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49.夏と言えば

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暑気休暇に入って数日たった。
俺は朝食を食べた後、腹ごなしに庭を歩いていた。

家を囲うように庭になってるから、運動を兼ねてぐるりとと家の回りを歩くのが最近の日課である。使用人に少し変な顔されるから、最近太ってしまい、ダイエットしてる事にした。
実際動かないと太るしな……ランニングでも良いけど、走るには着てるドレスは適さないからな。

一番広い裏手に来ると、人工池の側でお兄様が木剣を振っていた。
俺が毎日歩いてるように、お兄様にとっての日課である。
貴族様なら守ってもらう立場なはずなのに、お兄様は騎士にでもなるつもりなのか?
ふと此方を見たお兄様と目が合う。

「アンジェ!」

嬉しそうに微笑み、鍛練を中断したお兄様は汗が朝日で光輝いていつも以上に眩しかった。
プイッと視線をそらして、花壇に向かう。
そう、まだお兄様と口を聞かないのを継続中なのだ。
視線の端で悲しそうな顔が見えるが、スルーだスルー!

「エリック様、お嬢様、お手紙が届いてます」

リーチェが2通の手紙を携えてやって来た。
誰からだろう?と受けとると王宮からだった。
ジョセフからか!?と慌てて手紙を開く。その様子をお兄様とリーチェが微笑ましそうに見ていることに気づいて、恥ずかしくなった。
部屋で読めば良かったと考えながら目を通すと、なんと王宮主催のお茶会のご招待状だった。
お兄様にも届いてる時点でそうだと気づけよな俺は……と落ち込んでる俺を尻目にお兄様は手紙を見ながら推測を述べた。

「王妃様がジョセフの弟妹殿下達の為に開くのだろう。レオナルド殿下は来年は学院に入るから今から同世代と接しさせておくつもりなのかもしれないね」
「成る程……」
「あと、コーデリア殿下もそろそろ、お茶会に慣れさせたいのもあると思うよ」

たしか、第二王子レオナルド殿下が俺の一つ下で13歳だったか?第一王女コーデリア殿下は今年9歳になったばかりだったはず。
前にリーチェに教えてもらった事を思いだしているとお兄様は招待状を丁寧になおしながらリーチェに声をかけた。

「とりあえず、時間があまりないからな……ベアトリーチェ、直ぐに準備に取りかかってくれ」
「畏まりました」

その言葉に俺は首をかしげた。お茶会は一ヶ月後なのだ。時間は沢山あるはずだ。
そんな俺に気付いたお兄様は説明してくれた。

「仲の良い令嬢同士のお茶会ぐらいなら家にあるドレスでも対応出来るが、お前は正式なお茶会は初めてだろう?それに王家が主催となると新調したドレスを着るのがマナーなのさ」

普通のお茶会でもその度にドレスを新調する人もいるらしく、なんて無駄使いなんだろうと思ってしまったが、見栄を張りたい貴族は多い。それに着飾るのが権力を示す事になるらしい。俺は王太子の婚約者として行くのだから下手な格好は出来ないのだとリーチェに言われた。

この世界のドレスは殆どオーダーメイドだから直ぐにお針子を屋敷に来てもらって作ってもらわないといけないそうだ。

そのあとリーチェは直ぐにコンラード家が王都で贔屓してるお針子をよんで、お昼過ぎにお針子さん達とリーチェ達がデザインで話してるのを、げんなりと見ることになった。
元男の俺には、この女の服に対する熱意は分からなくて、母さんと妹の長い買い物に荷物もちで付き合わされた時ぐらいしんどい!

全て丸投げしたが、リーチェやナタリーはセンス良いし大丈夫だろう……むしろ、この世界の感覚があんまり分からない俺より適したドレスにしてくれる事だろう。

色は定番の水色と黄色で迷っているのを見た時、夏と言えば白いワンピースと白い鍔の長い帽子の美少女が海を歩く浮かんで、暑い季節と言えば白と水色のイメージが強いとポツリと呟くと、あっさりそれに決まった。良いのかそれで!?

お兄様も色だけ指定して後はお任せが多いから、そんなもんだと思われたようだ。
なので王家主催のお茶会は白を基調とした水色の差し色のドレスになりました。


結局終わったのが日が暮れる頃だった。
これから、こんなことがたまに来ると思うと憂鬱で仕方ない。


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