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9章 黄逸臣(ホァン・イーチェン)技術部長

第1話 椎葉きよしブランド

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 ハワイ島訓練が終わり、千歳シーラスワンでは機動モービルHARMORの整備が始まっていた。
 
 各ビックマムからローマンの機体、きよしやジェシカの機体を整備倉庫に移す作業が行われていた。
 運搬用機動モービルがモーター音をうならせて、作業をしていた。
 
 丁寧に誘導する技術整備兵たち。
 
 訓練も終わり、整備が始まったいつも倉庫の光景だった。
 ルオ・ホァン少尉の機体スナイパー・HARMOR(パールバティ・ワン)の下に潜り、ヘッドライトを照らしながら整備する黄技術部長。
 寝ころぶ部長の先から何やら細いタイヤの様なリングを回しながらこちらに来る部下の神保じんぽ主任が見える。
 
( ガラガラガラーッ。 )
 
「うわぁまたか。神保!もう、見せないでくれ!今度も右足だろう?」
 
「はい、部長!いつもの右です。」
 
「うわぁ。あ~あ。右はアッセンブリー交換しかない。」
 
 パールバティ・ワンの下から背中に当てたメカニッククリーパー(寝板)ごと身を出して、手で目を隠してゴロゴロッと、仰向けに出てくる黄技術部長。
 
「うわー、見たくない。そうもいかんか。ふぅ。……全く。はっ!よいしょっと。」
 
 諦めてクリーパーの上に座り直す黄。転がしてきた神保と目が合った。
 黄の目の前に神保がリングを転がした。神保は、はにかんで眉を上げて黄を見た。
 そのリングのひび割れや欠損箇所を指でなぞる黄部長。
 
「どれ、どれ~。あ~あっ。んっ、ん~……だめだこりゃ。ふ~っ。予想より悪い。どうしたもんだか。」
 
 額を掻きながら、立ち上がる黄。
 訓練の度にきよしの機体、特に脚部の消耗が激しかった。その中で足関節のベアリングを固定する緩衝部品。
 1.6メートル位の輪の部品(脚部関節の緩衝部品)を3つ転がしてきたのは、シーラス技術本部の神保幹久技術主任だった。
 
 彼もまた、月裏の異星人、ネイジー(ネイジェア星域皇国人)たちと技術的な交流を持っていた1人だった。
 ネイジェア星域の正式軍では、黄技術部長と同様に情報技術院大尉の身分待遇の彼だった。
 
「黄部長!特殊メタルのこのリング、こんな丈夫なのが亀裂と欠損なんて。」
 
 神保は手の平を広げ、数点の欠けた破片を黄に見せた。
 
「これ、この破片。もう次は、IHeでも、AGIでも無理なんじゃないですか。緩衝リングに亀裂と欠損なんて。だんだん椎葉少尉の脚部、訓練の度に損傷が激しくなりはじめて。欠損の破片でベアリングボールにもミクロの傷が。まだ浅いですけどマズいっす。」
 
「ベアリングボールに傷って。不味いだろう。」
 
「そうっす。マズいっす。椎葉少尉のAIエイモスに状況を聞きましたら、訓練初動までは問題なかったらしいんです。」
 
「そうか、ランディング(着陸)時から戦闘初動だな。問題ないか。」
 
「はい。戦闘中盤からのきよし戦法(走りながら撃つやつな。だろ神保?)はい、そうです。椎葉少尉が敵役のヒールHARMORを発見して、方向転換とヒールHARMORへダイブをした時に異常を検知したとエイモスが言ってます。これが脚関節部のエラーダンプ(記録)です。」
 
 クリスタル端末を黄に渡す神保。画面にはギッシリ異常を示すエラー・データのコードが出ていた。
 
「ふ~。こんな状態でヒール役のローマン大佐やエレン少佐たち20機以上をやっつけた訳だ。凄いな。だけど、だんだん、きよしの機体だけ損傷の度合いがエスカレートするなぁ。」
 
 整備用防止の下から指を入れて頭を掻く黄技術部長。
 
「前回の脚部交換から1回の訓練で。また毎回ディスアッセンブリーというか、オーバーホールが必要なんだな、これがまた。どうしたものか。」
 
「はい、部長。椎葉少尉の機体はもう、エイモスで行動制限かけないと。部長、キリないっす。もう、それこそジョイント・ベアリング・アッセンブリー(関節内組み立て済み部品)外すだけで、脚部のオール・ディスアッセンブリー(脚部の全展開、分解整備)しないと。すんごい手間なんですから。ここだけは手作業ですからね。」
 
 しゃがんで亀裂を覗く神保主任と黄部長。
 半ば呆れながら、黄が神保の肩を叩いた。
 
「ん。まぁ~、文句いうな神保。まぁ、アイツは動きが鈍くなるとエイモス(機動モービルの制御OS)切りやがる。どうしたもんだか。」
 
 立ち上がり腕を組みながら何度もヒビが入ったリングを覗き見る黄。その2人を囲むように日本とアメリカやカナダ、フランスの10名程の男女の整備スタッフが集まって来た。
 
 彼らもマニュピレーター部や、細かいメカニカル・ジョイントのプロフェッショナルたちだった。今、脚部の分解整備で神保のサポートをしていたのだ。
 各々がしゃがんで代わる、代わるに亀裂を見たり、手袋を脱いで指でなぞったりした。自衛隊の主任整備士が神保の集めたリングの欠けた破片を指でつまんで、偏光メカニックルーペで色んな光を当てて見たりした。
 
( えー!どういう理屈で、こうなるんだ?まったく。ミクロ単位でも亀裂入ってるし。 )
 
( どれ、どれ~。えー!ひでーなこりゃ。少尉(椎葉きよし)の能力が半端ないのか?リングの力学設計がまずいのか?それともベアリングボールの球面精度が甘いのか?鍛造強度がハイクラスのリングだろ。えぇ~っ。 )

 金髪の若い女性整備兵の2人も、腕を組んで不思議がっていた。
 金髪の1人、カナダ宙軍のアイダ・ブラン准尉がむき出しの関節部に戻り、大きなボールベアリングを手で撫でながら話した。
 
「この精細加工のデカいメインボールも、2個のサブ・ジョイントボールも基本、日本製だよね。世界最高峰の精度と強度があるよね。アメリカ製じゃあるまいし。やっぱりリングの精度と強度かな~。アメリカ宙軍の訓練後の整備で、脚部関節の整備なんて、あはははっ!グリスアップとダンパー調整をするくらいでさ。ディスアッセンブリなんて、一度もなかったけどね。ね?トミー。日本に来て初めてだよね。」
 
 また、唇をへの字にして両手を広げるUSASFの女性上級整備兵アイダ・ブランだった。
 アイダの話に、眉を上げて、細かくうなずく年配の男性の整備部長。
 アイダは本当は発砲スチロール並に軽いのに、小さい方のベアリングボールを両手で、ワザと重たそうに関節から出して上から、下から覗いた。
 皆を見ながら、おどけて一瞬、片手で、軽いベアリング・ボールを持って呆れましたのポーズをした。
 しかし、落としそうになり大急ぎで、へっぴり腰のまま関節の元にボールベアリングを戻したのだ。

( あはははっ。 )
 
( もう、アイダったら。あははっ! )
 
 腕を組みながら笑う整備兵達たち。
 みんなと目を合わせて笑う大柄な中年男性整備部長。
 もう一人の女性上級整備兵へ呆れて同僚を見るアメリカ宙軍整備兵(特技兵)のリンダ・アイランド上級准尉だった。
 笑いながら、アイダは指先で軽くボールを回した。
 
