19 / 231
第2章 仕事の仕方
09 野良は野良が好き
しおりを挟む「すみません。局長。……で、なんです?」
「なんです? じゃない」
澤井は煙たそうに言う。
「後期の演奏会企画を新人にやらせているそうだな」
「試行錯誤中ですよ」
「締め切りギリギリだ。お遊びみたいなことやっているな。お前がやれ」
「遊びかどうかは、締め切りに決めてくださいよ」
「大きな口を叩くものだ。この様で」
「こんなことは日常茶飯事じゃありませんか」
保住は肩を竦めて立ち上がる。休む暇も与えてもらえないらしい。立ち上がってパイプ椅子を戻した。
「しばしお前には、きっちりとした教育をしていなかったな」
「勘弁してくださいよ。十分ご指導いただいています」
「六時に東口だ」
「仕事が——それこそ、後期の企画書が夕方に出来上がるんですが」
「明日でいい」
「話が矛盾していますけど……」
澤井に一瞥をくれられると、さすがの保住でも減らず口は叩けないようだ。言葉を切ってから、「承知しました」と答える。
「よろしい」
澤井が出て行くのを見送って、ますます大きくため息だ。
「サラリーマンなんて、辞めてやろうか……」
澤井との付き合いは入庁してからずっとだ。
最初の部署で、彼は課長の椅子に座っていた。入庁時から保住はこんな調子。自分の能力が高いだけに、好き勝手なことを言い放ち、上司の言うことはあまり聞かないという始末。仕舞には、係長に食って掛かって連日の大ゲンカだった。課長である澤井の目に留まらないはずがなかった。
事あるごとに呼び出されては、説教を食らう毎日だったのだ。澤井が先に異動となったが、その時に呼び出されて釘を刺されたことも覚えている。
『貴様は市役所にとったら爆弾だ。好き勝手なことをして組織を脅かす存在になりえる。おれが在任中は、お前のことはよく見させてもらう。それがおれの責任だ』
彼はそう言った。面倒で深くは追及しなかったけれど、なぜ澤井がそこまで自分の行動に責任をもたなくてはいけないのだろうかと疑問だ——。
そう思っていた時に、こうして再び彼の元に配属させられた。これは、人事に澤井が手を回したのではないかと思わずにはいられない。二千人以上いる職員同士で、上司と部下になるのは、そう何度もあることではない。
確かに、片方が偉くなればなるほど、部署は集約されてくるので、またこの人の部下になった、なんてことはあるのかもしれないが。入庁して八年で二度もということは珍しいことでもある。
「気が進まないが」
あの時の意味深な言葉の真意も知りたい。
「今日こそは吐かせてみせるぞ」
今晩の澤井との晩餐を好機と捉えることで、気持ちを上げようと努力した。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
ある日、人気俳優の弟になりました。
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる