上 下
17 / 20
2日目

第16話 クリームパン

しおりを挟む
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

Side:ミュウ&ティナ

 「ティナだけだなんて、ありえない」

 ティナのいるキッチンから少し離れた場所。逃げたとは言ってもほんの僅かなもの。更にはミュウの方が身長も低いので追いかけられたら一溜まりも無い。

 しかし、目的である自分の涎を入れる事を達成してしまえば良いだけの事で、それさえしたらティナに返すだけだった。

 一応、背中を丸めて縮こまったミュウは何か気になったのか、切れ込みの中にぷっくりと丸みを帯びた鼻を近付け匂いを嗅ぐ仕草をする。

「クリームの甘い匂いの中に、ティナの唾液の臭いが……する。ふむぅ……」

 顰めっ面をして、すぐに使命を帯びた表情を見せるとティナなものが既に入っている事など意に介さず口内に溜めた自分のものを吐き出す。小さな口から泡を伴いながらパンの中へと糸を引いて垂れた。

 白いクリームの上には透明でまだ気泡が残る液が満ち満ちて重力に従いながらねっとりと動く。ミュウの唾液が足されてティナのものと混ざり合いその量は増した。

「ティナは一回だけだった……でも」

 再びミュウは唾液を自分の奥から搾り取るように溜めて、廊下の照明に照らされて光る液体をパンの中へと流し込んでいく。

「ミュウ、あまりし過ぎたらバレてしまいますよ」

 パンに唾液を入れる事に無我夢中になってしまっていたミュウはそう呆れるように話しかけるティナに気づいていなかった。その声で初めて近くにいた事を認識すると、すくっと立ち上がって手に持っていたパンを手渡す。

「はやく、颯太に、これ食べさせたい」

 颯太に食べさせる予定だというクリームパンはティナが1回だけ入れた時と比べて見た目に変化は無かったものの切れ込みの部分を僅かに開くと粘性のある液が染み出した。

 それから漂う匂いはパンの香ばしいものとクリームの甘い匂いであったはずなのに二人の出した唾液の臭いも多分に含まれるものになっていた。

 「一応持っていきますが、さすがに颯太さんにもバレてしまいそうですね。どれくらい入れたのですか」
「あまり考えてなかった……しらない」

 ティナは「さすがにこれで気付かないなんてことあるのでしょうか……」と考えながら切れ込みが見えないように親指と人差し指で摘んで閉じた。

 キッチンに戻りお盆にクリームパンというよりは、ふんだんにミュウとティナの唾液を入れた唾液パンになってしまった物を置き直す。

「今度こそ、完成ですね。ミュウも行きますか?」
「うん、あたりまえ……」

 二人は意気揚々に廊下へと飛び出して、颯太のいる部屋へと足早に駆け出した。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

Side:河井颯太

 洋館の一室の中で縛られながら死んだように眠っている男性がいる。

 先程食べたクリームパンはただただ美味しいと感じて真面に食べさせてもらえたと思っているが、勿論ここに住む幼女達がそんな事をする筈もなく唾液がたっぷり入ったものを饗されていた。

 世の中には知らない方が幸せな事もあるとは正にこれだろう。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

Side:???

 さらさらとした黒髪、ブラウンの透き通った瞳の幼女が廊下を彷徨っていた。

 この洋館も、この世界も変。1日が……ろ…時間もある。四季はあるみたいだけど、1年が……ヶ月しかない。

 それにここに居たら私、おかしくなってしまいそう。身体も何故かとても幼い少女のものになってしまったし、不思議と男性が欲しいと考えてしまう。

 絶望的なことにこの世界からどうすれば脱出できるのかは分からない。そういえば、ティナという少女が「男を見つけたので捕まえました!」とよく分からない自慢をしてきた。

 男は一体どこから来たのだろう。私自身は元々何者だったのかの記憶が無く、一部知識があるだけで此処に来た方法を覚えていない。

 もしかしたら、そのティナが見つけたという男性と会話すれば何か分かるかもしれない。

 私の自我は、徐々に削られているような感じがする。今もそこに男性がいるという事を思い始めた途端に下半身が疼き出してしまいそうな衝動に襲われた。

 きっと私に残された時間もそう長くはないのだろう。そう考えると次第に焦りを感じ始めた。

 ──早く会いに行かなきゃ……!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

男女比:1:450のおかしな世界で陽キャになることを夢見る

卯ノ花
恋愛
妙なことから男女比がおかしな世界に転生した主人公が、元いた世界でやりたかったことをやるお話。 〔お知らせ〕 ※この作品は、毎日更新です。 ※1 〜 3話まで初回投稿。次回から7時10分から更新 ※お気に入り登録してくれたら励みになりますのでよろしくお願いします。 ただいま作成中

【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話

もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。 詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。 え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか? え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか? え? 私、アースさん専用の聖女なんですか? 魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。 ※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。 ※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。 ※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。 R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。

今日も殿下に貞操を狙われている【R18】

毛蟹葵葉
恋愛
私は『ぬるぬるイヤンえっちち学園』の世界に転生している事に気が付いた。 タイトルの通り18禁ゲームの世界だ。 私の役回りは悪役令嬢。 しかも、時々ハードプレイまでしちゃう令嬢なの! 絶対にそんな事嫌だ!真っ先にしようと思ったのはナルシストの殿下との婚約破棄。 だけど、あれ? なんでお前ナルシストとドMまで併発してるんだよ!

処理中です...