7 / 7
三つ子のお話
良いんじゃないかな
しおりを挟む
「今日はこれ!」
勢い良く開かれる居間のドア。
ソファに並んで座っていた、同じ顔が注目します。
「どう? このコーデで」
バタバタと部屋に入って来た佐美さんは、三つ子なので自分と瓜二つの 姉2人の前で立ち止まりました。
両手を腰に当てた姿勢で、ソファに座る次女の多美さんに 軽く顎を突き出します。
「どう? たぁー」
「よ、良いんじゃないかな」
佐美さんは満足気に頷きながら、長女の奈美さんの顔を見ます。
「なぁーは?」
「可愛いですね♡」
胸を反らした佐美さんは、会心の笑みを浮かべました。
「アイテムのリストは、もう2人のスマホにメールで送ったから!」
「早速、私も着ないとですね」
いそいそと、ソファから腰を上げる奈美さん。
出口に向かって歩き出そうとした瞬間、その足が止まります。
「─ 多美さん」
「何?」
「お出掛けするんですから、早く着替えて下さい。」
多美さんは、ノロノロと立ち上がりました。
「そ、そうだね。。。」
----------
「どうですか?」
静かに開かれた居間のドア
部屋に入って来た奈美さんのコーディネートは、頭の先から爪先まで、佐美さんと同じでした。
「なぁー、可愛い!」
鏡像の自分の様な姿を、佐美さんが褒めちぎります。
「たぁーが揃えば、三つ子コーデの完成だね♡」
----------
「…何で着替えてないの!?」
恐る恐る居間のドアを開けた多美さんに、佐美さんは駆け寄りました。
「たぁー?」
「えーっとぉ」
「コーデに不満があるの?」
「そ、そんな事は…」
多美さんが部屋に入って来ようとしないので、佐美さんが腕を掴んで、引っ張り込みます。
「じゃ、何?」
「わ、私には、合わないかなって。。。」
「─ 同じ容姿の私には、似合うって言ったよね?」
「…」
何も言えないでいる多美さんの背中を、奈美さんが指で突きます。
「お部屋、見て来ました」
「え?」
「必要なアイテムが、探せなかったんですよね?」
「そ、そんな事は…」
奈美さんは、硬直している多美さんの顔を覗き込みました。
「部屋は、片付けた方が良いですよって…私、言いませんでしたか?」
「お、仰いました…」
「服も満足に探せない程、散らかすなんて。。。」
----------
「たぁー ってさぁ…」
佐美さんが、多美さんの鼻の頭を 右手の人差し指で強めに押します。
「─ 三つ子たるもの出掛ける時には、お揃いの服を着るべきだって、いつも力説してなかったっけ?」
「そ、そうだったかな…」
「お揃いコーデが出来ないって事は…三つ子失格って事で、良いよね」
「…え?」
奈美さんの左腕に、佐美さんは右腕を絡めました。
「なぁー」
「何ですか? 佐美さん」
「残念ながら私達、双子になっちゃったみたい」
「そうみたいですね」
口をパクパクする多美さん。
目で申し合わせた奈美さんと佐美さんは、部屋の出口に向かって歩き始めました。
「お出掛けは、2人でしましょうね。佐美さん」
「そうだね。」
「ちゃんと、ファッションもお揃いですし」
「双子コーデ、だもんねー♡」
ドアを閉める寸前に振り返った奈美さんが、笑わない目で多美さんに微笑みます。
「三つ子失格の多美さんは…お留守番して、お部屋を片付けて下さい。」
「そ、そんなぁ。。。」
勢い良く開かれる居間のドア。
ソファに並んで座っていた、同じ顔が注目します。
「どう? このコーデで」
バタバタと部屋に入って来た佐美さんは、三つ子なので自分と瓜二つの 姉2人の前で立ち止まりました。
両手を腰に当てた姿勢で、ソファに座る次女の多美さんに 軽く顎を突き出します。
「どう? たぁー」
「よ、良いんじゃないかな」
佐美さんは満足気に頷きながら、長女の奈美さんの顔を見ます。
「なぁーは?」
「可愛いですね♡」
胸を反らした佐美さんは、会心の笑みを浮かべました。
「アイテムのリストは、もう2人のスマホにメールで送ったから!」
「早速、私も着ないとですね」
いそいそと、ソファから腰を上げる奈美さん。
出口に向かって歩き出そうとした瞬間、その足が止まります。
「─ 多美さん」
「何?」
「お出掛けするんですから、早く着替えて下さい。」
多美さんは、ノロノロと立ち上がりました。
「そ、そうだね。。。」
----------
「どうですか?」
静かに開かれた居間のドア
部屋に入って来た奈美さんのコーディネートは、頭の先から爪先まで、佐美さんと同じでした。
「なぁー、可愛い!」
鏡像の自分の様な姿を、佐美さんが褒めちぎります。
「たぁーが揃えば、三つ子コーデの完成だね♡」
----------
「…何で着替えてないの!?」
恐る恐る居間のドアを開けた多美さんに、佐美さんは駆け寄りました。
「たぁー?」
「えーっとぉ」
