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第2章 思いは湯煙となり。

第3話 湯煙に映る思い。

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 お話は定山渓温泉に戻って、念願の大浴場。
 
「O.oh~!夢ニマデ見タ、日本ノ、温泉デース!嬉シィデース!」
 
 エレナが両手を広げて、大浴場の入り口で裸のままピョンピョンしていた。
 体を洗いながら目を細めてニコニコする泊り客のおばあちゃんたち。
 その内、ゾロゾロとデカい裸の金髪軍団が入ってきた。
 ニコニコ顔から、驚き顔に変わるおばあちゃんたち。
 そのおばあちゃんの横に座ったオディアを連れたジェシカ。
 
「こんばんは~。失礼しますねぇ。」
 
「あら~外人さん、ご丁寧に。こんばんは~。」
 
 上品に挨拶するジェシカ。後ろからリリアナやジュリアも、声を上品に合わせて挨拶をした。
 
( こんばんは~。 )
 
「あら~またまた綺麗な外人さんがきたわ。ご丁寧に。こんばんは~。」
 
 ニコニコしながら、軽く汗を流しはじめるジェシカとオディア。
 ジェリアとリリアナも、ニコニコしながら汗を流し始めた。
 ジェシカは内ももに、オディアを立たせて軽く体を洗っている。
 すでに4人は椎葉温泉で慣れていたのだ。
 
「どちらから来たんですか?日本語でいいの?はははっ。可愛いお子さんですこと。」
 
 と、おばあちゃん。
 
「はい、アメリカから仕事で来ています。奥様はどちらから?」
 
「うわ~日本語お上手。私は姉妹で山口から来たの。元々は札幌出身で。みなさん、観光なの?」
 
「いいえ、千歳の基地で勤務しています。今日は、友達と来ました。」
 
「えっ?飛行機のCAさん?」
 
「いいえ~、軍人なんですの。千歳に勤務してますぅ。」
 
「えぇー、あー、そう!軍人さん!失礼しました。じゃぁ毎日大変でしょう!ゆっくりしてくださいね。」
 
「はい!ありがとうございます。でも、奥様の山口県っていったらフグが美味しいですよね。先週、実は栗山のお母さんとネットで山口の……」
 
 泊り客とも話が弾むジェシカだった。
 
 エレナと双子ちゃんは愛子たちが相手をしていた。
 英語の堪能な鈴木絵里がエレナにどんどん話し掛けていた。
 その横で双子ちゃんの面倒をみる4人の少女たち。
 その4人の中へ、先に体を洗ったジュリアが入ってきた。
 
「愛ちゃん。麗ちゃん、今度は私が子供たちの面倒みるから、みんなで、ゆっくりしてね。ふふっ。は~い、ゴーシャ、アシャ。ジュリーとお風呂入ろっか。Chu! Chu! 」
 
 双子ちゃんを両手に抱いて、ゆっくりぬるま湯の方の湯舟に入っていくジュリア。
 双子ちゃんをあやしながら、幸せそうな顔をしてあやしていた。
 布村たち4人の少女は湯舟に浸かった。
 
「はぁ~。……むにゃむにゃ。」
 
「有難う愛っ。ふぃ~。やっぱり第1みやびの湯が最高ぅ。ふぃ~。」

「ありがとう、結衣。ふぅ。」
 
「麗子の夢、叶う。ふぅ、去年の年末、年越しに羅臼のバ~バ(祖母)たちと、家族で来たけどさぁ。やっぱ愛子の温泉が落ち着くわぁ。」
 
「ふぅ……愛子、有難う。でも、ちょっぴり残念ね~。」
 
 と、チラッと洗い場でおばあちゃんたちと、話をするジェシカを見る中村・スーザン・幸子。

( ……。 )
 
