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第四章:火の妖精と王都観光
第40話:王都観光4
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ホウオウさんと馬車に乗り込み、優雅にもてなされている私は、ルンルン気分のまま王城に連れられていった。
そして、王城に到着して、手を差し出してくださる執事の方にエスコートされながら馬車を下りると……、絶句した。
なんと、お出迎えの騎士たちがビシッと整列していて、道を作ってくれているのだ。
いくら火の妖精と女神の使徒とはいえ、おもてなしのレベルにも限度があるだろう。
身分がバレないように、予め異国の貴族の設定でお願いしてあるのに、この扱いは国賓級としか言いようがない。
思わず、私は接待を申し出たことを激しく後悔した。
身に余るおもてなしは、身を滅ぼすと実感している。
唯一の救いがあるとすれば、ここ数日はずっと顔を合わせて、気軽に接することができるようになった王様が出てきてくれたことだけだ。
「よく来てくれた、胡桃嬢。そして、ホウ殿よ」
「お、お招きいただきまして、ありがとうございます……」
「ああ、今日は世話になる」
あまりの緊張感に我慢できない私は、すぐに王様の元に近づき、再交渉する。
「あの、ちょっと大袈裟なので、騎士の皆さんを散らしてもらってもよろしいでしょうか?」
「なぬ? 接待をするのであろう?」
「想像以上の歓迎だったので、気持ちが落ち着きません。王城の案内人をつけていただいて、城内を自由に見学させていただく形でお願いします」
「その程度であれば、別に構わぬが……。いったん王城に招いた後で変更させてくれ。さすがに騎士たちに示しがつかぬ」
「わかりました」
騎士が作ってくれた道を歩んだ後、長旅で疲れたという設定にしてもらい、王様は希望通りに予定を変更してくれた。
背筋がピーンッと伸びた可愛らしいメイドさんに案内されて、ホウオウさんと一緒に城内を探索する。
王様から丁重に扱うように言われているみたいで、廊下をすれ違う人が端に移動して、軽く頭を下げてくれていた。
こういう細やかな令嬢扱いを望んでいた私は、ちょっぴりテンションが高まる。
うわぁ~、お姫様になった気分だーと、子供っぽい思考になり始めていた。
そんな気持ちを表に出さないようにしながら歩き進めて、まず始めに王城の見学に訪れたのは……、城壁である。
城壁の上から眺める王都の景色を眺めてみたかったから。
メイドさんの誘導に従い、城壁に設置された扉を開け、螺旋階段を進むと、すぐにそこにたどり着く。
目の前に広がる王都の景色は、貴族街の大きな屋敷だったり、大勢の人で賑わい市場だったり、車ではなく馬車で行き交っていたりして、異世界らしさを存分に感じられる光景だった。
「程よい高さでいいですね! 王都がしっかりと見渡せますよ」
「ああ、そうだな。人の姿で見える目線では、こういう風に見えるのか……」
私は日本の景色と比較しているが、ホウオウさんは鳥の姿と人の姿で見える景色を比較しているみたいだ。
「こうして街を眺めていると、王都というだけあって、かなり大きな都市ですよね」
「人口が増え続けている影響だろう。街の防壁も大きくなって、居住区も拡大した気がするぞ」
「広場にたくさんのお花が供えられていたのも、人口が増えた影響なんでしょう。このまま火の妖精の信仰者が増えるといいですね」
「どこまでうまくいくかわからないが、現状は悪くない。スラム街ができていないのも、ちゃんと国を運営できている証拠なんだろうな」
言われてみれば、旧市街で手つかずの地域、みたいな場所は見当たらない。
夜はお酒を飲む人でどうなるかわからないが、昼間の景色を見る限り、王都の治安は良さそうに思えた。
「火の妖精が祀られた国は、素敵なところですね」
「そうだな」
接待っぽい雰囲気になってきたなーと思いつつ、私たちは城壁を後にする。
そして、案内役のメイドさんに連れられて、騎士の訓練場にやってきた。
怒号が飛び交うその場所は、とても気軽に近づけるような場所ではない。
「立て! それくらいで疲れてどうする!」
「もっと気合いを入れてぶつかってこんか!」
「休める時に休んでおけよ! まだ訓練は続くぞ!」
国を守る騎士の訓練は、思っている以上に過酷だ。
きっとここまで厳しくしないと、戦場で命を落としてしまうんだろう。
「圧がとても強いですね……」
「騎士の仕事は過酷だ。これくらいのことはしないと、若い命がすぐに失われてしまうぞ」
平和な暮らしを守るために、こうした厳しい訓練をしていると思うと、頭が上がらない。
彼らも自分の命がかかっているので、真剣に取り組んでいる。
