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第2章 仕事の仕方
19 初戦なのにボス選
しおりを挟む「茶番は終わりか。さっさと企画書の概要を説明しろ」
二人がやってきた意図を汲み取ったらしい。澤井という男は、性格はいけ好かないが、能力は高いようだ。すぐに察しが付くから話が早い。面倒ではないからいいのかもしれないと、ふと思った。
犬猿の仲のような雰囲気の二人だが、基本的には保住の仕事のスタイルは彼に近い。
入庁して最初に指導を受けたのが澤井だと聞いている。だとしたら、澤井のやり方が保住の基本になっているのは間違いない。だからこそ、澤井も彼を扱いやすいのかもしれないと思った。
「あの」
——自分が説明? そうだった。
狭いながらも一人で部屋を持って仕事をしている澤井は、役所の中ではかなりの実力者。
じろりとその眼光に射すくめられると、肝が冷える思いだ。谷口が「目を見るな」と言っていたのは、こういうことか。
保住はついてきてくれてはいるものの、まったく手を出す気がないらしい。そばの壁に身体を預けると、腕組をした。完全に澤井とは対峙する気がないという意思表示。腹を括るしかなかった。
仕方なく持ってきた企画書を澤井に手渡すが、彼もまた企画書など目を通すつもりはないようだ。受け取った書類を机に投げると、田口を凝視するばかりだ。
こんな威圧的な人間にプレゼンをするのは久しぶりだ。前職の係長もひどかったが、あれは小物だ。澤井は別格。どっしりと構えられると、言葉も出てこなくなりそうだった。
だけど。ふと保住に触れられた肩が温かい。
——大丈夫。彼もいる。やれる。
田口はそう確信した。
「今回のコンセプトは時代です。星野一郎の演奏会では、固有のテーマで曲が組まれてきました。例えば、スポーツ行進曲、雨シリーズなどがその代表です。そこで、今回は新しい切り口として時代をテーマにしてみました」
「時代?」
「そうです。星野一郎の一生をライフステージごとに分けてみるのです」
「……」
返答がなくても、気を取り直して続ける。
星野一郎は創作意欲の高い男だ。幼少時代より頭角を現し、たくさんの名曲を生み出している。
田口のコンセプトはこうだ。梅沢で育った幼少期を第一回。音楽学校で作曲を学んだ青春時代を第二回。そして、上京して苦労をした時代を第三回とする構想だ。作曲家として売れてきた時代の曲を取り扱うことは多々ある。だからこそ梅沢時代に焦点を当てたい。
出演者たちも、セミプロとかではなく、思い切って小学校のコーラス部に依頼するなど、今までにない発想が多い。
三分程度のプレゼンだったが、自分のイメージは伝えられたと思う。
「以上です」
やり切った。
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