5 / 62
第5話「推しと俺は宿命のライバル」
しおりを挟む
城内に入り長い廊下を歩く。
城内に仕えている給仕達は俺を見て悲鳴を上げて走っていく。あまり気分がいいものではないけれど、これまでのソウルの悪行を考えると仕方がないとも思う。
ミケの足は止まる気配がなく、ひたすらまっすぐ進む。いったいどこにレイの部屋があるのだろう。
長い長い廊下を抜け、階段を駆け下り薄暗い通路に出た。こんなところに到底レイがいる様子はないが、半信半疑で着いていく。コンクリートで固められたような部屋のドアを開け、
「お入りください」
照明一つのみの部屋に通された。
はっきり言って気味が悪い。こんなところにずっといたら精神的な病気にでもなりそうだと気づいたときには遅かった。その場に呆然と立つことしかできないでいる俺とは違い、ミケは何事もなかったかのようにドアの入り口まで戻っていた。
「レイ様を呼んできますので、ここでお待ちください」
そう一言だけ言い残しミケはそそくさと出て行ってしまった。
俺とハチミツはこの、コンクリートで覆われているような気味悪い部屋に閉じ込められてしまった。レイが来るのならいくらでも待つ。けれど、こんな気味悪い部屋に来るのか? ドアに手を掛け、引いたり押したりしてみるけれど、ビクともしない。冗談抜きで部屋に閉じ込められたかもしれない。
悩む俺の横でハチミツが「ハチミツめ!」と声を出した。
「な、なんだ、どうした?」
「この部屋に入ると同時にミケさんから何も感じなくなったのです!」
「……え?」
「あれだけミケさんの能力にしてやられていたハチミツめ、ここに入ると途端に何も感じなくなったのです!」
ハチミツの言葉を聞き、俺はどうだったかと振り返ってみる。確かにそう言われてみたらこの部屋に入った途端俺も何も感じなかったかもしれない。
「……ということは?」
それとなくハチミツに質問をしてみると、ハチミツは「この場所は能力が使えなくできる部屋じゃないでしょうか?」と、再度俺に質問をし返した。
能力を使えなくできる部屋!? そんなものが作り出せるのか?
「ハチミツ、試しに今テレポートできるか?」
「は、はい! やってみます!」
ハチミツは足を大きく広げて右手を前に出し、「ふん!」と声を出した。だが、うんともすんとも反応しない。
「……も、も、もうしわけございません! ハチミツめが役立たずなばかりに!」
ハチミツの能力は、ハチミツが言うように作動しなかった。
この部屋は本当に能力を無効化できる部屋らしい。半泣きで俺の腰に泣きつくハチミツ。
「ハチミツが言った通り、ここでは能力は一切使えない……ということか」
ドアも開かない。能力も使えない。逃げることすらできない。どうすることもできない今、ハチミツに「とりあえず座ろう」と声を掛け地べたに腰を下ろす。
ひんやりしていて少し冷たい。
どのくらい経ったかは分からないけれど、お腹が空くくらいにはなっていた。ハチミツと今何を食べたいか、ご飯の話をしながらこの時間を乗り切る。
もしかすると一生開かないかもしれないと思っていたドアがギイッを鈍い音を立てながらゆっくりと開いた。現れたのはミケ、それにここの城の者と思われる人たちが数人。その背後から、白い髪に整った顔立ちをしたレイが静かに最前へと並び、俺の前に姿を見せた。
レイが今目の前に映し出されている。お高そうな赤い柄の貴族の衣装を身にまとっているレイ。王様感が半端ない。
レイが生きて、動いてる。
「……っ」
やばい。鳥肌が止まらない。頬を強くつねってみると痛みはある。今、この光景はちゃんと俺の中で現実になっている。仕草一つ一つさえ見逃したくなくて、目が乾きそうなほど瞬きをしないでいると、レイは俺に向かってニコリと笑みを浮かべた。
俺の胸の鼓動が大きく音を鳴らしているのが分かる。何か言わないと……そう、和解だ。俺はレイと仲良くこの世界で生きていたいんだ。意を決して「レイ」と名前を呼ぶと、レイは俺の前に近づき屈んだ。
「貴様が私の名を呼ぶのは初めてじゃないか。いったい何を企んでいる?」
