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第5章 町会議員、小林未来(みらい)。

第1話 少女隊、落下中。

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 低い夜空の雲の上まで、上昇して来た黄色とグレーのカラーリングをした敵のタンデムモービル。
 眩しいオレンジ色のバーニアの炎が雲の上を照らした。

( ドバババババーッ。 )
 
 探査・訓練用タンデムシート・HARMORの「壊撃-3型改T-2」のバーニアの噴射が止まった。

( ドババ~ッ……ゴンッ、シュー……。 )

( ……ヒューン。 )
 
 上昇してから自然落下に移った布村タンデムモービル。
 再び雲の中に突入した。
 自由落下に移った瞬間、無重力になるコクピット内。
 
「ヒャー!下っ腹が抜ける感じぃ、キモイィ!うわーっ!」
 
「うるさい寺田ぁ~!我慢せぃ~っ!」
 
 怒る布村。
 
「オエーッ!下っ腹がぁ。肛門!開く感じ~気持ち悪いぃ。絶対吐くーっ!誰かぁエチケット袋っー!オエェ~!」
 
「お前かぁ鈴木ぃ!やかましい~我慢せい!出たら飲み込めい!」
 
「魂が抜ける~っ!私も吐く~。オェ。いや、ちびる~!うわわ、うわわ。キモィ~!オエェ~!上から下、マジちびりそ~!私はおかと空がダメなの~っ!」
 
 今度は佐藤結衣が、中村・スーザン・幸子に怒った。
 
「サッチー!もう少しで私のきよしの所に着く~!吐いたら私のきよしの席~汚れるっしょ!サッチ~我慢、我慢~っ!上下からちびるなぁー!」

 無重力状態が終わり、今度は落下加速が始まる布村タンデムモービルの機体。

( きゃー!落ちるーっ! )
 
( うわぁー。 )
 
 今度は、風の影響や着陸地点へのコース修正で、自動的にバーニアを細かく吹かして落下進路の調整を始めた。
 ガクン、ガクンっと左右に大きく揺れた。

( バシュ!バシュ!バードババッ。バシュ!バシュ!ドババッ! )
 
 バーニアを噴射して修正する度に、大きなキシミ音がする機体。
 
( ギィ、ギィ、ギギギギッ!ゴンッ、ギギギ。ゴンゴンッ、ギギギギ。 )
 
( うわっ!何、何っ!壊れるぅ、怖いーっ!なんかの鉄板の音?うわ~、怖いぃ~。 )
 
( 何、何、何っ!なんでこんなに揺れるの~!壊れたの~!何この鉄板の音、やだ~っ! )

 呆れながら怒る布村。
 
「うわぁーキャーうるさい!今、落ちちょるんじゃぁ~ボケがぁ~っ!人型で羽が無いから風でバタバタするんじゃ~!」
 
 バーニアの噴射から、目標地点への落下まで、お決まりの大騒ぎなコクピットだった。
 更に4人の地獄は続いた。
 エイモスのアナウンスが入る。
 
( 布村さん!皆さん!着陸態勢に入ります。バーニアのロケット・モーターを12秒間、制動噴射します。舌を噛まないように。最初の5秒は安定するまで逆Gが襲います。皆さん、お口を閉じて我慢して下さい。それでは、制動噴射開始5秒前、4、3、2…… )
 
 思いっきり目と口を閉じる4人。
 落下する布村タンデムモービルのバーニアの噴射孔に再び火が入る。

( ヒューンジジ、ジジィー、……キュィーンドババババーッ! )
 
( ガガガガーッ!ガタガタガタ、ギギギギー。 )
 
 自由落下に対して、こんどは物凄い制動が掛かった。
 機体全体が揺れて、もっときしむ機体。
 
 コクピットごと潰れそうな大きな音をし始めた。
 今度は佐藤結衣が最初に苦しい声を上げる。
 
「オッパイ引っ張られるーっ乳、イデデっ。二重顎の肉、引っ張られるぅぅ……整形がバレるーイデデー。」
 
「お尻の肉が引っ張られるー内臓出る~。お尻からホルモン出そう……。」))
「うえぇぇ、下っ腹に響くぅ~。うんこちびりそうぅ。うぅぅぅ~。」
 
 急激な制動に苦しむ4人。
 
「二の腕がぁ、引っ張られるーイテテテ~。」
 
 しかし、すぐに制動によるGから解放された。
 ホっとした4人。だが、すぐエイモスが注意した。
 
( ランディングします。みんな。お口閉じて! )

「結衣っ!ランディングって何よ~!」

「うるさい麗子っ!着陸着陸~!下噛むよ!黙って!」

(( 全員っ!カウントダウンします。5、4、3、2~っ!衝撃に備えろっ! ))

 布村タンデムモービルが、思いっきり脚を屈伸してランディングした。

(( ズババババー……ドスンッ。 ))

( きゃー! )

( うわっ! ) 
 
 バーニアの火が消える。

( ヒュキィーン……ゴンッ。シュー……。 )

 屈伸したとは言え、物凄い衝撃がコクピット内に伝わった。
 そして、静寂……。
 
 背中のバーニア・ランドセル全体から高熱が出ているのか、陽炎が上がったままだ。
 ゆっくり立ち上がる布村タンデムモービル。
 立ち上がる時のチェーンの音が聞こえる。
 遊園地のジェットコースターを引き上げる様な音だった。

( ガラガラガラガラガラガラ。 )

「みんな~っ、大丈夫?」

「はは~なんとか、なんとか愛~、ははぁ……ガクッ。」

 グッタリ汗をかいた中村・スーザン・幸子が苦笑いして答えた。

( ガラガラガラガラガラガラ。 )
 
 脚部チェーンの物凄い音と振動の中、布村が4人を心配して左右後ろを見た。
 さすがの佐藤結衣も、変な汗をかいてグッタリしている。
 
 オートバイのライディングスタイルのままで、正面のモニターを見ている布村。
 コクピット内ではグリーン色の赤外線映像が映っていた。

 周囲の煙が次第になくなると、正面モニターにはきよしHARMORの「壊撃-3型P-2」の背後が映っていた。
 布村がグッタリする少女たちに伝える。
 
「結衣、パンダ隊長よ。」
 
「ん?あ、いたいた。お~い、パンダ隊長。あなたの結衣も来ましたよ~。」

 呆れて結衣を見る愛子たち4人。
 照れる佐藤結衣。

「まぁ、洒落よ洒落~。もう、テヘ。」

「なによ、テヘって。」
 
 きよしHARMORが警戒し40ミリカノンを正面に向けながら、後ずさりして近づいて来た。

( ガラガラガラガラ……。 )
 
 そして、ゆっくりしゃがんで省電力モードに切り替わったのか、全ライト類が消えた。
 動きが止まるきよしHARMOR。
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