507号室

春くる与

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昨夜の出来事

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「昨夜、飲みにいったじゃない?あの後、部屋に帰ったら二つ隣の507号室の前に、女が座り込んでてさ……」

「女?」

「鍵でもなくしたのかと思って、どうしたんですか?って、声掛けたのよ。それなら、私があんたに連絡すればいいかなって思ってさ」

「ああ……。それで?」


 緑子が住んでいるマンションは、この会社の所有しているものだった。

 一年以内の新築で、会社としてもかなりの資金を注ぎ込んだ高級マンションである。

 そんな場所に緑子が格安で住めるのは、もちろん由美理の計らいだった。


「それが、反応がなくてさ。おかしいなと思って、よくよく見たら、その女、座り込んで鍵で鍵穴のあたりを、ずっとなぞってるのよ」

「……なにそれ、気持ち悪い」

「でしょ?それに、座り込んでるドアの前に、その女のものなのか、スニーカーが片方だけ落ちてて。
それがなぜか、ぐっしょり濡れてるの」

「――その女、実在してるの?」

「やめてよ、私もそれ疑ってるんだから!」

「やめて欲しいのはこっちよぉ。あのマンション、新しいしお金かなりかけたんだからね。変な噂立ったら困るっ!」
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