 スーッと、全くストレスなく回り続けるベアリングボール。
 
 残り1個の小さなベアリングボールと2メートル位の巨大なベアリングボールも軽く指先で撫でて回した。それもストレスなく、無音でスムーズに回り続けた。
 
「凄いよね、ほんと日本のベアリング。ここは、ゼロ・グラビティ空間なの?ほんと。いつまで回ってるの。って感じ。どんな摩擦係数?どんな球面加工したらこうなるの!ってあはは。リンダのいう通りジョイント構造の実物を毎回見られるのは、ここ千歳で初めてよ。」
 
 回り続けるジョイントボールに、両手の手の平を向けたまま、ニコニコするアイダ・ブラン准尉。
 
 「勉強になるけどぉ。お陰でまたMITに戻って研究しようかなぁって。うふふ。ジェシーや、リリー。そしてジュリアのHARMORはお陰様で、1回も脚部ディスアッセンブリーしたことないし。ジョイントの整備オイルガイド見ても、不純物も無くサラサラ。ほんとよ!まあ、上半身は毎回だけどぉ。私には勉強になって楽しいけどね。うふふ。」
 
 シバの神の分解した膝関節部からはみ出した、回り続ける大きなボールベアリングと小さなボールを見つめる面々。
 そのボールを次々に、軽く指先で止める2人の女性上級整備兵。
 なぜか、あきれて両腕を上げてから腕を組むリンダだった。
 
「こんなにスムーズになのに、鍛造誤差ってあるのかしら。」
 
「ん~。」
 
 年配のUSASF・ジェシカチームのトニー・オブライエン技術主幹部長。
 厳しい顔のまま、指で自衛隊整備士がルーペで見ていた破片をつまんで天井のライトにかざして、流暢な日本語で疑問を神保にぶつけた。
 
「神保?ミッキー?この干渉リング、5分の1Gの重力の低い所で作った焼結加工だろ?このMM型はたしか、IHeの特AS(月裏55スーリア、通称“アース・スーリア”での製品)部品だろ?それも最新のロールアウトで先週納品、組み立てしたばかりだよな。皆、そうだよな?」

(( イエス、イエス。 ))
(( イヤー、イヤー。 ))

 そこにいる外人整備士が全員、うなずいた。
 
「それにクラック(ひび)が無数に入るなんて。焼結の温度管理が甘いのか?時間管理が甘いのか?ヘリカルローリングの何かが間違ってるのか?ヘイ、ミッキー(神保幹久のニックネーム)?何か知ってる?俺達に何か、隠してないか。あまりにもおかしいだろう。そう、思わないかミッキー。」
 
 一緒に分解作業を手伝ってもらっている整備兵の、おのおのが感想を述べていた。
 
「いやいやいやトミー。僕には詳しい鍛造工程は解りません。組み立て屋のボクに聞かないで下さい。専門外はまるっきしダメで。すみません。」
 
 神保の話を聞いて、口をへの字にして、両手を広げるトミー・オブライエンUSASF技術主幹兼任部長だった。
 
「どうなんでしょう部長。折角、全米トップのオブライエン部長達に手伝ってもらっているのに。」
 
 こめかみを掻いてから、腕を組んで2人を見るトミー・オブライエンだった。また、額を指で書きながら神保に指示を出す黄だった。
 
「まぁな。とにかく神保。AGIのリングしか在庫ないからアッセンブリーの全交換だ神保。IHeの石井ちゃんに事象報告しておいて。石井ちゃんもショックだと思うけど。あっ、一応、AGIの日下くさかちゃんにも。在庫なくなるよってな。」
 
「了解しました。はははっ。しっかし、これ特AS部品ですよね。丁度、IHeの石井さんチームは、たしか月裏の……。」
 
「おい!神保っ!」
 
 口にチャックをする仕草の黄技術部長。異星人と地球が交流を持っている事は最上級の秘密事項なのだ。
 
「あ、あ、あ、ははっ!そうでした。危ない危ないっ!はははっ!」
 
(( ハハハッ! ))
(( 神保さん、危ない、危ない。ハハハッ! ))
(( NO,NO,NO,NO~よ!ミッキー!うふふ! ))