ゲームでは聞くことができなかった言葉を、変わらない声音で俺に問いかけた。
「何も企んでなんていない。今まで俺の身勝手な行動でレイの命を狙ってばかりだったかもしれないけど、俺は、レイとこれから仲良くしていきたいんだ。今まで本当にごめん、許してほしい」
深く深く頭を下げて謝罪をする。するとレイは俺の髪を優しく撫でた。レイの指がソウルの……いや、俺の頭を撫でている。こんなに嬉しいことはない。頭を撫でられている気持ちよさに意識を全集中させていると、
「貴様、本当に反省しているのか? 『命を狙ってばかりだったかもしれない』とはなんだ? 『かもしれない』ではなく、何度も狙っていただろう? 貴様が我が城に何か仕掛けてくる度に、貴様のせいで命を犠牲にしたものが数えきれないほどいるのだ」
序盤では語られなかった内容に「そうだったのか」と納得しながらも、レイの怒りに満ちた声に耳を澄ます。
「ーー本当に、その時の俺はどうかしていたと思う。謝っても赦されないことは分かっているけど、今の俺には謝ることしかできない、本当に申し訳ない」
どうにか赦してもらえないかとひたすらに謝る。すると、レイはポンポンと撫でていた俺の髪を鷲掴みにし、そのまま髪を引っ張り上げた。髪が千切れてしまうんじゃないかとおもうほどの激痛が頭部に集中する。そして、レイは俺を見下したまま、
「あっ、痛……ッ!?」
俺の股間を足で踏んだ。
「なんだ? この、はち切れんばかりの膨らみは」
まるで汚い物をみるような瞳で俺を凝視する。いつから自分の股間がこんな風に膨らんでいたのかは分からないけれど、多分、レイと目を合わせたときには既に膨れ上がっていただろう。
レイはブーツのような履物を片方脱ぎ、足の指だけでズボン越しの俺の股間を扱い始めた。
「く……ああっ、やめ……」
ハチミツ含めその他大勢の者に見られてしまっているのに、それでもどうしようもなく気持ちよくなっている自分にまた、興奮した。状況はどうあれ、レイに性処理をしてもらっているなんて、妄想することでしか叶わなかったことが夢が目の前で行われている。
城内に仕えている給仕達は俺を見て悲鳴を上げて走っていく。あまり気分がいいものではないけれど、これまでのソウルの悪行を考えると仕方がないとも思う。
ミケの足は止まる気配がなく、ひたすらまっすぐ進む。いったいどこにレイの部屋があるのだろう。
長い長い廊下を抜け、階段を駆け下り薄暗い通路に出た。こんなところに到底レイがいる様子はないが、半信半疑で着いていく。コンクリートで固められたような部屋のドアを開け、
「お入りください」
照明一つのみの部屋に通された。
はっきり言って気味が悪い。こんなところにずっといたら精神的な病気にでもなりそうだと気づいたときには遅かった。その場に呆然と立つことしかできないでいる俺とは違い、ミケは何事もなかったかのようにドアの入り口まで戻っていた。
「レイ様を呼んできますので、ここでお待ちください」
そう一言だけ言い残しミケはそそくさと出て行ってしまった。
俺とハチミツはこの、コンクリートで覆われているような気味悪い部屋に閉じ込められてしまった。レイが来るのならいくらでも待つ。けれど、こんな気味悪い部屋に来るのか? ドアに手を掛け、引いたり押したりしてみるけれど、ビクともしない。冗談抜きで部屋に閉じ込められたかもしれない。
悩む俺の横でハチミツが「ハチミツめ!」と声を出した。
「な、なんだ、どうした?」
「この部屋に入ると同時にミケさんから何も感じなくなったのです!」
「……え?」
「あれだけミケさんの能力にしてやられていたハチミツめ、ここに入ると途端に何も感じなくなったのです!」
ハチミツの言葉を聞き、俺はどうだったかと振り返ってみる。確かにそう言われてみたらこの部屋に入った途端俺も何も感じなかったかもしれない。
「……ということは?」
それとなくハチミツに質問をしてみると、ハチミツは「この場所は能力が使えなくできる部屋じゃないでしょうか?」と、再度俺に質問をし返した。
能力を使えなくできる部屋!? そんなものが作り出せるのか?
