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これでこの話は一件落着と思っていたその時。

CEO室を大きな音でノックする音が響いた。

瀬谷さんが、急ぎそのドアを開けると、それを待てないとばかりに一人の女性が部屋に飛び込んで来たのだ。

その女性は大きな瞳でお人形のような可愛い顔立ちをしている。

その女性が皆に向かって声を上げた。

「ハロー!みなさんお久しぶりですね。…今日は京子さんも来ていると聞いて急いで駆け付けたのよ!」

玲也はその女性に向かって大きな声を上げた。

「真紀!いつ日本に帰って来たんだ。それにここは会社だぞ、何しに来たんだ。」

すると女性はニコッと微笑を浮べる。思わず唾を飲み込むほど可愛い仕草だ。

「あら~お兄様ったら可愛い妹に厳しい言葉!」



真紀と呼ばれたその女性は玲也を兄と言っている。

そういえば、以前に初めて玲也から服を買って貰った時、妹くらいのサイズで用意したと言っていたので、妹がいることは聞いていた。

玲也や蓮に負けない美しいルックスで妹と言われれば納得だ。
少し洋風の顔立ちに黒のロングヘアが印象的だ。

真紀は玲也の隣に座っている私の存在に気が付いたようだ。

私の真正面に立ち私をじっと観察した。
何か文句を言われそうで心臓がドクドクと大きな音を立てている。

少しの沈黙後、真紀はケラケラと一人で笑い出したのだ。

「お兄様、こちらの女性はまるで小動物のようで可愛いですね。お兄様の恋人?」

いきなり小動物と言われて、怒るよりも驚いた。
しかも真紀は全く悪気の無い表情をしている。

玲也は真紀を叱るような口調で話した。

「真紀、いきなり小動物とは何を言うのだ。失礼だぞ。彼女は花宮唯さんと言って、僕の婚約者だ。お前のお義姉さんになる人だぞ、謝れ。」

京子さんも少し怒った表情をした。

「真紀ちゃん、久しぶりだけど、玲也さんに怒られても当然よ。唯さんに謝りなさい。」

私は慌てて声を上げた。

「あの…いいのです。私は本当に皆さんから見たら小動物みたいですし…玲也さんと釣り合わないのは自覚しています。」



さらに玲也は厳しい表情で続けた。


「真紀、出て行きなさい。皆さんのご迷惑です。…それと、唯さんを馬鹿にするなら二度とここに来るな。本気でお前を許さないからな。」


真紀ちゃんは玲也に怒られ、驚いた表情をする。


「へぇ~お兄様がこんなに真剣に怒るとは、驚きだわ。唯さんが本当に大切なのね。」


真紀はふっと不敵の笑いをするとひらひらと手を振ってドアに向かった。


「邪魔者は帰るわ…私は唯さんを認めないけどね。」


真紀はバタンと大きな音を立ててドアから出て行った。




真紀が部屋を出た後、皆が言葉を失い沈黙した。

その沈黙を破るように話し始めたのは玲也だ。


「すまない…いつまでも自由で子供の妹を許してくれ。」


続いて声を出したのは京子だった。


「…真紀ちゃんは、小さい頃からお兄様が大好きだったのを覚えているわ。…大好きなお兄様を取られたくないのよね。」


京子の誤解が解けて、少しホッとした矢先の出来事に、驚いた私は何も言葉が出なかった。


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