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しおりを挟む「陽斗さん、お帰りなさい。」
陽斗が帰って来たのは夜の9時をすでに回っていたが、今日は一緒にご飯が食べたくて待っていたのだ。
「澪、夕食を待っていてくれたのかい。」
「はい。陽斗さんと一緒に食べたくて。」
すると陽斗は意外な表情を見せたのだった。
口に手を当てて頬と耳が赤くなっているように見える。
「なんか嬉しいもんだな。澪が俺と一緒に食べたいなんて言ってくれると、すごく嬉しい。でも今度からは先に食べていてくれよ、澪がお腹空かせていないか心配になるからな。」
今日はお母さん直伝のカレーライスとポテトサラダだ。
カレーの中にトマトやオクラなど沢山の野菜をいれるのが、実家の母の得意料理だ。
ポテトサラダもマヨネーズは少量で塩コショウを効かせた大人の味になっている。
「澪、このカレーすごく美味しいな、なんか体に優しい味がする。」
「はい、実家の母が教えてくれたんです。ポテトサラダも美味しいですよ。」
陽斗が美味しそうに食べる姿をみると、とても嬉しい気持ちになり自然と笑顔になる。
「澪は料理が上手なんだな。…そうだ、今度一緒に料理を作らないか?いろいろ澪に教えて欲しい。」
「はい、では一緒にお買い物から行きませんか?素材選びも楽しいですよ。」
安藤が言っていたことは、こういう事なのかも知れない。
何か特別な事じゃなくても、お買い物に一緒に行って欲しいとおねだりが出来たのだ。
今日は陽斗さんがお休みの日。
先日約束したお買い物に一緒に出掛ける予定だ。
近所のスーパーマーケットでお買い物をすることにした。
スーパーに付くと、陽斗は目を丸くして驚いている。
コンビニには行ったことがあるが、なんと陽斗はスーパーでの買い物が初めてだったのだ。
考えてみたら、西園寺家の御曹司である陽斗が、自分でスーパーに買い物に行くことなんて無かったのだろう。
「澪、すごいなぁ、なんでも売っているんだな。野菜も魚も肉もすべて揃うなんて便利だな。」
スーパーのショッピングカートの籠を乗せて準備すると、陽斗はそれも目を輝かせていた。
とても興味がありそうなので、陽斗にカートを押してもらう事にした。
なぜかスーパーのカートが陽斗が押すとおしゃれに見える。
周りにいた女性達も陽斗を見て頬を赤くしている。
どこにいても注目を浴びそうである。
カートを押しながら、まずは野菜売り場だ。
「陽斗さん、キャベツを一つお願いします。」
「うん、これで良いかな。」
陽斗は適当にポンと籠にキャベツを入れた。
私は慌てて陽斗に声を掛ける。
「陽斗さん、キャベツも選んでくださいね。」
「え…選ぶっていっても、どんなキャベツが良いんだ?どれも同じように見えるけど。」
「鮮度の見分け方としては、芯の切り口が新しくて綺麗なもので、巻きが固くて重量のあるものが良いみたいですヨ。」
すると、陽斗は私を尊敬するような目で見た。
「澪、すごいな。物知りで驚いたよ。」
「ふ…普通ですけど。」
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