罪人(つみびと)

黒崎伸一郎

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長女誕生

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お好み焼き屋などやった事もない私がどの様にして店をする事ができたのかと言えば、自分のお金ではなく親に出してもらった資金であった。
どこかで修行したわけでもなく、自分で努力したものは皆無だった。
普通に考えると成功する可能性はゼロに近い。
文には言ってなかったが、私は以前喫茶店をやって失敗していた。
もちろん前回も親の金である。
私が汗水垂らして稼いだ金など一円もない。
全てギャンブルに使っていたのだ。
親が命を削ってまでして貯めた金を湯水の如く使い切る息子だったのである。
私の父は三十の時に一度結婚に失敗して三十八歳で私の母と再婚をした。
一度結婚で失敗していた父は私を大層溺愛してくれた。
一年半後に長女が生まれ仕事も順調だったが、母が結核に倒れ入院せざるを得なくなった。
当時の結核といえば、伝染病扱いで、母も遠く離れた病院に隔離された。
今では考えられないことだが、ほんの六十年前は当たり前のことだった。
母がいないので母方の両親に夜まで遊び相手になってもらっていたのだが余りにわがままで育ったので、あまり親の言う事を聞かない子に育った。
幸い母の病気は程なく完治したが、私は一層わがままになっていった。
親の名誉のために一つ言える事は、私がわがままのまま大人になったのは決して親が甘やかして育てたからではない。
親に甘え、親を頼り、自分自身で何の努力もしないまま成長した私の考えの甘さが原因だったのだ。
結局、甘えた人生のまま子供を授かったのだった。

子供が出来たのはブーブーをやり始めて一年半過ぎた頃だった。
十月に長女が生まれ私は三十一歳になっていた。
子供の名前は私が杏という名はどうかと文に聞いた。
文もその名前を気に入ってくれた。
だがその時私は考えられない事をやってしまったのである!
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