 集まったUSASFや日本国軍、自衛隊の整備兵達も頭を掻きながら笑っていた。
 既にこの時点でも、ネイジェア星域皇国製の部品が機動モービルに使われ始めていたのだった。もちろん、極秘事項ではあるが。日本の優秀な技術者が月裏のアース・スーリアに派遣され、ネイジェア星人達と開発していたのだった。
 2000年以上、万世一系の天皇陛下が居る日本だから特別に星域皇国から許可が降りたのだ。しかし開発の範囲が決められていたが、そのベアリング干渉リングもネイジー(ネイジェア星域人の総称)達との共同開発製品だったのだ。笑いながらオブライエンがまた口を開いた。後ろから神保の腕を握り、パンパンと肩を叩いた。
 また、普通に日本語で話した。
 
「ハハハハッ。主任?黄ちゃんも。解らない事は考えても解らないよ。メンドーだけど組み立てようか。出来る事を先にしようよ。黄ちゃん、僕達は先にバラしておくわ。組み立てはリンダとアイダが手伝いたいって。」
 
「あ、トミー有難う。助かります。リンダちゃんも、アイダちゃんも。」
 
 ニコニコと手を挙げて答える女性上級整備兵、アメリカ宙軍のリンダ・アイランドとカナダ宙軍のアイダ・ブランだった。ニコニコしてアイダが答える。
 
「なんともないわ。ね?リンダ。黄ちゃんも、ミッキーたちだって、いつも手伝ってくれるでしょう?お互い様よ。さ!チーム・ジェシカ続けようか。」
 
(( 了解。 ))

 快く応じて、作業に向かうUSASFの男女6人。共に解散して部署にもどる自衛隊と日本国軍の整備兵たち。神保が気を使って、みんなに話しかけた。
 
「ヘイ!トミー。有難う。みんなも有難う。あとで、おごるわ。(英語)」
 
 ニッコリうなずくトニー・オブライエン技術主幹部長たち。
 
(( イエーイ!ミッキー! ))

 手を上げて喜ぶオブライエンたちだった。彼らは神保の飲み仲間でもあるのだ。ミッキー、ミッキーとジェシカチームと、何かあると声がかかり、両チームは仲が良かった。
 
 ジェシカチームの6人の整備兵はまた、シバの神の分解作業に戻った。再びしゃがんで亀裂を指でなぞる黄技術部長。黄は彼らを見ながら立ち上がり、周りを見渡してから神保を見た。
 
「とにかく、神保。頼むわな。確か後2セットあるけど、とりあえずIHe製の手配はノーラちゃんか京子姉さんに通した方が早いかもしれん。」
 
「了解しました。」
 
「俺もそれとなくきよしに言っておくわ。今の時代にお前について来られる機動モービル、まだないってな!はははっ!笑うしかないわな。ほんと漫画だ。漫画。」
 
 黙々と整備を始める第11番倉庫、技術部のスタッフだった。
 
 倉庫群の北側奥からシャトルなのか、エアバスなのか、離陸する音がひっきりなしにする。青空が広がる千歳宙空ステーション。
 
 5月のまだ涼しい風が、倉庫の脇に咲きはじめた花々をやさしく撫でた。
 
 開いた倉庫の入れ口の脇に農家の小さなBEVの軽トラックが止まった。
 その軽トラックから頭にタオルを巻いた大男が「にゅう、」と体をねじって出てきた。
 
 椎葉きよしだった。
 
 倉庫の中を農協の白いビニールの長靴をキュッキュッと音を立てて歩いて行く。
 水耕栽培の自家のビニールハウスの仕事を終えたのだろうか、休暇中でも農作業をしていたのか、少し汚れた農協のつなぎを着て倉庫に入ってきた椎葉きよし。
 作業している面々も手を止め立ち上がりきよしに敬礼をする。
 返礼をしながら歩く椎葉少尉。
 そして、黄の前で胸を張って敬礼をした。
 
「おざっす!技術部長。」
 
 敬礼をする椎葉きよし。敬礼をして、チラッと横を見ると、自機の34式乙型の機体(シバの神)の下半身がバラバラに分解されていた。
 その作業をする人たちを見ながら困った顔をするきよし。
 
