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第8章 地獄のカップル。

第2話 HAMOR運用の新時代。

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 予想外の訓練進行に騒然とする本部作戦テントだった。

 突然の小林小隊とスミス小隊、張小隊の急襲攻撃。
 
 アグレッサーたちはスナイパーに続き、コマンダーとそれを守るアタッカーHAMORがきよし、ジェシカ、張の3機のアタッカー・HARMORによって開始2分も掛からずに沈黙させられたのだった。
 その内、虎の子のワイルドカードのスナイパー・HARMORの3機を一気に失った。

 アグレッサー部隊の4チーム(4小隊)の12機が討ち取られたのだ。

 アグレッサーHAMOR部隊は残り38機となった。

 余りの速さでの攻撃を受けて本部テントでは、パニックになるアグレッサー部隊側のシーラス・USA、フランス、ポーランド、イギリス・自衛隊、日本国軍のベテラン情報士官や、バックアップパイロットたちだった。

 そんなパニクる各国の士官たちを冷静に、少し冷たい目で見ている集団があった。
 小林小隊の実験的なロフテッド急襲訓練の最初から付き合っていたHARMOR開発のデベロッパーや、民間会社の研究開発の技術スタッフたちだった。
 初めて訓練に参加する各欧米諸軍のスタッフの、いつものリアクションを見て冷笑を向けていたのだった。

 そんな中、御舩と岩井が後ろの空を見ながらテントに入ったきた。

「あら、え?あら。先輩。始まったばかりなのに、この本部パニクッてませんか?」

「ふっ。」

 ドヤ顔の御舩。

 正面の巨大モニターを見るように岩井空宙将の肩を叩いて、画面右端に指を指した。

 巨大なモニターにはアグレッサー部隊を表した赤いアイコン。
 訓練HARMAR部隊を表したグリーンのアイコンがあった。

 ひとつのグリーンのアイコンが中央左のアグレッサーHAMOR部隊のド真ん中に侵入していた。
 椎葉少尉機の「GOS」、シバの神だ。

 背部にある3つの素早く点滅する赤いアイコン。倒したばかりのワイルドカードのスナイパー・HARMORだった。
 赤い点滅(完全破壊)が虚しく点灯していた。

 そして、北部から女真帝国宙軍のチュア大佐率いる3小隊(女真、日本国軍、自衛隊)の、同僚パイロットたちが言う、いわゆる「ド根性チーム」のアタッカー・HAMORが長いヒート・ソード片手に斬り込んできたのだ。

 きよしを中心に取り囲んだ、12機のアグレッサー部隊が、今度は北と東から挟撃されようとしていた。

 岩井が巨大モニターの左手を見ると、きよしたちのように派手さはないが、ポーランドのバルトシュ中隊も確実にアグレッサーHAMOR部隊を仕留めている。

 2機のアグレッサー機がやられて、残りのアグレッサー機は、後退を始めたようだった。

 さすがに超人的な椎葉きよしたちと違って、バルトシュ中隊にはそれなりにアグレッサー部隊と交戦して被害が出ていた。
 アルファ(A)チームの「ゲームボーイ中隊」、ブラボー(B)チームの「シルバーヘアー中隊」の双方には、まばらに負傷判定の白いアイコンがいくつも点滅していたが問題なく進軍していた。
 白いアイコンは小破判定なのだ。

「バルト君たちもがんばってるようですが、先輩。結構アグレッサー部隊にやられているようですね。小破判定が10機も出てますよね。さすが元トップガンの先生たち。でも、先生たちは2機完全破壊されてますよね。」

 モニターを見ながら腕を組む御舩。腕を組んで岩井に答えた。
 
「カミンスキーの部隊は良くやっている。うん。よくやっている。小破判定が数機出ているが全く問題ない。大隊の全機が僚機を失う事もなく、作戦行動が可能で、しかも敵を2機も撃退したんだ。通常ならテン(10点満点)の優秀な成績だ。」
 
「え?じゃー、きよし君やジェシカちゃんたちが異常なんですか?きよし君がいなかったらバルトの現在の状況は高得点状態なんですかね?」

 岩井の肩をバシッと叩く御舩。
 
「そう言う事だ。うすらボケ(きよし)たちがいなければ、カミンスキー訓練大隊は世界のHARMOR保持国では最高得点だ。」

「ひえー。そうですか、そうですか。なる程ねー。きよしお坊ちゃんスゲー。」

 岩井が再び右側に目を移す。

 椎葉きよしの「GOS」を丸く囲む赤いアグレッサー部隊のアイコン。
 
 その後ろからバーニアで突っ込んできたジェシカの「メティス」と張の「ポールダンサー」の2機がアグレッサーアタッカーHAMOR2機を討ち取った。
 また2つの赤いアイコンが素早く点滅した。
 しかし、敵もさるもので、そのジェシカと張へカウンターした。
 正体不明の敵から狙撃されたのだ。
 
 ワイルドカードのアグレッサースナイパーHAMORからカバーショットされ、同時にジェシカが被弾、張大尉が小破。2機を示す白いアイコンに小さく白いアイコンが重なって点滅始める。

「あ!ジェシカちゃんと張君、やられた!」
 
 ジェシカと張を表すアイコンが一時後退を始めた。無表情でそのアイコンを見る御舩だった。
 真ん中のきよしの34式HAMORは全く無傷のまま戦闘を始めたようだった。
 
 巨大なテントの中の、それも巨大な横長のモニターに刻々と映し出される訓練生部隊とアグレッサー部隊の戦況。
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