 続いて見る、愛子と結衣と麗子だった。
 振り向いて鈴木絵里を見ると、洗い場でエレナと楽しそうに英語で話をしている。
 
「はははっ。夢崩れる~。と、言うより心の片隅で予想していた通り、一般人が云々出来る相手ではなかったのだった。と、再認識した愛子なのだ。……でもねぇ麗子。」
 
 何となく憂う目をして麗子、結衣と幸子を見る布村。
 麗子もその愛子の気持ちが良く解り、涙目になるとタオルでごまかした。
 
「愛と……同じ気持ちだったのだった。う、うぅ。宿泊予約表に書かれた通りのカップルだったのだ。」
 
 2人の顔を見る結衣と幸子。
 次にこの2人に何が起こるのかを予想出来、目が合う結衣と幸子。
 すかさず結衣が、話す。
 
「皆の衆。ノンビリしている場合ではないのだ!さぁ、愛の言う、お部屋ジュースが美味しくなるように、今から競争をします。」
 
「ふあい?何言ってんのぉ~?もう、競争なんていいよぅ、もぅ結衣ぃ~。」
 
「ぶ!何よ、何よ~。もう、そんな気分じゃない。もういいよ。」
 
 本格的に大泣き前の泣き顔の2人が結衣に文句を言おうとする。
 間髪入れず中村・スーザン・幸子が2人にチャパチャパ指先でお湯を掛けながら急いで話した。
 
「4人の息止め競争!誰が一番先に、(ブハッ!)と先に湯舟から出るか。早く出た人の負け。負けた者があした、朝ジュースをおごる。準備いい?秒数数えるから一人づつ行くよ!」
 
「サッチ~、良いからやめようょ。もう。いいって。絶対、海洋生物のサッチ~が勝つって。」

 息の合った中村・スーザン・幸子と佐藤結衣。
 結衣が音頭を取った。
 
「ハイハイ!いい年こいて文句言わない!さぁ剣道日本一の愛子さまから。せ~の!」
 
 音頭に弱い愛子。
 
「レディー?レディー、GO~っ!」
 
( チャポンッ! )
 
 さすが体育会系の愛子。佐藤結衣の掛け声に引っかかった。
 まぁいつもの事。
 鼻を持って沈む愛子だった。
 結衣と幸子、ジミ泣きしながら麗子が数字を数える。
 
「い~ち!に~い、さ~ん、し~い、ご~お……。」
 
 少しづつ小さな泡が浮かんでくる。テキトー数えの1分が経過した。
 エレナや絵里、洗い場からオディアやジェシカがニカニカしながら、のぞいて見ている。
 ジュリーが双子ちゃんを抱いて立ち上がって奥の湯船からのぞいて笑っていた。
 
「な~なじゅ、な~なじゅいち、な~なじゅに~、」
 
( ブハ~ッ! )

 湯の中から飛び出す愛子。

( ブハッ!が~ペッ!どよどよ、どーよ!結衣、麗、サッチ~、何秒~?どーよ? )
 
「はははっ!さすが温泉宿の娘さん!1分20秒でした~!」

( よっしゃ~!うっしゃー! )

 まんまと、引っかかりガッツポーズをする布村。
 先程の泣き顔から勝者の嫌らしい顔に変わっている。
 
「次は誰っ?誰っ?」

 サッチーが、麗子の腕を持って湯舟から上げた。
 
「はい、麗子・寺田ぁ~選手。」
 
「えっ、私?私っ?」
 
 寺田麗子もすっかり泣き顔から普通に戻っていた。
 すかさずスタートの音頭をとる佐藤結衣。
 
「せ~の!」

( チャポン! )

 鼻を指でつまんで沈む麗子。
 すぐ泡が出て来る。
 
「い~ち。に~い。さ~ん。し~い。、ご~お。ろ~」

( ブッハ~!無理、無理~!オェ。 )

