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紛失の日記

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綾香は坂本と大地に純真が使っていた書斎に案内した。
六畳の和室で日記を書いたり読書をする机と本棚に所狭しと本が並んであった。
「ここからここまでが、父の日記です」
いくつかの本棚が並んでいた。
日記帳は一つの本棚は一杯に、隣のもう一つの本棚の半分以上は占める割合で二百冊以上はあった。
「お父さんは本当に長い間日記を書かれていたのですね…」
大地は一番古いであろう日記を手に取りページをめくった。
平成元年からの記録であった。
「これを見ると中学校時代からずっと日記をつけ続けられてますね」
父がつけ始めた日記の事を木村が話すと「中学生になったくらいから書き始めたと話していました。
かれこれ三十年以上書き続けていたのに急に止めるなんて考えられないんです。
現実に妹も父が殺される数日前にも日記帳を前にした父を書斎で見ているんですよ…」
綾香は少し捲し立てるような口調で言った。
「これだけ毎日書かれていたのですから途中でやめるとは考えづらい事は事実ですよね!」
大地も相槌を打ちながら綾香の考えに共感したのだ。
坂本もその事が不自然であると感じた。
そして残された日記の中になんらかのヒントがあるかも知れないと木村と調べる事にした。
殺される半年前の日記が一番新しいものであった。
だがその日記の中には日記をつけるのを止めると匂わす文章は何処にも見当たらなかった。
ただ、警察内部の不審な人物が存在する事は書かれていた。
おそらく次の日の日記には書くつもりでいたのかも知れなかった。
「純真さんは内部の不審な人物が誰であるかは見当がついていたのかも知れませんね…」
坂本は日記を読みながらそれからの日記の内容を予想した。
「そう考えると、犯人は内部の人物が関係してるって事じゃないですか…!」
大地は大胆で且つ警察内ではあってはならない予測を言い放った。
「いや、まだあくまでもその可能性があるって事を言っているだけだ。
なんの証拠もないのに上にその話はまだできないし、してはいけないのは君もよくわかっている筈じゃないか…!」
坂本はオフサイド気味に暴走しそうな大地に向かって一言釘を刺した。
「一つでも確たる証拠を掴んでからではないと警視総監には連絡はできないぞ」
その言葉は木村にとって苦い言葉に聞こえた。
何故なら昨夜父親、つまり警視総監から「頑張ってやるのはいいが、今回の件は警察の威信と信用がかかっている。
絶対に裏なしで動くことだけはしてはいかんぞ!」
と、口が酸っぱくなるほど言われていたのだ。
父が警視総監ゆえ、確実にエリート中のエリートだが偉ぶったところがまるでないのと容姿端麗な為、女性陣からの支持も高い。
ただ彼女らしい女性はいなく、二十四になってもまだ結婚する気もないらしい。
綾香を人目見た瞬間に「この人を守ってあげたい」という気になったのは、綾香が可愛らしかっただけではなかった。
現職のバリバリの警官の父親を殺されただけではなく、見えない敵に立ち向かわなくてはならないか弱い女性の力になりたいと思うのは当然と言えば当然のことなのかも知れなかった。
それに合わせて綾香の醸し出す色気というか母譲りの美貌だった。
背は百六十七センチで体重は五十二キロだが出るところは出ていてスタイルも抜群だった。
一目見て大地がやる気が倍増したのはいうまでもない事だった。
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