「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第13章 月からの使者。

第3話 ミリューシャ・エリスカ副長官。

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 元気一杯、ジョナサンに手を振って本部テントに向かって走って行く辰巳3等陸尉だった。

 何となく辰巳と気の合うジョナサンは、しっかり辰巳を見送った。
 
 それから人混みに向かうジョナサンだった。
 
 テープの内側奥には日本のバスより幅広で大きな8輪の特殊な救急車両が2台止まっていた。

 ビックマムから降ろしたのであろう京子・麗子チームがよく使う特殊車両であった。
 
 妻の麗子も来ているな。と内心思った。
 
 目を凝らして更に奥を見ると、椅子に座った白衣を着た京子と、ノーラの姿があった。

 2人はモニターやよつん這いのHARMORを見比べながら、何やら簡易システムの端末に座って話をしていた。

 ノーラの後ろには見たこともない、美しい金髪の女性が2人立ったまま話をしていた。
 
 その女性の服装は、恐らくジョナサンも来ているジェネリック・スーツだと思ったが、カラーリングが全く知らない部署のカラーリングだったのだ。

 ベース素材は光沢のあるプラチナホワイトだが、薄い上品なグレーのサイドラインで、細い金のサイドラインが挟んでいる。
 
 詰襟にはプラチナシルバーの幾何学文様。
 肩から腕にかけてもの幾何学模様は金色の線で描かれている。
 
 左胸には、鮮やかな瑠璃色のブルーの線で描かれた六角形のヘキサゴン、左上一辺に一本の平行線が描かれていた。

 ただ、ヘキサゴンの中央に大きく日本の皇室と同じ菊花紋章が立体的に描かれていたのだ。
 
 ほっそりとした白人の美しい女性達が手にクリスタル端末を持って話したり、特殊車両に入ったりして動いていた。
 
 ジョナサンには、その2人の美人は異星人だと判ったのだ。

 麗子がまれに月裏で働いている時に話す55スーリアの異星人スタッフだと、それもかなり上位の将官クラスと合点が利いたのだ。

 もっと近くで見たいと思い、ジョナサンが人混みの中をグイグイ入って行った。
 
「ちょっと失礼しますぅ。通りますぅ。ハイハイ、ちょと失礼。ハイハイ。ハイハイ。」
 
 と人混みを通り、黄色いテープを超えようとしたのだ。

 すると、銃を持ち、防護服を着た日本国兵士の2人が、慌ててジョナサンの目の前に来た。

 直ぐアメリカ軍の上官と解り、敬礼をしてから申し訳なさそうにジョナサンの入場を止めようとした。

(以下、英語の下の和訳はジョナサンのイメージです。)
 
「I`m sorry Captain,this is off limits to anyone other than those involved.」
(あらら、大尉、ここは関係者以外立ち入り禁止なんですよ。申し訳ないですけどぉ。)

「んだのか?あらら。お宅ら日本国軍の方?いやいやいやご苦労さんです。ちょっくら用事足すだけだから、いやいや、ちょっとだけ。ハイハイ。わかったから、わかったから!暴力はダメ。いい?OKっ?ハイハイ。だから、大丈夫だから、大丈夫だから!ハイハイ、ハイハイ。」

 2人の兵士を押しのけて、無理っくり黄色いテープをまたごうとするジョナサン。
 
 見学している関係者の人達も動揺したり、心配し始めた。
 静止を聞かないジョナサンに少し困ってきた警備の日本国兵の2人。そのジョナサンに、今度は銃を立てて、ちょっと強めにジョナサンの体を静止しようとした。
(以下、次も英語の下の和訳はジョナサンのイメージです。)

「No.No,No.No!  It's no goodCaptain! It's no good!」
(いやいやいや。マジだめです。だめです大尉、困ります。マジだめですって!)
 