こういう真面目に働く騎士たちがいるおかげで、勇者であるお父さんも無事だったのかなーと思うと、ありがたい気持ちで胸がいっぱいになった。
そして、王城に到着して、手を差し出してくださる執事の方にエスコートされながら馬車を下りると……、絶句した。
なんと、お出迎えの騎士たちがビシッと整列していて、道を作ってくれているのだ。
いくら火の妖精と女神の使徒とはいえ、おもてなしのレベルにも限度があるだろう。
身分がバレないように、予め異国の貴族の設定でお願いしてあるのに、この扱いは国賓級としか言いようがない。
思わず、私は接待を申し出たことを激しく後悔した。
身に余るおもてなしは、身を滅ぼすと実感している。
唯一の救いがあるとすれば、ここ数日はずっと顔を合わせて、気軽に接することができるようになった王様が出てきてくれたことだけだ。
「よく来てくれた、胡桃嬢。そして、ホウ殿よ」
「お、お招きいただきまして、ありがとうございます……」
「ああ、今日は世話になる」
あまりの緊張感に我慢できない私は、すぐに王様の元に近づき、再交渉する。
「あの、ちょっと大袈裟なので、騎士の皆さんを散らしてもらってもよろしいでしょうか?」
「なぬ? 接待をするのであろう?」
「想像以上の歓迎だったので、気持ちが落ち着きません。王城の案内人をつけていただいて、城内を自由に見学させていただく形でお願いします」
「その程度であれば、別に構わぬが……。いったん王城に招いた後で変更させてくれ。さすがに騎士たちに示しがつかぬ」
「わかりました」
騎士が作ってくれた道を歩んだ後、長旅で疲れたという設定にしてもらい、王様は希望通りに予定を変更してくれた。
背筋がピーンッと伸びた可愛らしいメイドさんに案内されて、ホウオウさんと一緒に城内を探索する。
王様から丁重に扱うように言われているみたいで、廊下をすれ違う人が端に移動して、軽く頭を下げてくれていた。
こういう細やかな令嬢扱いを望んでいた私は、ちょっぴりテンションが高まる。
うわぁ~、お姫様になった気分だーと、子供っぽい思考になり始めていた。
そんな気持ちを表に出さないようにしながら歩き進めて、まず始めに王城の見学に訪れたのは……、城壁である。
城壁の上から眺める王都の景色を眺めてみたかったから。
メイドさんの誘導に従い、城壁に設置された扉を開け、螺旋階段を進むと、すぐにそこにたどり着く。
目の前に広がる王都の景色は、貴族街の大きな屋敷だったり、大勢の人で賑わい市場だったり、車ではなく馬車で行き交っていたりして、異世界らしさを存分に感じられる光景だった。
「程よい高さでいいですね! 王都がしっかりと見渡せますよ」
「ああ、そうだな。人の姿で見える目線では、こういう風に見えるのか……」
私は日本の景色と比較しているが、ホウオウさんは鳥の姿と人の姿で見える景色を比較しているみたいだ。
「こうして街を眺めていると、王都というだけあって、かなり大きな都市ですよね」
「人口が増え続けている影響だろう。街の防壁も大きくなって、居住区も拡大した気がするぞ」
「広場にたくさんのお花が供えられていたのも、人口が増えた影響なんでしょう。このまま火の妖精の信仰者が増えるといいですね」
「どこまでうまくいくかわからないが、現状は悪くない。スラム街ができていないのも、ちゃんと国を運営できている証拠なんだろうな」
言われてみれば、旧市街で手つかずの地域、みたいな場所は見当たらない。
夜はお酒を飲む人でどうなるかわからないが、昼間の景色を見る限り、王都の治安は良さそうに思えた。
「火の妖精が祀られた国は、素敵なところですね」
「そうだな」
接待っぽい雰囲気になってきたなーと思いつつ、私たちは城壁を後にする。
そして、案内役のメイドさんに連れられて、騎士の訓練場にやってきた。
怒号が飛び交うその場所は、とても気軽に近づけるような場所ではない。
「立て! それくらいで疲れてどうする!」
「もっと気合いを入れてぶつかってこんか!」
「休める時に休んでおけよ! まだ訓練は続くぞ!」
国を守る騎士の訓練は、思っている以上に過酷だ。
きっとここまで厳しくしないと、戦場で命を落としてしまうんだろう。
「圧がとても強いですね……」
「騎士の仕事は過酷だ。これくらいのことはしないと、若い命がすぐに失われてしまうぞ」
平和な暮らしを守るために、こうした厳しい訓練をしていると思うと、頭が上がらない。
彼らも自分の命がかかっているので、真剣に取り組んでいる。
こういう真面目に働く騎士たちがいるおかげで、勇者であるお父さんも無事だったのかなーと思うと、ありがたい気持ちで胸がいっぱいになった。
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