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悪党との交渉

挨拶はごきげんよう

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「お前の銃、見せろよ。さっきの。
 えれえ早撃ちのやつ」

「断る」

 にべもない返答は想定の範囲内だ。
俺は笑って、図々しく手のひらを差しだしてやった。
いいから寄越せとばかりに。

「俺ァ、姫さんのお客人ってやつだぜ?従わねえのか?」

 ついでに脅しのように言ってやるが、ドチビは表情ひとつ小揺るぎもさせなかった。

「これは姫様を守るために下賜された剣だ。
 得体の知れぬ者に見せるような迂闊な真似はしないように、厳命されている」

 なるほど。
やっぱり特注品か。
大きさも、このドチビにあわせて調整してあるんだろうな。
こいつ以外の人間が持ったところで、上手くは扱えまい。
性能についても、門外不出ってやつだろう。
金のあるところは違うね。

 チン、と軽い音がしてエレベーターの扉が開く。
俺とメイドは、揃って中へ一歩踏みいった。
そして、くるりと向きを変える刹那に――。

「……!」

 互いに向けあった銃口。

 だが、俺のそれはドチビの心臓を狙うには、僅かに遅れたせいでずれている。
ドチビの方が早かった。

「お客人に対する態度かよ?」

「……左利きか」

「左側に立てば安全だとでも思ったか?
 二挺下げてる時点で、警戒しとけよ」

 笑いながら言ってやると、ドチビメイドは苦々しそうに銃を戻した。
こちらも、銃口を下げる。

「お前が姫様の敵になるようなら、次は撃つ」

 なにかの宣言のように言われて、俺は小さく笑った。

「今、撃っとけばよかったって、ならなきゃいいがね」

 早さじゃ、こいつに敵いそうにはない。
今、撃たれていれば間違いなく、俺は死んでただろう。

 チン、とまた軽い音がして扉が開く。
煌びやかなロビーに戻ってきた。
俺たちは何事もなかったように、エレベーターを降りる。
そのまま玄関口までついてきたドチビメイドは、俺を外に送り出すとスカートの裾を摘まんで恭しく一礼した。

「ごきげんよう」

 とてもそうは思っていなさそうに素っ気なく言って、奴は立ち去った。
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