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第4章 涙の宇宙回廊。

第3話 妖怪油女(ようかい、あぶらおんな)

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 京子は思い出しながら少し涙目になった。

 そして鼻をすすり、残った赤シソジュースを飲んで、台所でコップを軽く洗って置いた。

( ジャー、……キュッキュッ。 ゴトン。 )
 
「まぁ、繁や京子さん、ノーラちゃんも頑張ったけど、オディ子の両親助けられなかったって聞いてな。詳しく、わからんけどもさ。ウィルちゃんも、自分の息子と嫁を亡くして、気の毒だったなぁ。」
 
 沈黙する奥様連。

 しかし、明るい甲賀さんが、鼻を赤くしながら爽やかに話した。
 
「エダちゃんとリチャードさんかぁ。アイラちゃん達と良くウチのハウスで野菜取り手伝ってくれたよね。リチャードさん、カッコいいけどぉ、でも鈍くさかったよね。はははっ。」
 
 うつむきながら、また涙目になる甲賀さんと佐藤さんだった。
 
「ははっ。でもさ、2人とも居ないんだよね~、もう……。だけど、ノーラちゃんも綺麗だけど、エダさんすっごい綺麗だったよね。艶々の黒髪でさ。」
 
「オディアちゃん、エダさんの面影あるよね。」
 
「そう、そう。一瞬ある~。似てるよね。アッ!て。エダちゃんだって。」
 
 京子も、麗子も鼻を赤くして、話を聞いていた。

 そして、鼻をすすりながら甲賀さんの奥さんが違う話を始めた。
 
「でもさ、なんか、奈美叔母さん、アメリカのSF映画みたいですよね。京子さんや麗子さん達としょっちゅう作業とかしてるけど、宇宙軍の人なんて全く感じないですよねっ。佐藤さん家も、わが家も一切秘密にしてますけど。でも、お話だけでドキドキします。ねっ?佐藤さん。」
 
 話が切り替わり、話に乗る佐藤さんの奥さん。
 
「夜なんか、椎葉さん家にUFOが下りてくるの、初めて見た時、主人や主人の両親とドキドキして窓からカーテン越しに隠れながら見てましたけどぉ。直ぐに正体が解った後は、今では(また、宙軍の人来たんだ。いや、自衛隊か?ノーラちゃん?)って当たり前になりましたよね~。あっ京子さんたち帰って来たんだ、みたいな。透明になって、隠れて、え~遮蔽っていうの?遮蔽して帰って来たみたいな。ふふふっ。」
 
 ジュースを飲みながら楽しそうに話す佐藤さんと甲賀さんの奥様達。
 
「でもノーラちゃん、最近は忙しいのかな?京子さん。その時は1か月位、家にいたな。その後、しょっちゅう京子さんと遊びに来てたべさ。今は、お月様で忙しいのかな。まぁこの間、京子さんとノーラちゃん電話で話してたけどな。まぁ、初めて来た時は、シソジュースとシャケお茶漬け、ウチの温泉が一番気に入ったらしい。はははっ。帰る時、シソジュースもいっぱい持たせたわ。お月様で飲め~ってさ。はははっ。丁度、煮終わった新しい赤シソジュース、ペットボトルに詰めて、あのユーホーの中に段ボールで入れてあげたわ。ははっ。まぁ~色々だ。」
 
 うなずきながら楽しそうにシソジュースを飲む奥様方。
 
「そんな事もあったけど、な~んか、京子さんがこんな北海道の田舎に嫁いできて、それからきよしが産まれて来てからこの13~4年間か。結局、きよしも優しい子に育ってくれたしな。きよしも道場習い始めて、体も丈夫になって。今じゃ中学生だべさ。急に背が伸びてきたな。大男になるんじゃないか?きよしは。私もおかげで黒髪増えて、白髪が減ってきたわ。わはははっ。」
 
 佐藤さんの奥さんが驚いた。
 
「えー!白髪って減るんですか?代わりに黒髪増えるんですか?」
 
「若返ったんだべさ。はははっ。」
 
「もう、おかあさんったら。ふふふっ。さぁ、さぁ。門下生のご家族の皆さんおなかも減ってるでしょうから、準備しますか。私、コンロの火つけて回るわ。麗っ!」
 
 麗子も笑いながら立ち上がった。
 
「ハイハイ。私は鍋乗っけて、ラードで油引くがな。妖怪油女ようかいあぶらおんなするわ。はははっ。」
 
( なーに~っ、妖怪油女ようかいあぶらおんなって、はははっ。 )
 
 盛り上がる台所。近所の奥さん達も立ち上がった。
 
「じゃ、飲み物の準備します。甲賀さんも行く?」
 
「佐藤さん了解。よっこいしょっと。さぁ、飲み物、コップは道場の棚の使っていいですよね、京子さん。」
 
「はい、甲賀さん、佐藤さんお願いします。あれっ佐藤さん、ダンナは?」
 
「ムコ殿は、娘のトモ子と家に戻りました。アイヌネギも持ってくるの忘れたって。」
 
「アイヌネギって行者にんにくでしょ?」
 
「サッと焼いてジンギスカンを巻いて食べると美味しいのよ。今はホワイトアスパラと一緒にハウスで栽培しているの。あ、今年最後の普通のアスパラも取りに行きましたよ。」
 
「へ~っ。佐藤さん、お手伝いしてもらってるのに、お野菜まで。ありがとう。じゃ、また皆さんお願いします。」
 
「ではでは、どーれ、ババ~は、ご飯の盛る準備するべか。妖怪、飯盛りババ~するべか。よっこらしょ。」
 
( 今度は、飯盛りババ~って!はははっ! )
 
 楽しそうに準備を始める京子達だった。
   
■ 「それでは、杉山君の国際大会の優勝を祈って、乾杯!」
 
   ((   乾 杯!   ))
 
 椎葉繁が乾杯の音頭をとって杉山師範の壮行会、宴会が始まった。

 至るところでチンッチンッとグラスを合わせる音が聞こえる。

 思い思いにジンギスカンを焼き始める家族たち。

 総勢60名は集まっただろうか。

 ワイワイガヤガヤと、にぎやかな道場。
 広い道場が狭くなった感じだった。
 
 人の合間をキャッキャ!と走りまわる真理亜とオディアとトモ子ちゃんの3人娘。
 
「ほれ~トモ~。ごはん食べるよ~。」
 
 キャッキャと逃げる娘を捕まえて、膝に乗せて別に用意したお子ちゃまご飯を食べさせる佐藤さん夫婦。

 真理亜はジョナサンパパの所で、オディアは繁パパのあぐらの上にチョンと座り、お子ちゃまご飯を食べていた。
 
 陽も暮れ、道場の玄関や、部屋の明かりが駐車場の車を照らした。
 
 少し黄色く染め始めた白樺林に囲まれた椎葉道場は、夜が更けても笑い声が絶えなかった。
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