上 下
64 / 88

10-3

しおりを挟む

カフェで珈琲を飲んでいると、私はトイレに行きたくなってしまった。

萩原なら大丈夫だと思い、雫を少し見てもらうよう頼んでしまったのだ。

「萩原先生、申し訳ないのですが、トイレに行きたいので少し雫を見ていてくれませんか。」

萩原は笑顔で応えた。

「もちろん、大丈夫ですよ。ゆっくり行ってきてくださいね。」


私は安心してトイレに向かった。


トイレを出て自分の席に戻ると、私の荷物は置いてあるが、萩原と雫が見当たらなくなっていたのだ。


私は咄嗟に隣に座っている女性に声を掛けた。


「ここに座っていた女性とベビーカーの子供を知りませんか?」


すると、その女性は驚くことを言ったのだ。


「あなたが立ってすぐにその女性はベビーカーを押して店を出て行ったわよ。私はてっきり知り合いだと思っていたけど、まさか違うの?」


私は全身から血が引いていた。
顔も手も冷たくなり、震えも出て来た。


私は店を出て、萩原を探すために走り出した。

どこをどう走ったか自分でも分からないほどに探し回ったのだ。


しかし、どこにも雫の姿は見えないのだった。







「どうしよう…陽斗さんもいないし…。」

陽斗は出張中で迷惑はかけられない。
私は陽斗の実家である西園寺家へと走ったのだ。


「私がすべて悪いのです…雫が…雫が…。」


お義母さんは私の慌て方に驚き、私の肩に両手を置いた。


「澪さん、大丈夫ですよ。ゆっくり話をして。」


「お義母さん、雫が…雫が…誘拐されたみたいなんです!」


「なんですって!!」


私達の声を聞いて、お義父さんと村瀬が駆け寄って来た。


「澪さん、状況を詳しく教えてくれないか。そして陽斗はこのことを知っているのかい。」


「陽斗さんは出張中でお話していません。雫を連れて行ったのは、パパの育児教室で先生をしている萩原という女性なんです。」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お前は俺の指示に従え〜意地悪な外科医との契約結婚

ラヴ KAZU
恋愛
鶴巻梨花 三十九歳 コンビニでバイトしながらギリギリの生活をしている冴えないアラフォー。 ある日めまいを起こし、ふらついた時足首を捻って立ち上がれなくなった。 救急車で搬送されたのが最上総合病院だった。 そこで意地悪な外科医最上丈一郎と出会う。 最上丈一郎 三十二歳 最上総合病院の天才的外科医、父親が医院長を務めるこの病院をゆくゆくは継ぐ立場である。 結婚を余儀なくされるが、意地悪な性格が災いして、また恋愛が苦手なため梨花に契約結婚を申し出る。 コンビニでギリギリの生活をしているアラフォー鶴巻梨花はある日足首を骨折し、手術を余儀なくされた。ところがお金を払えないと言うと天才的外科医最上丈一郎は契約結婚を持ちかける。俺の指示に従えと意地悪な言葉を投げつける。しかし、お互いに惹かれ合うことになるが、素直になれない。丈一郎の本心がわからず悩む梨花。 果たして二人は結ばれるのだろうか。        

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する

真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。

会うたびに、貴方が嫌いになる

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。 アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

処理中です...