冒険者ギルドまでお送りいたしますが」
口頭の注意程度であれば、エリスにとってはラッキーである。これ以上、事態が悪化しないようにするため、早くミレイユを冒険者ギルドへ送り届けようと、エリスは思ったのだが。
「お恥ずかしい話ですが、初めてアーニャ様とお会いしまして、少々緊張しておりました。エリスさんからも反撃をいただくとは思っておらず、ちょっと腰が抜けてしまいまして……」
なんと、ミレイユは足にまったく力が入らず、立てなかった。こんなことが実際に起こるのかと本人も驚くほど、足が言うことを聞かない。話し合いの場で貴族がみっともない姿を見せるわけにはいかないと、気合でやり過ごしていたのだ。
そして、話し合いが終わってエリスと二人きりになり、緊張の糸がプツンッと切れてしまったいま、足にバイブレーション機能を搭載しましたー、と言わんばかりにブルブルブルと震え始める。
「だ、大丈夫ですか?」
「予想以上にアーニャ様の圧が厳しく、初めて死を覚悟しました。でも、それ以上にエリスさんが怖くて、ですね」
「そ、そんなにですか!?」
「今まで何度かお会いしましたが、べ、別人みたいですね。公爵家としましては、本当にエリスさんにご迷惑をおかけしたことを反省、いえ、猛省しているのですが……」
エリスが謝罪する場を設けられたはずが、逆に今までの出来事をミレイユに謝罪される展開が生まれる。これには、さすがのエリスも困惑した。
思っていた展開と違う。ミレイユ様、こんなにアタフタとする人だったっけ? と。
「すいません、ちょっと取り乱してしまいまして。実は私は人見知りの心配性で、猫を被っていないと自分を落ち着かせることができず、話し合いや社交パーティーが苦手で、えっと、あの! 文通をしませんかっ!!」
唐突に公爵家の令嬢が文通を求めてくるなど、絶対にあり得ないことである。動揺しすぎなミレイユを見れば、何か言い間違えていることは明らかだった。
謝罪文を書いて公爵家に提出しなさい、ということだと、エリスは察した。
「わかりました。後日、送らせていただき……」
「あーあー! 初めは私から送らせていただきますし、返信用封筒を同封します。専用の封筒を使わないと、私の元へ来るまで色々とチェックが入ってしまうと言いますか、監視の目が厳しくてどうしようもなく、あの、今度送りますから!」
顔を真っ赤にして恥ずかしがるミレイユに、厳格な公爵家のイメージが変わり始める。アタフタする姿が弟のジルと重なり、親近感を抱いてしまったから。
三年前にこういう姿を見せてくれたら、お近づきに慣れていたのかもしれないと思い、エリスはちょっと胸が苦しくなるのだった。
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