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中津軽虎松編

中津軽虎松編1話 2024年11月27日 エターナルファンタジーオンラインサービス開始前

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 「水守卿が上林月恵を殺したわよ」
 
 え。
 私がこれから、戦う事になっていた、悪も悪たる悪の総統上林月恵は、水守卿が殺してくれたようだ。
 戦う事になっているとはいえ、私程度の少年聖騎士が、単騎で勝てるわけがない。
 私は、つがるりんご聖騎士団のただの1人の少年聖騎士でしかない。
 他にも、日本中の戦力が、合同で上林月恵と戦っている最中だったんだ。
 
 「何よ、喜びなさいよ」
 「それとも、貴方の手で殺したかったのかしら」

 「いや、喜ぶよりもさ」
 「終わったんだなって」
 「私は、死ななくてよくなったんだなと」

 まだ、感情の変化のつけ方が終わっていない。
 
 さっきまで、討ち死にを受け入れるしかなかったんだ。

 それが、終わったんだ。
 もう、死ななくても、戦わなくてもいいんだ。

 「何よ虎松」
 「貴方って本当に臆病なのね」
 「貴方、それでもつがるりんご聖騎士団少年聖騎士なのかしら」

 臆病と言われても、本当に聖騎士なのかと言われても、怒る気にもならない。
 だって、私は臆病だし、聖騎士だって向いているとも思えない。
 けれど、なんでか私は聖騎士なんだ。

 「本当に、俺つがるりんご聖騎士団の聖騎士なのかな」

 紬の言葉に、怒るどころか、賛同さえしてしまう。

 「そうよ」
 「そうじゃなければなんだっていうのよ」

 「嫌という程分からされたよ」
 「私は、死にたくない」
 「英雄になんてなりたくない」
 「臆病と罵られようと」
 「名誉よりも、生きていたいんだと」

 「貴方が死にたくない死にたくないと怯えてるなんて」
 「10年以上前から知ってるわよ」
 「嫌と言うほどね」

 同僚達の歓声が聴こえてくる。
 皆、水守卿が上林月恵を殺してくれた情報を聞いているらしい。

 「さぁ、パーティーよ」
 「儀礼服に着替えなさい」

 「虎松、貴方ダンスは上手いんだから」
 「約束通りダンスパートナーは私を選んでもらうわよ」
 「まったく、臆病だし強くもないし人気もないのに」
 「ダンスパーティーの時だけは人気者なんだから」

 「ああ、約束してたな」
 「そんな約束が果たされる時が来るとは思ってなかった」

 上林月恵が死んだら、紬をダンスパートナーにするとか、そんな約束をしていた。
 果たされる事のない約束だと思っていた。

 「着替えてくるよ」
 「私も、少女聖騎士の儀礼服は好きだ」

 つがるりんご聖騎士団の少女聖騎士の儀礼服は本当に、私は好きだ。
 儀礼服といっても、フォーマルな場でもカジュアルな場でも着用する機会は少ない。
 よほど、大きな戦勝があった時のパーティ衣装だ。
 かなり、大胆に露出も多く、ボディラインも出るドレスになっている。

 「臆病なくせに」
 「そんな所はちゃっかりしてるのね」

 「臆病でも少年は少年さ」

 「さ、早く紬も着替えてきてくれ」
 「儀礼服以外の君とはダンスしないぞ」

 「ほんと、ちゃっかりしてるわね」
 「パーティは19時からよ」

 ん?19時?
 ちなみに、今日は2024年11月27日だ。
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