 6秒で湯舟から飛び上がる麗子だった。
 
「あはははっ!なんでぇ6秒~!あははっ!」
 
「無理無理無理~!。プールじゃないしぃ。熱いお湯じゃ、なおさら無理無理~!」
 
 その内、洗い場ではオディアの手をつないだジェシカとリリアナが立ち上がった。
 
「あっ!」
 
 目を合わす4人。
 
「これにて、息止め競争終了~。敗者は麗子~っ!」
 
「うわ~、マジ?絶対めっちゃズル~!結衣もサチ~っ!ほんとうに2人は、もう、……うふふっ。」
 
 でも、なんで結衣たちが、愛子と麗子にこんな競争させたのか、良く解った布村愛子と寺田麗子だった。
 泣き顔や低いテンションで、今日の日を過ごす事が無いようにしてくれたのだった。
 
 そして、オディアを抱きかかえて、湯舟に入るジェシカ。後から、ニコニコしたリリアナが入って来た。
 オディアを太ももの上に乗せて、ニコニコしながらタオルでオディアの顔を拭いてあげている。
 
「ふぅ。気持ちいいわぁ。あ~最高。ねぇオディア。リリアナ~。」

 オディアがジェシカの胸を叩いて聞いた。
 
「ジェシー、ジェシー。アシャとゴーシャの所に行っていい?」
 
「ハイハイ、行ってらっしゃいオディ。危ないから、走らないでよ。」
 
「うん。判ったぁ。」
 
 湯舟から上がり、ピタピタと歩いてジュリーと双子ちゃんの所にいくオディア。
 歩いて行くオディアを見守った後、肩まで湯舟に浸かるジェシカ。
 
「ホント、最高。日本に来て良かったぁ……ふぅ、気持ちいい……。わたし、椎葉温泉と同じ事言ってるかも。はははっ。」
 
 目をつむりながら笑うジェシカ。
 
「滝野の水、結構冷たかったよねリリィ。あ~でも温まるぅ、フフフッ。」
 
 リリアナも湯を両腕にゆっくり掛け回しながら、ウットリしている。
 幸せそうな表情で日本への思いを話始める。
 
「ホント、隊長、冷たかったよね。あ~幸せ。この後、日本の夕ご飯よね。ワクワクしちゃう。宴会だって隊長。え・ん・か・い・よ。日本の映画やアニメで見た、憧れの宴会かぁ。それも北海道の温泉の高級ホテルよ!隊長!うふふっ。時間あったらルオとカラオケもやりたいし。もう楽しい事だらけよね。凄いなぁ日本って。」
 
 ジェシカと同じく肩まで湯舟に浸かるリリアナ。
 そのうち、エレナと鈴木絵里も湯舟に入って来た。
 ゆっくりつま先から入るエレナ。
 そして、首まで湯に浸かった。
 
「Oh!Oh~! ……。Feels amazing……feels good、good feeling。」
 
 目をつむりニッコリするエレナ。そして、お礼をいう絵里。
 
「はぁ~、生き返るぅ生き返る。あったかい~。ふぅ気持ちいい。愛子、ありがとう。」
 
 湯に浸かり、ホウっとする金髪外人さんたちと、少女たち。
 湯舟の中でジェシカがゆっくり愛子に近づいてきた。
 
「愛ちゃん?ちょっと愛ちゃん……。」
 
「えっ、はぁいジェシカさん。」
 
 湯船の中で、愛子の両手を持ってニッコリした。
 
「あの時、私が千歳に居て、愛ちゃんが対馬の現場にいて……。こんな風に一緒で、温泉に入れるなんて、思っても居なかったわ。うふふっ。ホント、可愛らしいわ。愛ちゃん。」
 
 軽く愛子の頬をなでるジェシカ。
 
「そんなぁ、ありがとうございます。あの時、スミス中佐って、お声だけでしたけど、何度、励まされたことか。繋がってるって安心感がありましたよ。絶対に何かあれば助けに来てくれるって。本当に有難うございました。」
 
「愛ちゃん、こちらこそ。うふふっ。」
 
 湯舟の中でハグする2人だった。
 そんな大浴場の湯煙の中、ゆっくりした温かい時間が女性たちを包んだ。
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