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第7章 ロフテッド軌道・急襲攻撃訓練。

第3話 「お子ちゃまきよし」の由来。

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 椎葉京子に突然名前を呼ばれて、急に赤くなる、ジェシカ・スミス少佐だった。
 
 実は今年の冬から、年下の椎葉きよしと本格的に付合い始めたのだった。
  
 ……ちょっと、余談。
 
 ジェシカは2年前に米国宙軍USASFより派遣され、千歳シーラスワンに配属されたのだった。当時から彼女はローマン・マズル大佐の部下であり弟子だった。
 今ではローマンと並ぶ機動モービル、HARMORのトップパイロットだったのだ。

 きよし、未央、ルオが千歳予備役校の3年生の時の教官の一人でもあった。実は、自宅がアメリカ・テキサス州の大農家の彼女。

 彼女の妹、ルーシー・スミスが大のミリヲタで、小林小隊のファンだったのだ。

 とりわけ「お子ちゃまきよし(日本語でそのままのニックネーム)」の大ファンだった。その妹の影響でジェシカもミリヲタの一人になった。
 そのミリヲタが昂じて、そのままテキサス州立大学を1年で中退。
 USASFに入隊したのだった。
 当初はジェット戦闘機と宙空攻撃機との身体特性が買われ、ほぼ2年でテストパイロットまで登り詰め、現在配属準備中のF-39シリーズと90メートル級汎用スペース・シャトル・オービターのテストパイロットだった。

 しかし、パイロット上司のローマン・マズもともとは機動モービルHARMORの開発スタッフであり、機動モービルに転向を機会に、ジェシカもHARMORパイロットになった。

 最終目的は、当時最先端の千歳シーラスワンに配属する事だった。
 努力に努力を重ね希望配属が実って、今ではシーラスワン将官中、紅一点!訓練大隊の第2大隊長にまでなったのだ。

 そのジェシカ、……実はきよしと交際が始まってからは、妹のルーシーと姉妹でケンカ中なのだった。
 
 妹がファンになったきっかけは、SNSで機動モービル、機動歩兵、アーマースーツのフラッシュモブを見てからだった。
 ルオの母リーリン博士が受けた、ルオの実父、黄技術部長のプロポーズのフラッシュモブで、後ろで踊っていた3機の大型機動モービルを見て感動したのだ。

 少ない情報ながら小林小隊ファンクラブを創設、それから半年以上追跡をして、日本の地上波で特集番組を見つけた。早朝、リアルタイムで妹は観る事が出来た。

 その題名は【世界中の軍人が畏怖する、世界最強ナンバーワンの超エリートアタッカー!サムライHARMORパイロットの正体は。】だった。

 フランスのテレビ局製作、千歳シーラスワンの短時間30分の取材特番を見つけたのだった。
 
( 地球の衛星軌道上を飛ぶ40メートル級の訓練オービター。オービターの窓から望む宇宙空間に青い地球が広がっている。今回の訓練テーマは衛星軌道上の仮想敵国の武装衛星の確保だった。 )
 
( ブリーフィングを受ける3名の日本国宙空部隊予備役3年生。背中には真っ赤な旭日旗が描かれたクルースーツ。現役の高校生との解説が入る。ブリーフィングが終わり、3人のモザイクが掛かった顔にインタビューするTVクルー。インタビューが終わり狭いオービターの通路を遊泳しながら通る馬鹿デカい3人の高校生。着替えルームで着替えを始める3人。TVクルーの質問に答えながら着替える3人。鍛えられた逞しい身体が現れて、黙々とパイロットスーツを着始める。3人の中でも最もムキムキなのが椎葉きよしだ。きよしの裸体、大きなモザイクが股間に入る。着替えが終わりカメラ寸前を遊泳してモービル格納庫に入る3人。訓練用機動モービルに軽々と乗り込む、パイロットスーツからも解る逆三角形の筋肉隆々の背中。そして振り向く世界トップのアタッカー・パイロット。……お子ちゃま顔の椎葉きよしだ。全世界がひっくり返った瞬間だった。 )

 今はモザイク処理されて見ることが出来ないが、全米にその顔のアップ写真がニューヨークタイムズの表紙を飾った。
 
 今でも姉妹はペンダントのロケットの中にその写真を貼って大切にしているのだ。その姉のジェシカが予備役校の機動モービル訓練で初めて椎葉きよし出会った。憧れのお子ちゃまきよしとの初対面だった。

 予備役校用の巨大な倉庫内。(今の千歳シーラスワンでは6番倉庫にあたる。)倉庫の後ろでは訓練用の機動モービルがズラリと6小隊の18機が並んでいた。訓練用のパイロットスーツを着て手前に並ぶ機動科生徒たち。その、ちょっと離れた所に正式な実戦用パイロットスーツを着た3人が並んでいた。

 訓練生の前に、深緑のベレー帽をかぶり、後ろに手を組み訓練生に訓示をしているローマン・マズル大佐。ジェシカ・スミス大尉が突然やって来て、ローマンの側に立ち予備役生へ敬礼をした。きよしとジェシカの初めて会った瞬間だった。

 椎葉きよし訓練生伍長18歳、ジェシカ・スミス大尉22歳。

 一番右端に並ぶ小林小隊の3名。この頃、小林訓練小隊は特に優秀だった為、他の予備役校生に先駆けて高校の春休みを利用して島嶼奪回の通常降下訓練の3回目をこなしていたのだった。だからパイロットスーツも訓練用ではなく、正規のパイロットスーツを着ていたのだ。

 試験訓練というよりほぼ新型50ミリ速射カノン砲と後方支援用スナイピング・レールガンの実験が目的だった。

 誰が見てもこの小林訓練小隊と他の15名の訓練生とは、全く違うオーラを感じる事だろう。

 何かあどけなさが残る18名の訓練生の中に、大ベテラン3人が居るみたいな違和感を感じた。

 厳しい表情のままジェシカを見る小林。その後ろでは姉妹で憧れていた“お子ちゃまきよし”がいた。ジェシカが妹に”勝った“と思った瞬間でもあった。
 
 胸が高鳴るジェシカ。その高揚がバレないようにニコニコと装って、配属の挨拶をした。そんなニコニコ顔のジェシカを見て、きよしも少しニッコリした。そのきよしの後ろの大男のスナイパーのルオ・黄少尉。小林と同じく厳しい顔でジェシカを睨んで見ていた。
 その初めてジェシカが見る小林訓練小隊。ジェシカもプロフェッショナルしか解らない、異様なオーラを感じていた……。それがきよしとの出会いだった。
 後日談で、その時の小林とルオは居残りで、前日の対G訓練を限界Gで行った為、気絶し、翌日になっても吐き気が収まらず我慢していたとの事。(笑)
 
 話は訓練場にもどる……。
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