上 下
79 / 96
第13章 月からの使者。

第1話 ジョナサン、対馬に降り立つ。

しおりを挟む
 ようやく、陽が昇り始める早朝の対馬。
 
 厳原湾の対馬診療所の近く、急遽つくった広場に朝日を受けて続々とポーランド海軍とアメリカ海軍、イギリス海軍、フランス海軍のなどの同盟国のオスプレー2が着陸して来た。
 
 そのアメリカ海兵隊、第2機動艦隊「エイブラハム・リンカーン」所属のオスプレー2の中から、対馬空爆の立役者であり、エースパイロットのムーンラビットワン隊長のジョナサン・M・オースティン大尉が降り立った。

 用があって、対馬防衛本部のテントに向かうため、来島したのだった。
 
 ゆっくり港湾から島の北部を見渡すオースティン大尉。
 
 眩しい朝日を避けて、大尉が手をかざして北部を見ると、核爆発があった爆心地に近い対馬市北部ではまだ森林や建物が広い範囲でくすぶって薄い煙を上げているのが解った。

 時折、金属が焼けるキツイ臭いがジョナサンの鼻を刺した。
 
 グリグリっと鼻を指でこする大尉。
 
 その内、車窓から手を上げてこちらに向かう自衛隊の小型車両が向かって来た。

 迎えに来たのは自衛隊の新型車両1/2トラックのHEVパジェロだった。
 
 早速、オースティン大尉が乗り込む。
 
 港の周りを走ると、ほとんど避難した後なのか、一般市民をほとんど見かけなかった。

 軍や港の関係者、警察、消防の人たちがなんらかの作業や打ち合わせをしていた。
 
 周囲のビル街や商店街では復旧作業準備なのか、様々な自衛隊や日本国軍のトラックや特殊回収車両が並んでいた。

 左手奥の、海に近い荷上げ場では大きな人型の物体が大型クレーンで吊るされ始めているのが見えて来た。
 
「おーやってる、やってるべさ。」
 
 20数名の自衛隊や日本国軍の回収作業班が取り囲んでいる。

 その人型は吉田が乗ったHARMORだった。

 その脇を通るジョナサン搭乗車。
 
 吊り上げ始めたHARMORの背中やアーム部の後ろが、消し炭もみたく真っ黒に焦げていた。

 左脚部も欠損してる。

 ジョナサンは自衛隊ドライバーに止まってもらった。

 驚いて外に出るジョナサン。

 口を開けて感心しながら見始めた。

 キョロキョロと引き揚げ作業を覗いて見る。
 
 周りでは回収班が沢山の部品や、潰れたコンテナを牽引し始めていた。

 邪魔になると思ったのか、腕を組みながら車に戻ってきた。助手席ドアを開けたまま、感心している。
 
「へ~っ!凄いなぁ~。へ~っ。」
 
 関心しながら席に戻って来た。
 
「はぁ~あ。あ、よっこらしょ。(バタンっ。)いやいやいや、真っ黒っ。なっ!よっく我慢して2機分たえてなぁ~。え~!いやいやいや、ちょっとこれ、下になって噴射してたロボットだろ?俺、港の上空を通過する時ぃ、めちゃめちゃ噴射炎だして落っこちて来るロボット見たし。これだよな。下になって、ブワーって吹かしてたロボットは。んだべさ。」
 
 自衛隊の運転手の辰巳たつみ3等陸尉に聞くジョナサン。
 
「そうです、そうです大尉。これです。物凄い音で降下して来ました。古いシャトルのローンチロケットモーター並みの噴射炎でしたよ。夜中でしたから、物凄く眩しくて。アクシス製と言っても元々ロシアのOEMだから、皆が馬力あるなーって言ってましたけどぉ。あはははっ。でもあの爆音は勘弁してほしかったです。スンゴイ音でさっきまで耳鳴りしてました。あはは。まぁ結局、ランディング・ポイント手前で壊れましたけど。あ~やっぱりみたいな。あはははっ。」
 
「はぁーんだか。だけど。辰巳さんも、皆も焦ったんべ。2回の核爆発の後だべし。」
 
「はい。みんな本部テントの前で、かなり焦りましたよ。なにせ小型の核原子炉積んでますからね。臨界とかマジ、やべーっと思ってました。実は少し、被爆も覚悟したんですよ。あはははっ。もしかしたら種無しに、なるかもって。無用の心配でしたが。はははっ。」
 
「へぇー、やっぱ原子炉積んでたんだ。やばい、やばい、やばいべさー。今、俺たちぃ、こうノンビリ見ていいんだべか。被爆しねーべか?作業してる人もさ。ありゃ?ありゃりゃ皆、防護服着てないべさ。いやいやいや。」
 