「ハチミツ、試しに今テレポートできるか?」
「は、はい! やってみます!」
ハチミツは足を大きく広げて右手を前に出し、「ふん!」と声を出した。だが、うんともすんとも反応しない。
「……も、も、もうしわけございません! ハチミツめが役立たずなばかりに!」
ハチミツの能力は、ハチミツが言うように作動しなかった。
この部屋は本当に能力を無効化できる部屋らしい。半泣きで俺の腰に泣きつくハチミツ。
「ハチミツが言った通り、ここでは能力は一切使えない……ということか」
ドアも開かない。能力も使えない。逃げることすらできない。どうすることもできない今、ハチミツに「とりあえず座ろう」と声を掛け地べたに腰を下ろす。
ひんやりしていて少し冷たい。
どのくらい経ったかは分からないけれど、お腹が空くくらいにはなっていた。ハチミツと今何を食べたいか、ご飯の話をしながらこの時間を乗り切る。
もしかすると一生開かないかもしれないと思っていたドアがギイッを鈍い音を立てながらゆっくりと開いた。現れたのはミケ、それにここの城の者と思われる人たちが数人。その背後から、白い髪に整った顔立ちをしたレイが静かに最前へと並び、俺の前に姿を見せた。
レイが今目の前に映し出されている。お高そうな赤い柄の貴族の衣装を身にまとっているレイ。王様感が半端ない。
レイが生きて、動いてる。
「……っ」
やばい。鳥肌が止まらない。頬を強くつねってみると痛みはある。今、この光景はちゃんと俺の中で現実になっている。仕草一つ一つさえ見逃したくなくて、目が乾きそうなほど瞬きをしないでいると、レイは俺に向かってニコリと笑みを浮かべた。
俺の胸の鼓動が大きく音を鳴らしているのが分かる。何か言わないと……そう、和解だ。俺はレイと仲良くこの世界で生きていたいんだ。意を決して「レイ」と名前を呼ぶと、レイは俺の前に近づき屈んだ。
「貴様が私の名を呼ぶのは初めてじゃないか。いったい何を企んでいる?」
ゲームでは聞くことができなかった言葉を、変わらない声音で俺に問いかけた。
「何も企んでなんていない。今まで俺の身勝手な行動でレイの命を狙ってばかりだったかもしれないけど、俺は、レイとこれから仲良くしていきたいんだ。今まで本当にごめん、許してほしい」
深く深く頭を下げて謝罪をする。するとレイは俺の髪を優しく撫でた。レイの指がソウルの……いや、俺の頭を撫でている。こんなに嬉しいことはない。頭を撫でられている気持ちよさに意識を全集中させていると、
「貴様、本当に反省しているのか? 『命を狙ってばかりだったかもしれない』とはなんだ? 『かもしれない』ではなく、何度も狙っていただろう? 貴様が我が城に何か仕掛けてくる度に、貴様のせいで命を犠牲にしたものが数えきれないほどいるのだ」
序盤では語られなかった内容に「そうだったのか」と納得しながらも、レイの怒りに満ちた声に耳を澄ます。
「ーー本当に、その時の俺はどうかしていたと思う。謝っても赦されないことは分かっているけど、今の俺には謝ることしかできない、本当に申し訳ない」
どうにか赦してもらえないかとひたすらに謝る。すると、レイはポンポンと撫でていた俺の髪を鷲掴みにし、そのまま髪を引っ張り上げた。髪が千切れてしまうんじゃないかとおもうほどの激痛が頭部に集中する。そして、レイは俺を見下したまま、
「あっ、痛……ッ!?」
俺の股間を足で踏んだ。
「なんだ? この、はち切れんばかりの膨らみは」
まるで汚い物をみるような瞳で俺を凝視する。いつから自分の股間がこんな風に膨らんでいたのかは分からないけれど、多分、レイと目を合わせたときには既に膨れ上がっていただろう。
レイはブーツのような履物を片方脱ぎ、足の指だけでズボン越しの俺の股間を扱い始めた。
「く……ああっ、やめ……」
ハチミツ含めその他大勢の者に見られてしまっているのに、それでもどうしようもなく気持ちよくなっている自分にまた、興奮した。状況はどうあれ、レイに性処理をしてもらっているなんて、妄想することでしか叶わなかったことが夢が目の前で行われている。
