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第31話「自分の使命、ミケの涙」
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「ああ、うん……。あのさ、ミケ」
「……はい?」
冷静にミケの目を見て話すと、やはり少し変な気分になってくる。御者はポルニア国に呪いが掛けられる前にはミケのような人物が半数いたと言っていた。こんな変なフェロモンを出すヤツがあと半分もいたら、この国は盛ってばかりになる。
まあ、だから王父の相手は他のヤツに抱かれてしまったんだろうけど……
「その、ポルニア国ののろ……あっ……」
言いかけてハッとした。
馬車で話していたことを口外すると、御者は呪い殺されると言っていた。俺がミケに話をしてしまったら御者が呪い殺されてしまうかもしれない。あぶねぇ……
「……ポルニア国が……なんですか?」
「いや、なんでもねぇ。それよりおまえ今暇か?」
「暇……ではございませんが。レイ様がお戻りになられておりますので、色々とご支度の準備がございますし」
あわよくば夕食の味見でもさせようかと思っていたが、その時間もないんじゃ仕方がない。
「一分でいい。そこ座って待ってろ」
アクアニア国から買ってきた山のような食材の中からミケが今すぐ食べれそうな物を探し出す。無意識に手に取っていたのはりんごだった。レイは美味しいと言ってくれていたけどミケはどう言ってくれるだろうか。
キッチンにはまな板、包丁、レンジ、オーブン、コンロ。ありがたいことに何でもあった。使われていないまだ新しい包丁を取り出しりんごを八等分のくし切りにして芯を切り落とす。皮の部分にV字に浅く切り込みを入れ、皮を剥いた。うさぎ形のりんごだ。綺麗に棚に直されていた小皿を一枚取り出し、三個ほど並べてミケの前のテーブルに並べる。
「手づかみで食べてみ」
「…………僕がレイ様を殺すよう仕向けたので、お出しになったのですか? それとも、僕が出した料理の嫌がらせですか?」
「ああ? 何言ってんだよ、俺がリンゴを剥いたのは味についてわかってほしかっただけだし、毒なんて入ってねぇ!」
ミケの皿に乗っているりんごを一つ手に取り、俺も自分の口に運ぶ。
……よかった、味は美味いままだ。そんな俺の様子を見たミケは皿に乗っているりんごを掴み恐る恐る口に運んだ。しゃりしゃりと美味しそうな租借音が聞こえてくる。
険しかったミケの表情が、りんごを食べて一変した。
「……こ、これは、なんでこんなに味が出ているのですか?」
「味が出ているんじゃなくて本来のりんごはこういう味なんだよ。てめぇが出す料理は全然味がしないって言ってた俺の言葉が分かったろ」
「は、はい……」
涙ぐむミケ。料理が不味いと言ってしまったことを根に持っていたのかもしれない。でも、仕方ないだろ。俺はまだその時ポルニア国のことも、かけられている呪いのことも全然分かっていなかったんだから。と自分で自分を正当化しつつも、少しだけミケが可哀想になった。
「でも、おまえだけじゃないんじゃね? ポルニア国は……そのなんつーか、思いやりとか、大切にしたいとか、いろんな感情が欠落していると思う。だから、そのミケが追い求めてる運命の相手も……言ってしまえば王に限らず、自分が好きになった相手に身体捧げていいんじゃないかって俺は思うよ。まあ、散々悪行をしてきた俺が言うのも変な感じするかもしれないけど」
「王……じゃなくてもいい?」
「だってよ、王と結婚したいがためにレイを殺させてその幸せを手に入れたとしても、王になるヤツとレイ派の人物の間では絶対に争いは起きると思う。レイが王でいてくれているからこの国が争いなく過ごすことができているんだと思うけど……ミケはそうは思わねぇ?」
尋ねると、ミケは「そこまでのことは考えておりませんでした。僕の役目は王と結婚して、王の子を孕むことなので」と、あくまで自分の目的しか考えていなかったようだ。だとしたら、ゲームのシナリオ事態の内容もだいぶ変わってくる。ミケは自分を好きでいてくれているそこそこ強いヤツとの結婚を決めただけであって、自分の気持ちは蔑ろにしているのかもしれない。
そもそも呪いが解ければ、ミケのように子を孕むことができる人物が半数も出てくるんだ。ミケは自分の使命に駆られなくて済む。ミケがレイにしたことは今も赦せないけれど少しだけ同情してしまう。
「まあ、俺から言えるがあるとしたら、使命とかそんなんに捕らわれずに生きろよ。レイがおまえと結ばれる気がないんだから、おまえは自分の使命に駆られなくてもいい……と、俺は思う」
「まあ、ゲームの内容はだいぶ変わってしまうけど」と、出そうになった言葉をひっこめる。今更ポルニア国のシナリオがという心配を俺にする資格はない。
「た、たしかに……そう言われれば……」
ミケは食べかけていたりんごを見つめ頷いた。
「自分が好いたヤツと一緒になれるように頑張れよ。俺、おまえだったら本気出せばイけると思う」
「イける……とは?」
「成功するってことだよ!」
「…………分かりました。しばらく自分の気持ちとやらと向き合ってみます。あなた様が来て僕のレイ様に関しての業務も随分と減るでしょうから」
