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第12章 出会い。対馬防衛戦。

第1話 少女との出逢い。

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定山渓ホテルの少女たちとの再開の時から遡ってさかのぼって、昨年の夏休み……。
 
 西暦2037年 長崎県対馬。

 海辺の大きな2つの岩の影に身をひそめる少女がいた。
 
 彼女は札幌のお嬢様学校、藤華女子学園2年生の生徒だった。
 修学旅行先の福岡から高速船で4人の級友とグループ学習で対馬に渡ってきた。
 日帰りで福岡に戻る予定だったが、突然のAXIS・南北朝鮮域軍の攻撃を受けたのだ。

( シュシュシュシュ! )

(( ズガンズガンズガンズガンッ!))
 
(( ズガーン! ))
 
(( きゃー! ))

 逃げようとしてタクシー乗り場で地元住民達と順番を待っている時、その列中に直撃弾が炸裂。
 大勢の住民が吹き飛んだのだ。
 
 (( ウギャー!ギャーッ!))
 
 パニックになる現場。
 倒れる地元の島民の人々。
 動かない老人夫婦。
 赤ちゃんを抱いたまま動かない若いお母さん。
 更に数弾の砲弾が、倒れる人々に容赦なく、浴びせた。
 
( シュシュシュシュ! )

(( ズガンズガンズガンズガンッ!)) 

 倒れたご遺体など、お構いなしに砲弾の爆発が人々を吹き飛ばした。
 全く止む気配などない無差別の砲撃だった。
 そのまま少女が1人、4人の級友とはぐれたまま走って逃げたのだ。
 
 無差別攻撃を繰り返して対馬の至る所に上陸し、侵攻を始めるAXIS・南北朝鮮域軍。
 無抵抗で武器を持たない民間人を標的に、殺戮を繰り返しながら侵攻を始めたのだ。
 村や建物、逃げる人々襲う、ベトナム戦争のそれと全く同じ光景だった。
 
 逃げ隠れた崖の下で、キョロキョロと上を覗いたり、隠れたりする少女だった。

( ドン!ドン、ドン、ガシャン、ドカドカドカーッ。 )

 小さな海岸に響き渡る衝撃音。
 
「え、え、え、えっ!なーにー、何よ!」
 
( ドシンガシャン、ドシンドシン、ガシャガシャ~、ドシンッ! )
 
 今度は少女がいる地面を走る衝撃波。
 少女の頭上から土砂が降り注いだ。

( ガサガサ、ザザザザー! )
 
(( キャー!うわーっ。 ))

 しかたなく、岩の後ろに隠れてしゃがむ少女。
 金属部品だろうか、ワンテンポずれて岩や、色んな物が落ちて来た。
 
( ドカドカドカ。 )
 
( カランカランカラン。 )
 
( ガサガサ、ガン。)
 
 再び、ブワーっと、しゃがんでいる少女に土煙が覆った。
 
(( ザザザザザザーッ! ))
 
「ブワーッ。ぷぅー!ぺっぺっ。うわっ。ぺっぺっ。オエー!」
 
 泥や土だらけの少女の上に、更に頭から埃だらけになった。
 
「もうー!なーに!きったなー!ぷーぺっぺ!オエー、口に入るかぁ、もう、ぺっぺっ、オェ。」

 級友とはぐれたまま、少女は1人で険しい海沿いの道を歩いている時だった。
 歩いて来た道の後ろの方で突然、巨大なロボット、機動モービルHARMOR同士の戦闘になったのだ。

( ドババババー!キューン、ドカッ。 )
 
( ドシン。ドカッ、ドシン。ドカン!キュイーン、ガシャーン! )

(( ドバーンゴゴゴゴ! ))
 
 ワケの解らない、物凄い音がした。
 爆発音なのか、発射音なのか。
 とにかく走って逃げる少女だった。
 走っている最中、少女の背後から敵の外した40ミリ砲弾が少女の上を通った。

(( シュッシュッシュッ! ))
 
(( シュッシュッシュッ! ))

 と、音を立てて飛んできた。
 無意識に頭を押さえて地面に伏せる少女。
 
「なに、なに、なにぃ、うわー!」
 
( ドカッドカッドカーン! )
 
「キャーッ!怖い~っ!何、何、怖い~っ!」
 
(( ドカッドカッドカッ! ))

 地面を着弾する敵の砲弾。
 何発かは、跳弾して四方に飛んで行った。
 その中の1発が前方の道路標識に当たった。

(( パシーン!ガシャーン! ))
 
(( キャー!怖いっー!助けてー! ))
 
 薄い鉄板の物凄い激しい音とともに道路標識が吹き飛んだ。
 その音に少女は、慌てて海辺の崖の下に避難したのだ。
 
 しばらく時間が経つと、避難した少女近くに彼女が目撃し格闘していたロボットのいずれかが、この崖の下に落ちてきたのだった。

 ドキドキしながら、そーっと岩の間からのぞく少女。
 6~7機の敵と、たしか1台の、それも白を基調に赤と青の塗装をしたロボットが戦っていたのは何となく認識していた。
 その1台がどんどん敵を倒していた。
 だから、この砂浜に落ちてきたロボットは、やられた敵に違いないと思った。
 
 勇気をだして、立ち上がって見ると、横倒しになって動かないススや埃だらけで真っ黒になったロボット。
 やはり機動モービルHARMORだった。
 左肩の自衛隊の文字や認識番号は、横倒しになったモービルが砂浜に埋まってしまい見えない位置になっていた。
 試作機の白、青、赤のカラーリングも激しい戦闘で認識できない程汚れてしまっていた。
 最低、所属の漢字や文字が少女に見えていたなら、出会い時のパイロットの小さな悲劇を避けられていたかも知れなかった。
 それにしても、その機動モービルHARMORの大きさに驚く少女。
 
「デカい!こんなに大きいんだ。デカい。こんなデカいのが人間みたく動いてたんだ。」
 
 人間みたくと思ったのは、以前SNSで見たホァン技術部長のプロポーズ、千歳シーラスワン一同のフラッシュモブの事だった。
 そのフラッシュモブの中心人物、訓練用機動モービルHARMORでブレイクダンスをしていた3機の内の1機のパイロットが、少女の目の前の椎葉きよしだったとは、その時は知る由もなかった。
 少女は足元に転がる流木を武器のつもりで、とっさに取った。
 その時だった。
 
(( バンッ! ))
 
 と、大きな爆発音とともにモービルの胸のカバーが少女の方に飛んできた。
 
( シュシュシュ! )

「キャー!うわ~っ!」
 
 岩の下に再び倒れる少女。
 胸のカバーが、岩に当たって止まった。間一髪だった。
 
( バシンッ! )

「うわー!もう、何が飛んで来た?もう……ん?何だろ?」
 
 モービルの胸のカバーが外れた暗いコクピットを目を細めて見ると、何やら両手をばたつかせてるパイロットが見えた。
 
「うそー!あんな上から落ちて、まだ生きてる。よし!戦うしかない!」
 
 剣道の心得がある少女は、流木を持って、上段の構えで横倒しのモービルに近寄っていく。
 
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