詐欺る

黒崎伸一郎

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シンデレラのしんちゃん②

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私は自分の部屋を出て理沙のアパートに転がり込んだ。
自分の親には何にも言わずに失踪したということだ。
予備校も下宿さえも後のことには構わず、ボストンバック一つで理沙と同棲を始めたのだった。
歌舞伎町から近くにアパートを借りていた理沙は美容師だった。
年は私より一つ下らしく、高校を一年で中退して美容学校に行き美容師として働いてるらしい。
私は相変わらず麻雀とディスコの繰り返しだったが、そのディスコも理沙があんまり行くなというので最近は麻雀ばかりだった。
競馬も覚えたが、よくわからなかったし負けることがよくあるのでたまにしかいかなかった。
ただし麻雀は強くなった。
元々、仲間の間では負けた記憶があまりなかったため、最初に負けて火がついたのかもしれなかった。
しかし勝てるようになるまでにはすごく勉強はした。
何故学生時代にこれほど夢中になって勉強しなかったのかと思うくらいに集中して勉強した。
勉強というのは麻雀牌とマットを買って毎日遅くまで牌を握っていたのだ。
アパートの隣からの文句もあり、さすがに夜十時からは牌を混ぜる音は出さずに本を読んで麻雀に励んだ。
麻雀では、今でも飯を食べているプロともこの時何度も卓を囲んでいたし、その時も負けなかった。
ただ理沙とはすぐに別れてしまった。
麻雀ばかりで理沙と遊びに行くというのがなくなったのと、遊びばかりの私に愛想がついたのが答えだったのかもしれない。
現実に理沙のアパートに行ってからでもディスコにはよく行きナンパもしてアパートに帰らない日もあったくらいだった。
理沙が嫌いになったわけではない。
今まで眼鏡をかけ、歯は金馬の入れ歯の女の子に声をかけたこともなかった学生が、眼鏡を外し歯を白くしたことで女性に声をかけることが出来るようになり、ナンパが何度も成功して、かわいい女性といつでも付き合えるようになったらおかしくなるのも当然と言えば当然だったのかもしれない。
理沙のアパートを出ていくあてもない私は持ち金、全財産十万円を持って競馬に行った。
麻雀の方が勝てる確率は高いのだが麻雀は勝ったとしても一日五万円は勝てない。
レートが安いのだった。
もし競馬で負けたら両親に泣きつけばなんとかなると思ったのだ。
なんとかなると思ってもなんとかならないのがギャンブルであるが、その日はバカ当たりで最終レースの前までに二十万円勝っていて最終レースを負けても三十万円はまだ持っていたのだ。
私は最終レースは負けてもいいので前でレースができる馬、先行馬ばかりを買った。
レースは十六頭出走でダートの千二百メートルで争われた。
一枠二頭が本命で次に八枠が人気だった。
私はあまり人気のない四枠の逃げ馬二頭を中心に馬券を買っていた。
当時は馬連三連単などはなく枠連のみであった。
私は四枠から買っていたので四枠が一着か二着に入れば勝てるのだった。
私はこのレースは全く勝つなんて思っていなかったから、帰りはおいしいものでも食べて麻雀は行かずにディスコでまたかわいい女性をナンパしようと考えていたのだ。
もちろん勝ちたくないわけはない。
ただ四枠の二頭の馬は、六番人気と十四番人気で六番人気の馬だけに少し期待ができるかなと言った程度のレースだった。
何故四枠が人気があまりなかったのかといえば最近の成績が極端に悪いため人気が落ちていたのだ。
ゲートが開きレースがスタートした。
予想通り四枠の二頭ともが逃げている。
二頭は折り合いがよく後続も競りには来なかった。
これから四コーナー回って直線に入る。普通なら一枠の馬がここから差してくるはずだが、二頭とも少し出遅れてなかなか伸びてこない。
八枠の馬が外から来るが届きそうにない。
後は離れていた。
「エッ?私は思わず言葉を失った。四ー四である。
(まさか!)そのまさかである。
私は自分の馬券を見直した。
ある!四ー四は何と一万円買っている。他の馬券は三千円くらいだったがそれだけはなぜか一万円買っていたのだ。
配当は二万三千六百七十円。
一万円買っていたから二百三十六万七千円になったのだ。
私は生まれて初めて万馬券を取り十万円の金を二百六十万円以上にしたのだった。
場外売り場を後にした私はすぐにアパートを借りに不動産に行った。
そして家賃六万円のアパートを借りたのだった。
私は敷金権利金を支払い、保証人をつけない代わりに半年分の家賃を前金で払った。
保証人は親をつければいいのだが前の下宿の件と予備校を勝手に止めたことが頭にありまだ連絡する気にならなかったのだ。
歌舞伎町の近くの大久保にアパートを借りた私は毎日のようにディスコに行き出した。
行きつけの店の名はシンデレラ。
私はシンデレラに行けばまず女をナンパしていた。
しかもかなりの確率でお持ち帰りをした。
そこでついた名前がシンデレラのしんちゃんであった。
私は約一年以上そこに通い続け、ナンパのしんちゃんとも言われていた。
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