詐欺る

優しさは時には罪

人は依存する動物だ。
特に神経が病んでいる時は何かに依存しなければ不安になるらしい。
マキはそれから毎日のように私の部屋に来た。
その都度、私はフロアに行き少し落ち着かせてからマキの部屋の前まで送った。
しかしついに看護婦に入るところを見られ院内で問題になった。
私は婦長に呼び出され事細かに今までの経路を聞かれた。
話を聞いた婦長は私にこう話した。
「ここの患者さんは他の病院より症状が少し軽い患者さんが多いんですが皆さん傷を持って入院しに来てます。
あなたは優しいので好いてくれてる、付き合ってると思い込んでるんです。
優しさは時には罪になるんですよ。
それだけは萩原さん分かっといてください」
ナースステーションを出た私はトボトボと部屋に戻った。
私は詐欺師だから人の気持ちなんて読むことが出来ると過信していた。
人の心の底までは誰も見るごとなんて出来ないんだ。
私はその日は外出もしないで一人ベッドの上で考えていた。
マキは強制退院させられた。
院内の秩序を乱したからとの理由だった。
もうこの病院には入院できないだろう。私は婦長の言った優しさは時には罪になるの言葉を思い出しマキに悪かったと心で詫びた。