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その日の夜、パープルに窪田はいた。
志保に今日の報告をする為だ。
「あら、どうだった?
お気に召したかしら?」
窪田が席に着いて何分もしないうちに志保は席に付いてくれた。
パープルはいつも通り満席である。
それなのに他の客より自分を取ってくれた気がして窪田の機嫌は悪いはずはなかった。
明日会議を開いて何も問題がないようだったら、夕方に宮本の携帯に連絡を入れる事を志保に話した。
「そう、よかったじゃない!
その場所にマンション建てるんでしょ?
立地もいいし、分譲だったらすぐに埋まるわね。
なんならルイ13世出そうか?」
「いや、それは商談が決まってからだな。
今それを入れたら今日の支払いが百万円では足りないからな…」
ルイ13世を銀座のクラブで頼めば百万円は下らないと言われている。
志保がパープルを始めてからでも何本も出ているものではなかった。
「ルイ13世くらい何十本でも入れられるわよね。
クーさんがこの商談、まとめれば…。
冗談、冗談よ。
クーさんにそんなにお金使ってもらおうなんて思ってないから…」
あながち冗談とも言えない志保の発言に、商談が成立した日にはそれ以上のお礼はするつもりの窪田だった。

次の日、会議でゴーサインが出た。
後は売買契約を締結して決済を迎える日を待つだけであった。
窪田は会議の後、すぐに宮本の携帯に連絡を入れた。
「もしもし、宮本さん?
窪田不動産の窪田です。
昨日の話、会議でオッケーが出ましたのでよろしくお願いします。
つきましては斎藤さんとの本人確認と売買契約の書類等のことがありますので、お日にち、いつがよろしいか連絡いただけますか?」
と、宮本に聞くと
「こちらは三日あれば書類を揃えることができますので、そうですね…金曜日はいかがですか?」
窪田は宮本の言う三日あればこちらもいろんな段取りはできる。
「ではその時に、登記申請書類など全ての書類を用意していただけるということでよろしいですね」
「はい、もちろん全ての書類を持って参ります」
「契約する場所はこの前のホテルプリンスの会議室を借りますので、午前一時でいかがでしょうか?」
「それで結構です。
ではその時までに必要書類を用意しておきます」
宮本は窪田の話に全て合意して金曜日の一時に決済を行う事を了承した。
窪田はその事を志保に伝えて、決済が終了したら店に顔を出して、パァーっと祝杯をあげる約束をした。
それが甘い罠だとも知らずに窪田は浮かれていた。
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