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第15章 ゾフィアとヴィクトリア。

第6話 アイラ姉ちゃん。

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 少し荒れ模様の海が広がる岸壁。低い雲がどこまでも広がっている。
 
 地球で言うアイルランドの岸壁の様な、緑が少ない北の大地の岩肌。

 寒々としたモノトーンの景色が広がっている。 

 そこに上半身の前面が大きなアーマー、前面が透明な防護アーマーを着たウィルソン家の執事達が数人立って海を眺めていた。

 その後ろには沢山の正装をした大人たちが、整列した椅子に腰かけていた。

 異国の地なのか、見たことも無い船、船団が大きな輪を描いて進んでいる。

 その船団も周りには空母の様な海面から低い高さの、それこそ滑走路のような平台がある大型船、数隻が止まっている。

 その大型船は灯台の様な背の高いタワーにちょこんと艦橋が付いていた。その空母の様な大型船がゆっくり海面に沈み始めた。

 と、突然、船団の中心近くで爆発による大きな水柱が規則正しく連続して立った。 

 

( バッシュー! )( バッシュー! )( バッシュー! )( バッシュー! )
 


 そして、最後の爆柱から大型の潜水艦のような黒くて長い巨体が、海面を盛り上げて浮かんできた。
 


( バシュー! )

 
 
( ドバーザザザザーッ!ドボーンッ!ザザザザー。 )

  
 80メートルはあるであろう、巨大な岩鯨が浮かんできたのだった。 

 小さな目は、開けたまま上を向いていた。
 絶命していたのだ。
  


( ザザザザー。 ドボーンッ!ザザー。)
 


 海上で、絶命し浮かんだ巨大な岩鯨がゴロンと横になった。

 その回転で発生した波しぶきと波が海面に立つ。

 その波しぶきから2人の男女の巨人が海中から頭を出した。

 その巨大生物の岩肌をよじ登るオース化(巨人化)した2人。

 岩鯨の上で、女性の巨人が、両手をあげてガッツポーズをしている。

 アルフレッド・ウィルソン皇太子の弟、ジャック・ウィルソン殿下と、娘のアイラ・ウィルソン、オース皇国妃殿下だった。

 オース皇国の皇族の親子が、伝統の岩鯨漁をしていたのだ。
 

「やったー!」

 
 岸壁や船上の小さなシュー化人の紳士・淑女達が立ち上がって拍手する。
 
「見事だなアイラ!ハハハハッ!」
 
「有難うございますお父様!やった~ぁぁ、ハックション!クシュン!」 

 
 いきなりくしゃみをするアイラだった。

 
「おっ!風邪ひいたかアイラ。今日は水が冷たかったか?」
 
 防護服の中の執事長・クラウディアが、横にいる部下へ合図する。

 直ぐにアイラの体調を検査するクラウディアの部下。

 その様子を確認してから、クラウディアが拍手を始めた。

 続いて他の執事も拍手を始める。

 後ろに紳士、淑女のシュウ化人がスタンディングオベーションで拍手し始めた。
 
「アイラ様、お見事な岩鯨漁でした。ジャック様の無駄のない追い込み。そして、無駄のない爆泡の放出。再来週から始まる、数え5歳の儀のとても良いお手本ですわ。素晴らしい。すぐにでも数え5歳の儀の御皇室のお子様たち、特に再来週いらっしゃるオディア妃殿下様にも、ご教授して頂きたいですわ。オホホホ。」
 
 ハイハイっとクラウディアが居る岸壁に向かって、手をパタパタするアイラ。

 また、くしゃみをする。

 検査をした男性執事が、クラウディアを見ながら首を横に振った。
 
「執事長。妃殿下様。お風邪は召してはいないようです。」
 
 父のジャックが笑いながら、アイラの肩を持った。
 
「はははっ。誰かお前のうわさでもしてるんじゃないか。あはははっ。」
 
「もう、お父様ったら。そんな事……、あ、ちょ、ハクション!もう、あっクシュン!もう。みんなが見てる前で。もう。」
 
「あはははっ。差し詰め、きよし君たちかな!今日は定山渓の温泉ホテルで集まっているみたいだし。繁が、言ってたぞ。あはははっ。」
 
「もう、お父様たらっ。フフッ私も温泉行きたかったけドォ。たしか定山渓だったかな。」
 
 と、鼻を指で押さえながら岩鯨の上で、空を仰ぐアイラだった。
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