6
お気に入りに追加
260
あなたにおすすめの小説
見習い薬師は臆病者を抱いて眠る
XCX
BL
見習い薬師であるティオは、同期である兵士のソルダートに叶わぬ恋心を抱いていた。だが、生きて戻れる保証のない、未知未踏の深淵の森への探索隊の一員に選ばれたティオは、玉砕を知りつつも想いを告げる。
傷心のまま探索に出発した彼は、森の中で一人はぐれてしまう。身を守る術を持たないティオは——。
人嫌いな子持ち狐獣人×見習い薬師。
『神託』なんて、お呼びじゃない!
温風
BL
訳ありエリート官僚・ゼノン(α)×やらかしてクビになった元宮廷絵師・パヴェル(Ω)
この国では地母神の神託によって、アルファとオメガはパートナーとなる。
パヴェルの前に現れた男は、堅物で高慢なエリートαだった。
「貧相な男だな。本当にオメガか?」
「んだとぉ〜っ!?」
初対面の印象は互いに最っ悪。
「品性の下劣なオメガとは同じ空気を吸いたくない」
「俺はひとりで生きていく! 神託なんてお呼びじゃねーんだよ!」
堅物な攻め&煽る受け。
それぞれの事情と思惑を抱えた二人が、ぶつかりながら心を通わせてゆくオメガバースです。
【第11回BL小説大賞】にエントリーしました。
もし気が向いたら応援してやってください( ◠‿◠ )
※ただいま後日談執筆中。
以前投稿した『神託にしたがって〜』と同じ時代、同じ世界観です。
表紙イラストは、よきなが様(Twitter @4k7g2)にお願いしました。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
俺は好きな乙女ゲームの世界に転生してしまったらしい
綾里 ハスミ
BL
騎士のジオ = マイズナー(主人公)は、前世の記憶を思い出す。自分は、どうやら大好きな乙女ゲーム『白百合の騎士』の世界に転生してしまったらしい。そして思い出したと同時に、衝動的に最推しのルーク団長に告白してしまい……!?
ルーク団長の事が大好きな主人公と、戦争から帰って来て心に傷を抱えた年上の男の恋愛です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
宰相閣下の絢爛たる日常
猫宮乾
BL
クロックストーン王国の若き宰相フェルは、眉目秀麗で卓越した頭脳を持っている――と評判だったが、それは全て努力の結果だった! 完璧主義である僕は、魔術の腕も超一流。ということでそれなりに平穏だったはずが、王道勇者が召喚されたことで、大変な事態に……というファンタジーで、宰相総受け方向です。
女神の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界でオレは愛を手に入れる。
にのまえ
BL
バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。
オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。
獣人?
ウサギ族?
性別がオメガ?
訳のわからない異世界。
いきなり森に落とされ、さまよった。
はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。
この異世界でオレは。
熊クマ食堂のシンギとマヤ。
調合屋のサロンナばあさん。
公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。
運命の番、フォルテに出会えた。
お読みいただきありがとうございます。
タイトル変更いたしまして。
改稿した物語に変更いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる