同級生のお兄ちゃん

桜井リョウスケの場合

side:桜井リョウスケ 回想

『柏木マオ』は今年から同じクラスになった女子。

俺と同じ部活の『長谷川ボタン』『吉岡モミジ』と仲が良いようだ。

自分のことはあまり話さないおとなしい感じでずっと本を読んでいる。

友達に話しかけられる時だけ本をしまう子だ。

聞くところによると、昼休みも一人で図書室に行っているらしい。

とにかく本が好きなんだと思う。


俺との接点は……特にない。

図書室に行く時たまに見かける程度で、あまり話したことはない。

長谷川さんや吉岡さんが俺に話しかけてくるタイミングで一緒にいることが多いので

声を聞いたりする程度。直接的な会話はほぼない。

というか、俺も人を選んで話しているのでクラスメイトからはかなり無口だと思われている。

彼女もそう思っている中のひとりにすぎない。

それなのに彼女は、俺のことをお兄ちゃん、と呼びたいと言ってきた。

まったくの謎だ。

きっかけがあるとすれば、映画撮影のため校内の下見をしたときのはずだ。

下見は先週の金曜日の放課後で、音楽室、図書室、美術室、俺たちの教室などを見てまわり、

どこで撮影するかをみんなで決めた。

そういえば、彼女は何もないところでたびたび転けそうになっていたので声をかけた気がする。

あとは、うっちゃんと『水無月ヨウイチ』と3人で撮影の仕方について話していた。

ダメだ………まったくわからない。

思い当たるとしたら、声をかけたことくらいだが大したことは言ってないので

違うことがきっかけのはず。

そんなことを考えていると授業は終わっていた。