「えー?良くわかりませんが、また、何か御手をわずわらす問題が出たのでしょうか?部長。」
 
 敬礼をした腕を降ろしながら心配になり、更に表情が曇るきよし。
 そんなきよしと黄の周りに、整備の手を手止めて、ゾロゾロとやって来た技術スタッフ一同。
 自分の部下のスタッフたちを見渡して、笑顔でしゃべる黄部長だった。
 
「あん?きよし!いつもの事だ!俺達の仕事だ!」
 
 背の高いきよしの肩に無理に腕を回し、笑いながら話す黄。
 
「きよしも少し休め。今日はルオも、小林君も。なんやら2人で買い物に行ったみたいだけど。きよしも休めよ。また、農作業の手伝いしてんのか?」
 
「はい。」
 
「ダメだって。今日はまだ休暇2日目だろう?畑仕事くらい、シゲルに任せて、彼女と栗山で休め。カラダ~休めんとな。どんなダメージがあるかも解らん。なっ?」
 
 自分の子供に諭すように話す黄。
 興味津々に2人の会話を思いっきり近寄ってきく、女性上級整備員のリンダとアイダ。その2人をチラチラ見ながら、恥ずかしそうに話すきよしだった。
 
「は、はい、有難うございます。奈美ばあちゃんが育てた水耕栽培の手入れをちょっと。少し荒れてたんで。ヘヘヘ。岩イチゴちゃんとか、水通りが悪くて可愛そうで。ホワイトアスパラの収穫も再来週に控えてるから。ヘヘヘ。」
 
( お子ちゃまきよしって可愛い。 )
 
( うわ~ナンバーワンのトップガンが、ファーマーって素敵。なんか好きになりそう。 )
 
 目を輝かせてあからさまに見る2人の女性上級整備兵にだらしなく照れるきよしだった。
 微妙な顔をして、女性整備兵ときよしを見る黄。
 
「いや、えへへ。」
 
「まぁええわい。だけどオリー(オリエッタ博士)から聞いたが、またアタッカーでナンバーワン獲ったんだろ!なっきよし!」
 
( きゃー!凄い、凄い! )
 
( お子ちゃまきよし凄い、凄い! )
 
 ピョンピョン跳ねる女性2人。少し照れて、頭を掻くきよし。
 そのきよしの肩をバシッと叩いて、周りに聞こえるように大声で叫んだ。
 
「おーい、この第11番整備倉庫!小林小隊の整備部隊!お前がナンバーワンになるのが一番の誇りだ!な~っみんな~っ!」
 
(( イエ~イ!! ))
 
(( 少尉、最高~! ))

 総勢70名の整備兵の拍手がこだまする整備倉庫。
 運搬用機動モービルの上や中から、クレーンのオペレーションルームなど、全ての整備兵が腕を上げてきよしの成績を喜びあった。
 腕を上げて喜ぶ大勢の整備兵達。

(( おめでとー!少尉! ))
(( 凄い、凄い! ))
 
 周りを見て照れるきよし。
 そして、倉庫の技術者がきよしの元にゾロゾロと集まって来た。つなぎの上を脱いで腰に巻くきよし。整備兵達がきよしの頭や肩、胸を叩きにきた。皆、40代や50代の世界各国の同盟国から派遣された一級の技術者たちだった。
 若い金髪の2人の女性上級整備兵は順番に抱き着いて、思いっきりキスをした。
 照れすぎて赤黒くなるきよしの顔。
 髪の毛がグシャグシャになりながら気絶する位、照れるきよしだった。
 年配の女性整備兵達は順番に背の高いきよしの顔を挟んで、ほっぺたに思い思いに、自分の家族や子供の様にキスをしたり、抱き着いたり。
 もうグシャグシャ。
 そんなきよしを囲んで盛り上がる中、BEVのケータリング・トラックが1台、各整備倉庫が繋がる接続通路からゆっくりやって来た。
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