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競馬編②

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ではどのようにしてレースを選べば良いのか…?
最初に考えなくてはいけない事は一レースで一点しか買わないのだから三連単の大穴を一点で当てる事はまず無理…というより一ヶ月ずっとやっても、いや一年やり続けても一レースも当たらない可能性もある。
そうなるとメンタルが壊れると同時にギャンブルで生活が出来る…わけがない。前にも書いたが当たりの30%は胴元に取られる仕組みである。
当たりやすいレースを選び、当てる可能性を上げる…この一点しかない。
一番当たり易いのは複勝である。
だが、一番人気の複勝は1.1倍から高くても2倍を超える事はまず無い。
当たり続けたとしても一レース負ければトータル負けになる事が多い。
何度か実践してはみたが、トータルプラスになるのは難しい。
ではどうすれば良いのだろうか…?
競馬と一言でいっても中央競馬と地方競馬とでは全く違う。
何が違うのかと言えば、まずは一レースの売り上げだ。
地方競馬での朝一のレースの売り上げは少ない時は一千万円に満たない事も多々ある。
それに比べると中央競馬の早いレースでも五億円は下らない。
約五十倍の差が生じるのだ。
それだけでは無い。
昔から地方競馬は出来レースたるものが存在していた。
今で言うポートレースもそうだ。
いかさまで一番やり易いのが本命馬の出遅れである。
昔はそれがあからさまに行われていた。
今でこそパトロールビデオたるものが入れられて大胆にはできなくなってきてはいるが、今でも必ずある。
何故そう断言できるのか…と言えば、私の知り合いにそれを生業にしていた人がいたからであった。
その人をAとしよう。
Aと私は麻雀屋で知り合った。
その雀荘はフリーの三麻専門であった。
前にも書いたように私は麻雀ではほとんど負けない。
ましてや田舎の素人ばかりの雀荘では負ける筈はなかった。
毎日のようにAと卓を囲んでいたのだが、当然毎回のようにAは負ける。
当然のように私は勝つ。
最初のうちはAは金持ちのボンボンか…と思っていたのだが、何度か飲みにいくうちにそうでは無い事がわかってきた。
ある時私がいつも以上にバカ勝ちをしてAが私に借金を作った。
麻雀が終わった後に私はいつものようにAを飲みに誘った。
Aはそこまで酒は強くなかったが、酒を飲む雰囲気が好きで女も好きだったので私と気が合う様子だった。
三軒目のスナックに行った時だった。
先の二軒も私が払ってそこも私が払うつもりでいた。
三軒梯子しても五万円あれば足りる飲み屋である。
その日は麻雀で十万円勝っていたから少しはAに還元しよう…との気持ちもあって別にその程度ならば痛くも痒くも無い感覚だった。
Aにはあんまりこれ…と言った友達も少なかったのかもしれなかった。
酔った勢いで「自分は競馬で生活をしている」…と話し始めたのである。
私は今まで書いていた通り麻雀では負け知らず…まではいかなくとも現実に生活するには困らないくらいは勝っていた。
しかしその分、競馬では負け続けていたのである。
(競馬で生活しているなんて信じられない!)
Aが話を大きくして話しているんだ…と感じていた。
だがAの話を聞き続けているうちにそれが真実でありしかも絶対に勝てる方法であることを知ったのだ。
それは騎手と連絡を取ってその騎手が乗るレースを買う…というイカサマレースを仕組んでいる…と言うのだ。
しかもその騎手とは当時福山競馬でのリーデングを争う人物だったのだ。
その名前は私も知っている騎手だった。
にわかに信じがたい話だったが、Aはそこまでホラを言う人には見えなかったので私はその話に興味を抱いた。
Aとその騎手は幼なじみだったらしい。
当時の地方競馬は今のようにそこまで厳しくなかった。
とは言ってもある程度の規律はあり、規律に違反する者についてはそれなりの罰則も当たり前のようにあった。
また、当時は携帯電話などはなくポケベルの時代だった事もあり、それに対する規制は特に厳しかった…と覚えている。
そんな中のAの話だったのだ。
私はどのようにイカサマをやるのか…?
どうやってその話を聞くのか…?
私も酒が入ってはいたが、何としてもその話を聞かなくては…と言う気持ちが先行して酔っ払っている場合ではなかった。
私は話の途中でトイレに入り、頭から水をかぶった。
酔いを醒さなくてはならなかったからだ。
トイレからすぐに出てAに話の続きを聞く。
そのイカサマのやり方を聞いてなるほど…と私は頷いたのだった。
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