……うっ、なんかすげぇ嫌味言われたような気がする。
「……はい?」
冷静にミケの目を見て話すと、やはり少し変な気分になってくる。御者はポルニア国に呪いが掛けられる前にはミケのような人物が半数いたと言っていた。こんな変なフェロモンを出すヤツがあと半分もいたら、この国は盛ってばかりになる。
まあ、だから王父の相手は他のヤツに抱かれてしまったんだろうけど……
「その、ポルニア国ののろ……あっ……」
言いかけてハッとした。
馬車で話していたことを口外すると、御者は呪い殺されると言っていた。俺がミケに話をしてしまったら御者が呪い殺されてしまうかもしれない。あぶねぇ……
「……ポルニア国が……なんですか?」
「いや、なんでもねぇ。それよりおまえ今暇か?」
「暇……ではございませんが。レイ様がお戻りになられておりますので、色々とご支度の準備がございますし」
あわよくば夕食の味見でもさせようかと思っていたが、その時間もないんじゃ仕方がない。
「一分でいい。そこ座って待ってろ」
アクアニア国から買ってきた山のような食材の中からミケが今すぐ食べれそうな物を探し出す。無意識に手に取っていたのはりんごだった。レイは美味しいと言ってくれていたけどミケはどう言ってくれるだろうか。
キッチンにはまな板、包丁、レンジ、オーブン、コンロ。ありがたいことに何でもあった。使われていないまだ新しい包丁を取り出しりんごを八等分のくし切りにして芯を切り落とす。皮の部分にV字に浅く切り込みを入れ、皮を剥いた。うさぎ形のりんごだ。綺麗に棚に直されていた小皿を一枚取り出し、三個ほど並べてミケの前のテーブルに並べる。
「手づかみで食べてみ」
「…………僕がレイ様を殺すよう仕向けたので、お出しになったのですか? それとも、僕が出した料理の嫌がらせですか?」
「ああ? 何言ってんだよ、俺がリンゴを剥いたのは味についてわかってほしかっただけだし、毒なんて入ってねぇ!」
ミケの皿に乗っているりんごを一つ手に取り、俺も自分の口に運ぶ。
……よかった、味は美味いままだ。そんな俺の様子を見たミケは皿に乗っているりんごを掴み恐る恐る口に運んだ。しゃりしゃりと美味しそうな租借音が聞こえてくる。
険しかったミケの表情が、りんごを食べて一変した。
「……こ、これは、なんでこんなに味が出ているのですか?」
「味が出ているんじゃなくて本来のりんごはこういう味なんだよ。てめぇが出す料理は全然味がしないって言ってた俺の言葉が分かったろ」
「は、はい……」
涙ぐむミケ。料理が不味いと言ってしまったことを根に持っていたのかもしれない。でも、仕方ないだろ。俺はまだその時ポルニア国のことも、かけられている呪いのことも全然分かっていなかったんだから。と自分で自分を正当化しつつも、少しだけミケが可哀想になった。
「でも、おまえだけじゃないんじゃね? ポルニア国は……そのなんつーか、思いやりとか、大切にしたいとか、いろんな感情が欠落していると思う。だから、そのミケが追い求めてる運命の相手も……言ってしまえば王に限らず、自分が好きになった相手に身体捧げていいんじゃないかって俺は思うよ。まあ、散々悪行をしてきた俺が言うのも変な感じするかもしれないけど」
「王……じゃなくてもいい?」
「だってよ、王と結婚したいがためにレイを殺させてその幸せを手に入れたとしても、王になるヤツとレイ派の人物の間では絶対に争いは起きると思う。レイが王でいてくれているからこの国が争いなく過ごすことができているんだと思うけど……ミケはそうは思わねぇ?」
尋ねると、ミケは「そこまでのことは考えておりませんでした。僕の役目は王と結婚して、王の子を孕むことなので」と、あくまで自分の目的しか考えていなかったようだ。だとしたら、ゲームのシナリオ事態の内容もだいぶ変わってくる。ミケは自分を好きでいてくれているそこそこ強いヤツとの結婚を決めただけであって、自分の気持ちは蔑ろにしているのかもしれない。
そもそも呪いが解ければ、ミケのように子を孕むことができる人物が半数も出てくるんだ。ミケは自分の使命に駆られなくて済む。ミケがレイにしたことは今も赦せないけれど少しだけ同情してしまう。
「まあ、俺から言えるがあるとしたら、使命とかそんなんに捕らわれずに生きろよ。レイがおまえと結ばれる気がないんだから、おまえは自分の使命に駆られなくてもいい……と、俺は思う」
「まあ、ゲームの内容はだいぶ変わってしまうけど」と、出そうになった言葉をひっこめる。今更ポルニア国のシナリオがという心配を俺にする資格はない。
「た、たしかに……そう言われれば……」
ミケは食べかけていたりんごを見つめ頷いた。
「自分が好いたヤツと一緒になれるように頑張れよ。俺、おまえだったら本気出せばイけると思う」
「イける……とは?」
「成功するってことだよ!」
「…………分かりました。しばらく自分の気持ちとやらと向き合ってみます。あなた様が来て僕のレイ様に関しての業務も随分と減るでしょうから」
……うっ、なんかすげぇ嫌味言われたような気がする。
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