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第19章 がんばれ! 新人くん!
08 衝動性の高い男
しおりを挟む田口はもともとはそういう趣味があるわけではないが、保住を好きになってしまってから、そういう気持ちがよくわかってしまうのが怖い——。
「夜、拓から電話ありました。田口さんが促してくれたから、連絡先も交換できて感謝しています」
「おれが言わなくても交換していただろう」
「そんなことありません。また嫌な部分が出てきて。逃げてばっかり。こんなこと言ったら、嫌がられるんじゃないかとか思ってしまうんですよね」
結局。十文字は、いつも始まれていないのだ。自分の中で完結して終わっていることが多いし。田口の目から見るとそう思うが、彼も気が付いていることなのではないだろうか。
「嫌になります。昨日は結構、頑張ったつもりですけど。結局——高校の時に拓が好きだった奴が同じ職場にいるみたいで。はは笑っちゃいますよね。おれなんか頑張っても、きっと二人の間には入れないし。久しぶりに出会って感じた思いを、彼に伝えることなんか難しいです」
「十文字」
「情けないです」
——がっかり。
そんな顔だ。田口にもわかった。
もどかしくて——保住が澤井と一緒にいる時、自分の気持ちをなかなかうまく言えなかった。しかし田口の場合は我慢できなくなって伝えてしまったが。比較的、十文字寄りのタイプであることは自覚している。だからこそ切ない彼の気持ちは、重々わかるのだ。
「伝えてみたら」
「出来ません」
「十文字。前に進まないと」
「わかっているんですけど」
「怖い気持ちわかる。おれも同じだ」
田口はまっすぐに十文字を見た。
「おれも好きな人はいる。その人が別の人間と一緒にいると考えただけで、心が揺らいで気が気ではない。だけどおれがその気持ちを伝えたら、その人は困るだろうって。嫌がるだろうって思って、なかなか言えなかった」
「言えたんですか」
「言った。おれはお前ほど辛抱がない。我慢できなくなって。なりふり構わずに言ってしまった!」
十文字は笑う。
「田口さんって我慢強そうなのに」
「衝動性が高いのが、おれの性格だ」
「そうは見えませんけど」
「ある程度までは我慢するが、閾値に達すると、否応なしに爆発する。だから相手を傷つけることもあるのではないかと心配している」
「そうですか? そうは見えないけどな」
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