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夜の散歩
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目を覚ました。
夢を見たのは久しぶりだった。夢は疲れた時に見る。
なんて、子供のころに言われたが、最近の僕は疲れるようなことは何もしていない。疲れたのは、紛れもなく、あのサンタと高本のせいだ。本当にどうやって仕返しをしてやろうか。
ふと時計に目をやると、時刻は午前2時を示している。
眠りに入ったのが夕方なんだから当たり前だよな。熱帯夜と呼ぶには相応しい暑ぐるさを感じながら、そう思う。
どうしようもないくらい喉が渇いてることに気付き、冷蔵庫を開ける。何か飲めるものがないかと探していたが、酒しか置いてなかった。僕は飲めるものが無くなったことにも気付かないくらいに生活が堕落していた。
仕方なく、水道水でのどの渇きを潤し、カルキ臭い液体が体内を巡る不快感を感じる。お金がないとはいえ、この臭いが嫌いで水はスーパーで買っている。節約しなければいけないと思いつつ、これだけは譲れない。いや、タバコも譲れない。
カルキ臭い液体を全体に巡らせた後、僕は少し散歩に出ることにした。
夕方に寝ては夜にタバコを吸いに出かけるというのがここ数年の僕の生活リズムである。
徒歩10分もかからず、コンビニに到着し、さっそく店には入らずに喫煙スペースでタバコを口に加え、吸い出す。
何とも言えない、死にたくなるような気持ちよさ。これがいい。
夏に吸うタバコは非常に暑い。特にライターに火をつける時、手が焼ける気がする。この場合の「あつい」はどちらの漢字を使うのが正しいのか、なんて馬鹿げたこと考え、「暑い」の字を採用することを決める。
確かに暑いが、タバコは吸わないと体が震えて仕方がない。禁断症状である。
タバコを吸うためだけにコンビニを利用するのも気が引けるため、店内に入って何か買うものを探す。適当にパンとカップ麺を持ってレジに行く。いつものおじさん店員が対応してくれる。顔は覚えられているが、何も言わない。僕がこの店員さんが好きな理由はそこにある。
たまに、やけに話しかけてようとしてくる店員がいるが、野暮だ。
誰とでも仲良くなんて馬鹿げた言葉を信じているなら、僕はこんなに堕落していない。
コンビニから出ると、奥から寝間着姿の金髪の男女が歩いてくるのが見えた。絶対、タバコ吸うタイプの奴だと直感し、もう一本吸おうとしていたポケットのタバコに伸ばしていた手を止める。仕方なく帰ることを決めた。
帰り際にすれ違う男女はもうすでにタバコを口に咥えており、甘い香りがした煙が僕の鼻孔をくすぐる。甘いタバコなんてよく吸えたもんだなって心の中で悪態をつき、コンビニを後にした。
コンビニから帰ってきた。いや、まだ家には入っていない。家の前にサンタクロースがいるからだ。相変わらず暑そうだと思ったが、敢えてそれに触れない。
「なんでいるんですか。まだ2日しか経っていませんよ。」無視しようとしたが、家の中に入ってこられては困るため、適当に会話を始める。もう、2日しか経っていないのに現れたぐらいじゃ驚かない。
この考えもまた、読まれているんだろうな。
「また、来るって言ったじゃないですか。」サンタは答える。
「それにしても早すぎます。馬鹿なんですか。」どうせ心の中を読まれるなら、直接言った方が僕の気が晴れる。
「ふぉっふぉっふぉっふぉ、その通りです。私も直接言ってもらった方が心の中を読む手間が省けます。」
「勝手に心の声が聞こえる超能力タイプじゃないんですね。」
「「元」人間ですから、そこまでの能力は与えられませんでしたね。超能力者もどきです。」
「そんな能力を与えられる存在がいるってだけで、もう俺の人生はなおのこと変なことに付き合わされているってことですね。」
「そうなりますね。ふぉっふぉっふぉっふぉ。」
この男、トキワタリといったか?口が軽いのか、それとも隠す必要性がないのか。重要そうなことサラッと言う。口が軽いのならば、聞きたいことは山ほどあるが、それよりも気になるのが後ろにいる2人だ。
「で、その後ろの2人は誰ですか?」
僕は黒ローブを着た後ろの2人を指さす。フード付きのローブであるが、2人はフードを外して顔を見せていた。
1人は僕と同じくらいの身長で年齢もあまり離れていない10代後半から20代前半くらいだと思われる女性、もう1人は、明らかにこんな時間に出歩いてはいけない5歳にも満たない女の子だ。
2人とも、僕とこのサンタが話している間、じっと後ろから僕を見ていた。睨むというのではなく、警戒という感じの目線。しかし、何か僕がしでかしても余裕で対処できますよっていう優越の目線を送っていた。
「あぁ、紹介します。私の娘と孫です。っと言っても娘の方は養子ですが。これからあなたの旅の手助けになると思いますので、どうぞお見知りおきを。」
「はぁ。。。」もうどうにでもなれ、と思いながら互いの自己紹介が始まるのであった。
時渡が養子と言ったこの女性は、将来、
どうしようもない、本当にどうしようもない僕のせいで、
命を捧げることになる。
そんなことは、この時の僕は知らなかった。
