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第10章 ラブラブ・キャンピングワゴン❤️

第1話 バルトシュ・カミンスキ親子。

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 その翌日の早朝。
 
 椎葉家の前の広い駐車場では、当主の椎葉繁が早朝からひと仕事終えて、畑を耕した大型のトラクターにホースで水をかけて洗浄していた。
 
 その自宅の先の国道からヨーロッパ風のカラフルなHEVのキャンピング・バスが、白樺林の緩い坂道の砂利を踏みながらゆっくり登ってきた。
 
 バルトシュ・カミンスキ中佐のファミリーが乗っているのだ。
 
 ポーランド特別宇宙軍のJWKがレンタルした最新の中型バスのフルコンバージョン・キャンピングカーだった。
 バスが、椎葉道場の駐車場の入り口で止まった。
 気がつた繁は、ニコニコしながら、手を振った。
 
「おー、来たか来た。」
 
 手を上げて挨拶を交わすドライバーのバルトシュ・カミンスキと椎葉繁。
 
 繁は自衛隊に復隊して、千歳シーラスワンでこの4月から、32名(椎葉道場の小林小隊とジェシカ・スミス大隊長を除く)の配属新人に機動モービルHARMORによる新型ゼロ距離兵器の白兵戦と格闘戦のコーチをしていたのだ。
 繁はホースの水を玄関まで走っていって止めてから、急いでバスの運転席の下に行き、腕を上げて見上げた。
 窓が下がり、バルトシュも腕を伸ばし繁と握手した。
 
「おはようバルト!良いの乗ってるな~。(ポーランド語)」
 
「おはようございま~す。椎葉先生!(日本語)私、個人で借りたのではなく、ポーランド宇宙軍が大隊のレクレーションにと、何台か借りたんです。その1台です。(ポーランド語)」
 
「あ~そう?良い国だなポーランドって。あはははっ。(ポーランド語)」
 
「でしょ?ローマン大佐が何から何まで手配してくれて。助かります。(ポーランド語)」
 
「そうか、そうか。ローマンが!まぁとにかく、今、トラクターどけるから、そこで待ってくれ。朝は誰も来ないからバスは適当に止めてくれ。(ポーランド語)」
 
 繁がトラクターに乗り込み、駐車場から去っていった。
 バルトシュはキャンピングバスをUターンさせて、バックから駐車場に入って止めた。

( ジャジャー、キュッキュ。 ふ~。よし。 バサバサッ。 )
 
 繁は、トラクターを裏の駐車場に止めて洗面台で顔や、手を洗った。
 軒下を通り、手や顔を洗ったのかタオルで拭きながらニコニコして歩いて来た。
 
 キャンピング・バスのセンタードアが開く。

( ガラガラー。 )

( トン、トン、トン。 )
 
 双子ちゃん2人を抱っこしたバルトシュの妻、エレナ・カミンスカ(女性呼称)がニコニコしてゆっくりバスから降りてきた。
 
「ハーイ!椎葉さ~ん、おはようございま~す。(日本語)」
 
 両手を上げて挨拶にいく繁。
 
「おー!バルトッシュの奥さん!エレナッ?おはよう。初めまして。(ポーランド語)」
 
 双子ちゃんを抱いたエレナの手に握手する繁。そして、ひとり目の双子ちゃんの手を優しく取った。
 
「いやーめんこいわ~。あら~!めんこいべさぁ~。(北海道弁)」
 
 バルトシュもニコニコしてバスから降りてきた。
 
「はじめまして、可愛い子ちゃんたち~。シゲル叔父さんですよ。Chu!Chu!」
 
 双子ちゃんの手の甲に優しく挨拶のキスをする繁。
 少ししゃがんで、優しく話した。
 そんな砕けた表情の繁の姿を見て、驚いて止まるバルトシュ。
 普段は厳しい訓練教官としての繁と、目の前でめちゃめちゃ優しく子供に接する繁のギャップに驚いたのだ。
 
「ハイネスッ。お名前は、何かな~。(ポーランド語)」
 
「こっちはマウゴジャタ(マーガレット)よ。ゴーシャでいいわぁ」
 
「初めましてマウゴジャタ!可愛い~!ゴーシャ、ほんと可愛い。(ポーランド語)ほんと、めんこいわぁ(北海道弁)こちらのハイネスは?んっ?(ポーランド語)」
 
 ニコニコして優しい顔の繁。
 
「この子はヨアンナよ。ポーではみんな、アシャって呼びますわ。アーシャでもいいわ。うふふ。(ポーランド語)」
 
「いやいや、ヨアンナも可愛い。アーシャほんと可愛い~。(ポーランド語)」
 
 エレナの後ろでは、何とも言えない表情で、バルトシュが立っていた。
 チラッチラッと夫を見るエレナ。
 
「バルト、あなた。なに。どうしたの?」
 
「いや、エレナ。あの、あの~椎葉1等宙佐殿、いつも訓練中は物凄くきびしい方が。私、ビックリしてます。こんなに~、いい叔父さんだなんて。車の中で妻に、厳しいサムライの手本みたいな人で、緊張してるからカバーしてくれ!って言ったばかりで。何、パパ心配してるの?って言うから。でも妻の言う通りでした。無駄な緊張でした。(ポーランド語)」
 