「あはは。もう1時間前ですか?小型原子炉は撤去いたしました。いの一番にシーラスの技術者と回収の潜水艦が一緒に来てましたよ。大尉。」
 
「ん~!んだか!」
 
 んなの、知ってるべさ。とか、言えないジョナサンだった。

 だまって辰巳3等陸尉の話を聞いたのだ。
 
 この機会に一般兵士がシーラスをどの様に見ているかも、直に知りたかったのだ。
 
「私達、関心して見てましたよ。もうアッと言う間でしたから。すぐその埠頭の先に、凄かったですよ、カタカナで「ロ」って書いた潜水艦がいつの間にか浮かんできて、ガバァーって頭からカバみたく口開いて。本当ですよ大尉。見たことがないパワードスーツ着た、あれはなんか、エンジニアリング・ロボ・スーツとか岸田2等陸尉がぁ何か、そんな事言ってたなぁ。技術者用の重装備なパワード・スーツが来て小型原子炉ガシャガシャ外して、カバの口の中にぶち込んだんですよ大尉。10分も掛からなかったんです。それから、そのカバ潜がまた音も無くヌメーって、ほんとヌメーって沈んで、小型原子炉電池を持っていきました。もう、ビックリです。あれは最初に来たドクターマリーンなのかなぁ。カタカナで同じく「ロ」って書いてあったけど、ゲートの開き方が違ってたけど。あははっ、まぁ良く解りません。でも、本当にビックリしました。」
 
「ヘ~ッ!うそだべあ、ほんとだべか?」
 
「いやいやいや、大尉。本当ですってば。なんせ、埠頭の端っこに立ってたのボクなんすから。なんか気配感じて、後ろみたら、もうビックリ!いつの間にか、直ぐ僕の後ろにあのデカい潜水艦がいたんですよ。もう驚いて心臓、しっかり止まりました。イヤ、心臓が海に落ちて港の底に沈んで行く位ぃビ~ックリしました。本当です。」
 
「あ~そっ!んだかぁ。ビックリたまげたか!あははっ。よし、よし!よし、よし!じゃ辰巳さん、そんでは、次行ってみようー!」
 
「あっハイ!了解です。あははっ。大尉、お忙しい中、僕の話聞いてくれて有難うございます。」
 
「いやいやいや、なんともない。なんともない。んでもさタッツゥ?(その場で勝手につけた辰巳のアダ名)そのヌメーってなんだべ、ヌメ~って。タッツゥよ。オイ!」
 
「いや~僕も解りません。ほんとにヌメ~でした。ヌメ~です大尉。あはは。」
 
 運転手の辰巳3等陸尉の肩を、ペシペシ叩いて、正面に指さすジョナサンだった。

 HEVパジェロが更にゆっくり進むと、今度は右手に人だかりがあった。顎を上げて除くと、その奥には、よつん這いになった敵HARMORが見えた。また車を止めてもらうジョナサン。

 首を上げて見ると、ポーランド機動歩兵WALKERと防護服を着た自衛隊が作業をしていた。
 
「大尉、HARMORまだ、在りますか?」
 
「おー!タッツウ、まだ在る、在る、在る。在るべさあ。まぁ見るの、後でいいか。今見たら時間無いから、あずましくないべ。よし。ん~タッツゥ!先に本部テントさ、行くべ。」
 
 そのまま車両は正面のテントに向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.

あおっち
SF
 海を埋め尽くすAXISの艦隊。 飽和攻撃が始まる台湾、金門県。  海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。 同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。 苫小牧市を守るシーラス防衛軍。 そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った! SF大河小説の前章譚、第5部作。 是非ご覧ください。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)

あおっち
SF
 港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。  遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。  その第1次上陸先が苫小牧市だった。  これは、現実なのだ!  その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。  それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。  同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。  台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。  新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。  目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。  昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。  そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。  SF大河小説の前章譚、第4部作。  是非ご覧ください。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

「メジャー・インフラトン」序章2/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節FIRE!FIRE!FIRE! No1. ) 

あおっち
SF
敵の帝国、AXISがいよいよ日本へ攻めて来たのだ。その島嶼攻撃、すなわち敵の第1次目標は対馬だった。  この序章2/7は主人公、椎葉きよしの少年時代の物語です。女子高校の修学旅行中にAXIS兵士に襲われる女子高生達。かろうじて逃げ出した少女が1人。そこで出会った少年、椎葉きよしと布村愛子、そして少女達との出会い。  パンダ隊長と少女達に名付けられたきよしの活躍はいかに!少女達の運命は!  ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。そして、初めての恋人ジェシカ。札幌、定山渓温泉に集まった対馬島嶼防衛戦で関係を持った家族との絆のストーリー。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
  脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

処理中です...