この子の正体を知ることなんて、できるわけがなかったんだ。
夢を見たのは久しぶりだった。夢は疲れた時に見る。
なんて、子供のころに言われたが、最近の僕は疲れるようなことは何もしていない。疲れたのは、紛れもなく、あのサンタと高本のせいだ。本当にどうやって仕返しをしてやろうか。
ふと時計に目をやると、時刻は午前2時を示している。
眠りに入ったのが夕方なんだから当たり前だよな。熱帯夜と呼ぶには相応しい暑ぐるさを感じながら、そう思う。
どうしようもないくらい喉が渇いてることに気付き、冷蔵庫を開ける。何か飲めるものがないかと探していたが、酒しか置いてなかった。僕は飲めるものが無くなったことにも気付かないくらいに生活が堕落していた。
仕方なく、水道水でのどの渇きを潤し、カルキ臭い液体が体内を巡る不快感を感じる。お金がないとはいえ、この臭いが嫌いで水はスーパーで買っている。節約しなければいけないと思いつつ、これだけは譲れない。いや、タバコも譲れない。
カルキ臭い液体を全体に巡らせた後、僕は少し散歩に出ることにした。
夕方に寝ては夜にタバコを吸いに出かけるというのがここ数年の僕の生活リズムである。
徒歩10分もかからず、コンビニに到着し、さっそく店には入らずに喫煙スペースでタバコを口に加え、吸い出す。
何とも言えない、死にたくなるような気持ちよさ。これがいい。
夏に吸うタバコは非常に暑い。特にライターに火をつける時、手が焼ける気がする。この場合の「あつい」はどちらの漢字を使うのが正しいのか、なんて馬鹿げたこと考え、「暑い」の字を採用することを決める。
確かに暑いが、タバコは吸わないと体が震えて仕方がない。禁断症状である。
タバコを吸うためだけにコンビニを利用するのも気が引けるため、店内に入って何か買うものを探す。適当にパンとカップ麺を持ってレジに行く。いつものおじさん店員が対応してくれる。顔は覚えられているが、何も言わない。僕がこの店員さんが好きな理由はそこにある。
たまに、やけに話しかけてようとしてくる店員がいるが、野暮だ。
誰とでも仲良くなんて馬鹿げた言葉を信じているなら、僕はこんなに堕落していない。
コンビニから出ると、奥から寝間着姿の金髪の男女が歩いてくるのが見えた。絶対、タバコ吸うタイプの奴だと直感し、もう一本吸おうとしていたポケットのタバコに伸ばしていた手を止める。仕方なく帰ることを決めた。
帰り際にすれ違う男女はもうすでにタバコを口に咥えており、甘い香りがした煙が僕の鼻孔をくすぐる。甘いタバコなんてよく吸えたもんだなって心の中で悪態をつき、コンビニを後にした。
コンビニから帰ってきた。いや、まだ家には入っていない。家の前にサンタクロースがいるからだ。相変わらず暑そうだと思ったが、敢えてそれに触れない。
「なんでいるんですか。まだ2日しか経っていませんよ。」無視しようとしたが、家の中に入ってこられては困るため、適当に会話を始める。もう、2日しか経っていないのに現れたぐらいじゃ驚かない。
この考えもまた、読まれているんだろうな。
「また、来るって言ったじゃないですか。」サンタは答える。
「それにしても早すぎます。馬鹿なんですか。」どうせ心の中を読まれるなら、直接言った方が僕の気が晴れる。
「ふぉっふぉっふぉっふぉ、その通りです。私も直接言ってもらった方が心の中を読む手間が省けます。」
「勝手に心の声が聞こえる超能力タイプじゃないんですね。」
「「元」人間ですから、そこまでの能力は与えられませんでしたね。超能力者もどきです。」
「そんな能力を与えられる存在がいるってだけで、もう俺の人生はなおのこと変なことに付き合わされているってことですね。」
「そうなりますね。ふぉっふぉっふぉっふぉ。」
この男、トキワタリといったか?口が軽いのか、それとも隠す必要性がないのか。重要そうなことサラッと言う。口が軽いのならば、聞きたいことは山ほどあるが、それよりも気になるのが後ろにいる2人だ。
「で、その後ろの2人は誰ですか?」
僕は黒ローブを着た後ろの2人を指さす。フード付きのローブであるが、2人はフードを外して顔を見せていた。
1人は僕と同じくらいの身長で年齢もあまり離れていない10代後半から20代前半くらいだと思われる女性、もう1人は、明らかにこんな時間に出歩いてはいけない5歳にも満たない女の子だ。
2人とも、僕とこのサンタが話している間、じっと後ろから僕を見ていた。睨むというのではなく、警戒という感じの目線。しかし、何か僕がしでかしても余裕で対処できますよっていう優越の目線を送っていた。
「あぁ、紹介します。私の娘と孫です。っと言っても娘の方は養子ですが。これからあなたの旅の手助けになると思いますので、どうぞお見知りおきを。」
「はぁ。。。」もうどうにでもなれ、と思いながら互いの自己紹介が始まるのであった。
時渡が養子と言ったこの女性は、将来、
どうしようもない、本当にどうしようもない僕のせいで、
命を捧げることになる。
そんなことは、この時の僕は知らなかった。
この子の正体を知ることなんて、できるわけがなかったんだ。
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