「It's no good.No,No.No.It's no good, it's no good Captain!」
(勘弁して下さい。だめ、だめ、だめ。ホンマにだめですって。ホンマにだめですから大尉。)
 
 そのやり取りを、端末の上から首を伸ばして見ているノーラ。
 モニターを覗いている京子の肩をつついた。
 京子もジョナサンに気が付いた。
 ノーラが立ち上がって両手を口に当てて叫んだ。
 
「身内でーす!曽根さん~、通してあげてー!西浦さ~ん!身内でーす。身内よー!」
 
 おっ!と動きが止まる警備の2人。
 防護服の中は日本国陸軍の曽根少尉と西浦少尉だった。
 
 銃を下におろす2人。
 
 ジョナサンは両手の平を胸の前に可愛く上げて、2人にわざとらしくニカーと白い歯を出した。
 謝る曽根少尉と西浦少尉。
(以下、次の英語の下の和約も、ジョナサンの勝手なイメージなのです。本当です。)

「Excuse me, I am very sorry. I am very sorry. 」
(いやいやいや!すんません大尉。すんません。えへへ。)
 
「 Captain.  I am very sorry.Please pass by.」
(大尉!もうすんません。とっとと通って下さい。)
 
 白々しく曽根少尉と西浦少尉はノーラに答えて、ジョナサンにどうぞと手招きした。
 
 ジョナサンは作り笑顔で、曽根少尉の肩をトントンと叩き、両手を開くジェスチャーをした。そして、直ぐにテープをまたいで京子のところまで歩いて行った。
 
 椅子で座って手を上げる京子とノーラ。制帽を脱いで歩いて2人に近寄るジョナサン。

 ニコニコと立ち上がる2人。
 ノーラが手を伸ばしジョナサンと握手をした。
 握手をしながら後ろの美女軍団に目がいくジョナサン。
 
「あーどうも、姉さんどうも。でも、姉さん達ドして?京子姉さんとノーラさん。ドして、わざわざ2人でなんでここにいるんだべか。こんな装備まで持って来てさ。」
 
 特殊車輛を振り向いて見る京子と、ノーラ。
 
「ははっ。ジョナサン、麗子と真理亜も一緒に来たべさ。今、ビッグドクにいるっしょ。」
 
「えっ、そう?マーシャも来てるの?じゃー視察後に寄るべさ。姉さんビッグドクは?どこよ。」
 
「空港だわ。対馬やまねこ空港。だけどジョナちゃん!空港ビルぅ、アンタたちの攻撃で半分なくなってるべさ。後で見て見な。しっどいわ。」
 
「あっ!あーだろうなぁ。確か……ん?」
 
 ポケットから小型端末を出して調べるジョナサン。
 
「あー空港ビルの作った敵地上部隊の仮設基地だわな。Mark-9B空対地ミサイルのストライカーか……。そこにも効果視察に行くわ。その時マーシャ達に会うべさっ。んで結局、姉さんたちぃ何してるのさ?」
 
 京子がノーラの顔を見た。フフフっとノーラが答えた。
 
「フフフっ。今、きよし君たちを出す所。あれよ、あれ。」

「えっ?きよすぃ。」
 
 ノーラが人差し指を、よつん這いHARMORにツンツンと差しながら楽しそうに話した。振り向いて驚くジョナサン。
 
「えっー!きよし?何できよし?ウソだべやぁ!えぇーあれに、きよしが!マジかぁ!」
 
 また京子とノーラが目を合わせて笑った。
 
「ふふっ!そうよ!きよしちゃんとその少女達が乗ってるの!」
 
「えぇー!アクシスを一人で殲滅したとか、200人の女の子を助けたとかなんとか。えー!ウソだべや~。みんな知ってたのか!少尉少尉って言うから名前まで知らんかったべさ。日本国軍に気合入った奴がいるなぁって、どんな奴か覗いてやろうと思ってたけどぉ、へぇ~きよしか!えぇぇー!マジかぁ!」
 
 また帽子を脱いで頭を掻くジョナサン。よつん這いHARMORを下から覗いたり。腕を組んで、へ~!キー坊かぁ!キー坊かぁと、ひとりで感心していた。
 
「でも、ドして姉さんたちだべ。なして?」
 
「ジョナちゃん、これ見てみ。」
 
 4台並べてある医療端末画面。
 きよし・布村タンデムモービルの透過画像をコクピット部を拡大していく。動く何体かのガイコツが映り、手前に人一倍大きなガイコツが頭を何度も下げて動いている。更に腰から太ももを映した。
 
「えっ。うわっ。マジ?折れてるぅ、のか?これ。」
 
「そう!パッキリさ。」
 
「うわっ、痛ったぁ!」
 
 思わず、自分の太ももを押さえるジョナサン。
 
「これこれ、きよしの左大腿骨、骨折してるのさ。なんかで巻いて固定してるみたいだけどさ。はじめはヒビ入って最近パッキリいった感じ。この子は良く我慢してるわ。でも限界。体温が41度だって。骨折の炎症で発熱してるわ。」
 
「うわぁわわわっ。痛てーべよー。よく我慢してたな~オイ、きよすぃ。41度ってもうフラっフラだべや。」
 
「あと、これっ。」
 
 動く頭蓋骨の目の所をアップした。更に右目周りをアップしたまま静止した。
 
「何だ、顔かぁ。この目の上の細い白い線なんだべ?」
 
 顔を横にして見るジョナサン。
 
「ここ、これは、顔面骨折かな。」
 
「うえっ!痛っ、イタタタ。」
 
 今度は右目を手の平で押さえるジョナサン。
 
「ヒビ入ってるわ。これ、眼底の頭蓋骨とか欠けてるし。合計3本ヒビと眼底剥離骨折。」
 
「うわわわ、顔も痛てーべや。うわっ聞いただけでも痛いべ。」
 
 京子の横でジョナサンのリアクションに呆れて笑うノーラ。
 
「そうかそれで姉さんたつぃ、来たんだべか。後ろの美人姉さんたちも。」
 
「月裏のシーラス皇国情報技術院の仲間よ。ミリー?ちょっとミリー来て。」
 
 クリスタル端末を見ていた3人の美人。
 目の覚めるような白人の超絶美人がニッコリして振り向いた。
 
 京子が手招きする。
 
 ニコニコしながらスラっとした長い脚を前にスッスッと出しながら歩いてきた。
 
「麗子の旦那だわ。ミリー。」
 
 少し驚いた顔をして、右手を差し出した金髪の超美人。
 
「初めまして、オースティン大尉。麗子からよく月面でお話聞いています。うふふっ。」
 
 麗子の事だから、自分の事1000倍大げさに言ってるんだろうと思い、ミリューシャと握手しながら、眉を掻いて照れるジョナサン。
 
「ジン・シュウ宮内庁付け、シーラス皇国情報技術院・55スーリア副長官をしていますミリューシャ・シーカ・ラファド・エリスカです。お見知りおきを。京子?彼、日本語で宜しいの?アメリカ人だから普通に英語?」
 
 透き通るブルーの瞳で京子やノーラを見るミリューシャ。
 
「あはは!まぁジョナサンは日本語っちゅうか、北海道弁だべさ。英語でも、ポーランド語でも。器用だから、このおっさんは。なんでもいけるよね?ジョナちゃん、ねっ。」
 
 ノーラと目を合わせて笑う京子。
 目をシバシバさせて、微妙な顔をするジョナサン。仕方ないって顔をしてからミリューシャと握手をした。
 
「大尉。よろしくです。」
 
「あ、あードモドモ。よろしくだべさ。お姉ちゃんたつぃ、月から来たんだべさ。俺も月をグルりって回って来たばっかよ。まぁ、よく来たべさ。きよすぃば、頼むべさ。」
 
 頬杖をついて、キーボードをいじる京子。画面には御舩の会議室、今は戦闘モードのオペレーションルーム最上階を映す京子。
 メリッサが立ち上がり、再び少女の横にしゃがんだ映像が映っている。
 京子がジョナサンに振り向いた。
 
