葉月さんと真一君のお話

紀之介

文字の大きさ
上 下
4 / 5
お弁当のお話

手作りの。。。

しおりを挟む
「そう言えば──」

 いつものデートコースの公園。

 ふたりの最近のお気に入り、藤蔓の木陰の木のベンチに 先に真一君が腰を下ろします。

「食べさせてもらってないよね」

 隣に座った葉月さんは、真一君の顔を見ました。

「─ 何をですか?」

「葉月ねーちゃんの手作りの弁当」

「…」

「今度、作ってきてよ」

「え!? お弁当を、ですか??」

「うん。」

 視線をそらす、葉月さん。

「お弁当は…作るのが大変なんです」

「ねーちゃん。料理 出来る人じゃん」

「バランスとか考えて、細かいおかずを幾つも作ったりするのは、料理とは別なスキルですから」

 暫くの沈黙の後、葉月さんが呟きます。

「じゃあ先に、シンちゃんが作ってください♫」

「は?!」

「シンちゃんがお弁当を作ってくれたら、お返しに私が作ってあげます♪」

「・・・」

「どうします?」

「判った。次のデートの時に、作ってくる」

「─ え?!」

----------

「本当に…作ってきてくれたんですねぇ」

 いつもの公園の、藤蔓の木陰の木のベンチ。

 葉月さんは、隣りに座った真一君が 手提げ袋から出した弁当を受けります。

「まあ、容器がタッパと言うのが あれですが」

「探したけど、弁当箱なんて洒落たものは見つからなかったし」

「では、頂きますね♫」

 いそいそと おかずの容器の蓋を開く葉月さん。

「これって、もしかして──」

「マルシンのハンバーグ」

「その横の黄色い塊は 玉子焼き…で、その隣は……」

「イシイのミートボール」

「─ あとは、切込みを入れて焼いただけのウインナーですかぁ」

 顔を上げた葉月さんと、真一君の視線が合います。

「何か言いたそうだね」

「別に、如何にも小学男子が喜びそうな、遠足のお弁当みたいだなんて 思ってないですよ?」

「うん。口にしてるから」

 ニヤニヤ顔の葉月さんから、目をそらす真一君。

「僕のお弁当のイメージはこうなんだから、仕方ないだろ」

「─ では、いただきますね♡」

----------

「ごちそうさまでした♫」

 食べ終わったお弁当のタッパの蓋を締める葉月さん。

「シンちゃん弁当、それなりに 美味しかったですよ?」

「─ それは、お粗末様」 

「次は、負けられないですねぇ」

 葉月さんは、ふたり分の容器を 手提げ袋に仕舞いました。

「次のデートには、私の本気のお弁当を、シンちゃんにお見舞いしてあげます♪」

「期待してる。」

「任せて下さい♡」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

めもあやに

紀之介
キャラ文芸
綾さんのお話   1.お腹が空いた!    - 勝手に人の鞄を漁ったら駄目よ? -     (綾さんと一子さんと佳奈さんのお話)   2.どぉしてぇ?    - 秋にはサッカーがしたくなるじゃない? -    (綾さんと翔くんのお話)   3.おはよぉ…    私だけ除け者?    (綾さんと一子さんと佳奈さんのお話)

明夏さんと景冬君のお話

紀之介
キャラ文芸
無茶を言っても甘えたい♪ 1.覚えがあるなら  無茶を言ってるって、判ってるよな!? 2.お合いこよ!  ─ 意味が解んないぞ

月見月は紅染月

紀之介
キャラ文芸
葉月さんのお話 1.物好き…  - 幽霊が出る場所、教えてあげる! -   (葉月さんと謎の女性のお話) 2.日付が変わった瞬間に  - とにかく、初詣に行こうか - (葉月さんと如月さんと霜月さんのお話) 3.私だけ。  - 2人で撮った写真なのに、私だけしか写ってません -  (葉月さんと都さんのお話) 4.お願いした?  神頼みの作法?  (葉月さんと栞さんのお話) *クッキー断ちのお話  5.気配。   画期的な願掛け?    (葉月さんと芽生子さんのお話)  6.クッキー断ち。。。    願掛けが叶う理由?   (葉月さんと如月さんのお話)

手帳!

紀之介
ライト文芸
手帳の予定に関するお話 1.週末空いてる?  スケジュール管理は手帳で?  (二葉さんと美卯さんのお話) 2.何かあるの?  植木市に行く理由  (文月さんと睦月さんのお話) 3.スケジュール。  予定されてない行動は一切取らない

曜子さんと俺くんのお話

紀之介
キャラ文芸
見初められたのが運の尽き 1.問答無用で。  ガキみたいなイタズラ、止めてくれるかな 2.退屈なのかな?  デート中の連発はご法度 3.された記憶がない  この状況では、何を言っても俺の負けだ。

琴音さんと宏和君のお話

紀之介
キャラ文芸
─ 琴ちゃん それは反則だから 1.頑張ったんだよ!?  琴音さんがデートに遅刻した理由 2.希望かな。  バレンタインには手作りチョコ? 3.駄目でしょ!  ありえないんだからね!!

喫茶店奇話

紀之介
ライト文芸
喫茶店での出来事 1.2人連れの客…   2人連れの客に店主は? 2.裏通りの喫茶店。   1人で入った店で… 3.行きつけの喫茶店…   1人のテーブルに置かれた、2人分の水とおしぼり 4.カップ半分だけ…   初見の客が注文したのは、カップ半分のコーヒー

でーと。

紀之介
ライト文芸
デート中のお話 1.こんな所に。。。  デートより読書!  (和香さんと正也君のお話) 2.災難だと思って。。。  眼鏡屋デート?  (茜さんと雅紀君のお話) 3.大丈夫だよねぇ  冬になる前に!  (麗子さんと直衛くんのお話) 4.了解。。。  ─ そこまで あからさまだと、いっそ清々しいな  (竹中さんと僕のお話) 5.最悪。。。  ─ ううう

処理中です...