 バルトッシュは額に手を上げて、落ち着こうとしていた。
 
「ハハハハッ!プライベートでは道場持ってるただの農民だ。ハハハッ。そうだ、バルト!ヴィクトリア(バルトシュの姉)やゾフィ、まぁ、今は2人ともポーランド海軍の艦長さんだな。その2人が日本の防衛大学校時代に夏と冬休みに、泊りがけで稽古してた道場でも、暇つぶしに見るか?ヨーロッパ師範たちの合同写真やヴィクトリアの優勝した東ヨーロッパ選手権とかの写真なんか、額にいれて道場に飾ってるよ。」
 
「うわ~感激です。そうですか!実は姉からいつも聞いていて、密かに見て見たかったんです。師匠ぜひ見学させて下さい。」
 
 そこへ母屋の玄関から、紙袋をぶら下げて京子が歩いて来た。
 
「カミンスキ中佐、奥様もおはようございます。ちょと、お父さん、手っ洗ったぁ?顔も洗った?お子ちゃまと会うとき、絶対洗ってよ。あらあら、初めまして。バルトッシュ君の奥様ね!(ポーランド語)ど~も初めまして。」

「初めまして。エレナ・カミンスカ(女性呼称)です。」
 
 握手をしてから、3人の前でお辞儀をする京子だった。
 その後ろで緊張し、ビシッと敬礼するバルトッシュ・カミンスキ中佐だった。
 エレナは双子ちゃんを抱きながら、後ろを振り返り、真顔で敬礼をするバルトッシュに怪訝な顔をした。
 
「また、あなた。何してるの?(ポーランド語)」
 
 敬礼の手を下げて困った顔をした。妻に足を踏まれるバルトシュ。
 
「痛っ!あっ、い、いや何も、シーラス技研司令本部の椎葉長官だから……。(ポーランド語)」
 
「もう、バルトッ。空気呼んでよ。ねぇ。ウチのパパは頭カッチカチの軍人さんなのよね~。おバカさんよね~。お互いプライベートの時間では、逆に慇懃無礼でしょ。(ポーランド語)」
 
 エレナは双子ちゃんたちに話しかけた。あははっ!と笑い会う京子とエレナ。
 
「カミンスキ(男性呼称)中佐は、ほ~んといつも真面目よね。でも、その真面目さがあるから部下から、信頼されているんだよね。」
 
 と、双子ちゃんを見ながらバルトシュのカバーをする京子だった。
 エレナは旦那が褒められて、バルトシュのアゴに背伸びしてキスをした。
 苦笑いのバルトッシュ。
 ニコニコしながら京子が大きな紙袋をふたつ、エレナに渡した。双子ちゃんを一人づつ抱きかかえるバルトシュと繁。

「ちょっと、エレナ。中見て。」

 エレナが紙袋を軽くのぞいた。
 
「オー、有難うございます。(日本語)」
 
 エレナの肘をもってニコニコとエレナに説明する京子。
 
「時間もったいないからバスの中でさ、皆で食べて。この袋は“お握り”と“カツサンド”よ。お子ちゃま3人分の“お子ちゃま弁当”よ。もう2人とも8ヵ月だから食べられるよねっ。それと、これ、この袋は滝野でバーベキューでしょ?お子ちゃまも焼いて食べられる(大豆の肉モドキ)ステーキと、皮なしソーセージとチーズ。この奥の赤いタッパに入っているから。(ポーランド語)」
 
「うわー感激っ。有難うございます。(ポーランド語)」
 
 京子はエレナに紙袋を渡すと、繁に両腕を伸ばした。
 
「ちょっとお父さん、私にも赤ちゃん、抱っこさせてぇ。」
 
「あぁ、ハイハイ。」
 
 キャー可愛いと言いながら、アシャを抱っこする京子。
 
「うわぁ、めんこいわぁ。あらまぁ。もうほっぺもプクプクで。めんこいべさぁ。雪のように真っ白で、もう綺麗だわぁ。ほんと白い妖精~。凄く可愛いいべさ。(北海道弁)。バルト君、良い宝物持ってるのねぇ。美人の奥様と美人の娘達~。羨ましいわ~。バルト君のお姉さんのヴィクトリア、防大時代4年間もウチの道場、休みのたんびに通ってたけど、スンゴイ美人さんでさ。だからこの子たちもエレナさんの美人遺伝子とカミンスカ美人遺伝子で、めちゃめちゃ美人になるんだろうなぁ。うふふっ。可愛いわぁチュッ。いや~可愛いぃ。チュッチュ!(ポーランド語)」
 
 朝早くから親睦を深めるカミンスキ・ファミリーと椎葉ファミリーだった。そこで母屋の戸が開いた。

( ガラガラガラー! )
 
 中から駐車場のファミリーの声を聞きつけて、金髪の3人の背の高い美女たちが玄関から手を振りながらやって来たのだ。
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