「コーデに不満があるの?」
「そ、そんな事は…」
多美さんが部屋に入って来ようとしないので、佐美さんが腕を掴んで、引っ張り込みます。
「じゃ、何?」
「わ、私には、合わないかなって。。。」
「─ 同じ容姿の私には、似合うって言ったよね?」
「…」
何も言えないでいる多美さんの背中を、奈美さんが指で突きます。
「お部屋、見て来ました」
「え?」
「必要なアイテムが、探せなかったんですよね?」
「そ、そんな事は…」
奈美さんは、硬直している多美さんの顔を覗き込みました。
「部屋は、片付けた方が良いですよって…私、言いませんでしたか?」
「お、仰いました…」
「服も満足に探せない程、散らかすなんて。。。」
----------
「たぁー ってさぁ…」
佐美さんが、多美さんの鼻の頭を 右手の人差し指で強めに押します。
「─ 三つ子たるもの出掛ける時には、お揃いの服を着るべきだって、いつも力説してなかったっけ?」
「そ、そうだったかな…」
「お揃いコーデが出来ないって事は…三つ子失格って事で、良いよね」
「…え?」
奈美さんの左腕に、佐美さんは右腕を絡めました。
「なぁー」
「何ですか? 佐美さん」
「残念ながら私達、双子になっちゃったみたい」
「そうみたいですね」
口をパクパクする多美さん。
目で申し合わせた奈美さんと佐美さんは、部屋の出口に向かって歩き始めました。
「お出掛けは、2人でしましょうね。佐美さん」
「そうだね。」
「ちゃんと、ファッションもお揃いですし」
「双子コーデ、だもんねー♡」
ドアを閉める寸前に振り返った奈美さんが、笑わない目で多美さんに微笑みます。
「三つ子失格の多美さんは…お留守番して、お部屋を片付けて下さい。」
「そ、そんなぁ。。。」
0
お気に入りに追加
5
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
めもあやに
紀之介
キャラ文芸
綾さんのお話
1.お腹が空いた!
- 勝手に人の鞄を漁ったら駄目よ? -
(綾さんと一子さんと佳奈さんのお話)
2.どぉしてぇ?
- 秋にはサッカーがしたくなるじゃない? -
(綾さんと翔くんのお話)
3.おはよぉ…
私だけ除け者?
(綾さんと一子さんと佳奈さんのお話)
月見月は紅染月
紀之介
キャラ文芸
葉月さんのお話
1.物好き…
- 幽霊が出る場所、教えてあげる! -
(葉月さんと謎の女性のお話)
2.日付が変わった瞬間に
- とにかく、初詣に行こうか -
(葉月さんと如月さんと霜月さんのお話)
3.私だけ。
- 2人で撮った写真なのに、私だけしか写ってません -
(葉月さんと都さんのお話)
4.お願いした?
神頼みの作法?
(葉月さんと栞さんのお話)
*クッキー断ちのお話
5.気配。
画期的な願掛け?
(葉月さんと芽生子さんのお話)
6.クッキー断ち。。。
願掛けが叶う理由?
(葉月さんと如月さんのお話)
真銀さんとラブレター
紀之介
ライト文芸
ラブレターを出したら…
(真銀さんと野上君のお話)
*始まりのお話
秘密の。。。
放課後に野上君が、下駄箱付近をウロウロしていた訳
*パラレルな後日談
その1:大きな花丸
- 行くの?行かないの? -
その2 :赤いスタンプ
- 一緒に、何処に行く? -
その3:どうかした?
- 人生初ラブレターだから、大事に仕舞っておく♡ -
琴音さんと宏和君のお話
紀之介
キャラ文芸
─ 琴ちゃん それは反則だから
1.頑張ったんだよ!?
琴音さんがデートに遅刻した理由
2.希望かな。
バレンタインには手作りチョコ?
3.駄目でしょ!
ありえないんだからね!!
手帳!
紀之介
ライト文芸
手帳の予定に関するお話
1.週末空いてる?
スケジュール管理は手帳で?
(二葉さんと美卯さんのお話)
2.何かあるの?
植木市に行く理由
(文月さんと睦月さんのお話)
3.スケジュール。
予定されてない行動は一切取らない
曜子さんと俺くんのお話
紀之介
キャラ文芸
見初められたのが運の尽き
1.問答無用で。
ガキみたいなイタズラ、止めてくれるかな
2.退屈なのかな?
デート中の連発はご法度
3.された記憶がない
この状況では、何を言っても俺の負けだ。
でーと。
紀之介
ライト文芸
デート中のお話
1.こんな所に。。。
デートより読書!
(和香さんと正也君のお話)
2.災難だと思って。。。
眼鏡屋デート?
(茜さんと雅紀君のお話)
3.大丈夫だよねぇ
冬になる前に!
(麗子さんと直衛くんのお話)
4.了解。。。
─ そこまで あからさまだと、いっそ清々しいな
(竹中さんと僕のお話)
5.最悪。。。
─ ううう
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる