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恋人
しおりを挟むその日の午後
私は働いていたホテルへと向かっていた。
突然休職することになり、引継ぎもままならない状況で休職しているので皆に迷惑をかけている。
落ち着いたらなるべく早く職場に顔を出すことになっていたのだ。
「先輩!お久しぶりです!」
私に声を掛けたのは1つ後輩の、池田 真由(いけだ まゆ)だった。
私の後任で婚礼の担当になったと聞いている。
「真由ちゃん、久しぶり。」
久しぶりと挨拶を交わしているが、まだ休職して1週間しか経っていないのだ。
真由はいきなり口を尖らせて私を上目使いで見上げた。
「先輩が羨ましいです。あんなイケメンの旦那様が突然出来てしまって!しかも西園寺さんといえば有名人じゃないですか。あ~あ、あの日に私がフロントに立っていれば良かったな。」
「…そんな、ただの仮初め妻だよ。少ししたら離婚すると西園寺さんは言ってたしね。」
すると。真由は少し悪戯な表情をした。
「先輩が離婚したら、私にもチャンスはあると言う事ですね!」
真由は冗談のつもりかも知れないが、離婚したらという言葉になぜか胸がズキッと痛むのを感じた。
ホテルで一通りの引継ぎなどを行って家に着いたのは、もう19時を回っていた。
陽斗からはまだなにも連絡は入っていない。
今日も忙しくしているのだろう。
マンションのロビーを進みエレベーターに乗ろうとした時だった。
後ろから女性に引き留められた。
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