「そうよ、きよしの事が心配でさ。月から大勢が来たわ。閣下のシーラスワンのウーラノスにも、ネイジーのハイクラスの美男美女の天才が一杯来たべさ。」
 
 画面を覗くジョナサン。唇を尖らせてから、アゴを引いて感心した。
 
「へ~天才ってか~。ネイジェア星域の天才かぁ。想像できない位優秀なんだべなぁ。スンゴイのが来たんだべさ。きっと。」
 
 シーラスワンでは、その映像を見ながら少女が少し照れ笑い。その少女の頭を優しく撫でるメリッサだった。画面に指をパラパラして、バイバイをする京子。同じく画面に向かって売買するメリッサと天才少女だった。それからまた、きよしたちのガイコツ映像に切り替えた。
 
「でも、本当にきよしが居るんだべか。だってスんゴイ戦果あげてんべ。あいつぁ、まだ見習の兵隊なのによっ。えぇぇー?」
 
「もう、嘘つくわけないべさ。目の前に、リアルタイムで、きよしのガイコツ映像映ってるでしょ。ははっ。」
 
「いやいやいや、違う姉さん。したっけさ、ベテランの俺たちがまいるべゃ。立場ないっしょ!わはははっ。オジサンとしては、可愛い甥っ子の活躍はうれしい限りだけんど、なぁー。はははっ。まいったまいった。わははっ!したっけ、すげーなきよすぃ。ほんと。」
 
「ジョナサン、ほらっ。見てみ。調度、ヴィックもいるべさ。私たちのビックドクが着くまで、空港で威力偵察してもらってた。」
 
「ほー。お?あれか。」
 
「結局、敵の兵隊、敵が空港に作った仮設防空指揮所、アンタやっつけたんでしょ?」
 
「んださ。2~3発、空港にお見舞いしたべさ。」
 
「ちょっとジョナちゃん、空港、壊しすぎ。」
 
「あら、あらら。んだか。はははっ。」
 
「はははって。負傷兵とか、生き残った小ズルい上級将校達をヴィクトリアたちが、確保したらしいわ。それ以外、なーんもなかっけどさ。着陸した時は自衛隊が味方と敵の遺体を処理してたし。着陸前にパパから聞いて、ヴィクトリアが居るの解ったからさ。」
 
「ほー、姉さん、シゲルも来てるのか。」
 
「そうよ、パパも空港で警備中よ。今回は、「ビッグ・ドク」護衛かけてさ、役は中隊長で今日は来たみたい。」
 
「んだか。じゃーシゲルは、空港から中隊指揮でどっこにも動けないべさ。」
 
「そうさぁ。それでパパが、ここの司令から聞いてさ。パパは中隊長だから、空港から動けないでしょ。きよしのHARMORのコクピットシールド開かないって自衛隊がてんやわんやだったんだわ。それでヴィックたちにパパが頼んでくれたのさ。」
 
「んだのか?ふ~ん。日本の自衛隊でも開けんかったのか。あ~、自衛隊のヘイヅのWALKER(機動歩兵)、さっき敵が居るって海の方にいったべさ。そうか。残った人の力じゃ無理だべさ。特殊合金だから道具使ってもすぐには開かんわな。」
 
「そういう事。したらさ、ヴィックが母艦に連絡してくれて、手伝いに来てもらったんだわ。ポーランドの援軍の母艦はあのエミリア・プラテルだったからさ。」
 
「んだべ!んだよな。着陸前旋回の時、おっ!エミリア・プラテルが居るって思ってたべさ。」
 
「そう。パパもヴィックと一緒にゾフィへ直接言って頼んだのさ。」
 
「エミリア。ふ~ん。ゾフィアか、そうかヴィチック師範かぁ。ゾッフィの艦だもんな。なんぼでも自由効くわな。」
 
「ジョナサン?一緒に行って、きよしたちば、出してきて。あの子も安心するべさっ。」
 
「あっ、了~。姉さん、了~。」
 
 自分の制帽を、京子の机に置いて、しゃがんで「よつん這いHARMOR」を見るジョナサン。
 
「あ、あん?ヴィクトリアか?やってるやってる。あらら真面目に仕事してるわぁ。姉さん、ちょっくら行って来る。」
 
 制帽を取ってから、のんきに歩いて行くジョナサンだった。
 
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