転生天馬は乙女に寄り添う

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第一章

レベリング

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 ゾディアカルト聖王国に着いてから、早くも三ヶ月が経った。
 俺は人間の言葉を覚えて、【念話】を使われなくても相手の言っていることは理解できるようになった。俺から伝えるには相変わらず【念話】頼みだけど、誰かと話すのにいちいち通訳を挟まなくて良いのは凄く楽だ。

 あと、ここ最近は王女様達と一緒にレベリングを始めた。
 おかげで俺のレベルは今や5。
 …………低いと思っただろ? 俺もそう思う。でも、本当に最近、正確には5日前に初めて外に出て魔物と戦ったばっかりだ。
 場所は俺の元々の棲家すみか(生息地?)があったステライト山脈のヘルブスト迷宮じゃなく、聖王国の近くの草原で王女様達からしたら物足りない、スライムとかしか出てこない初心者用マップで1日かけてレベルを1上げた。
 その3日後、今度は少し離れた森の中でレベリング。
 出てくる魔物はやっぱり王女様達からしたら雑魚だけど、時々油断ならない相手も出てくる。毒持ちの移動阻害系魔法を使ってくる植物とか、事故で1匹叩いたら20~30匹は出てくるやたら素早いネズミとか……。
 そういう奴らを一昨日倒してレベル5になった。

 んで、今日。
 今日もその森に行くんだが、もう少し深いところまで潜るらしい。
 難易度的には油断せず、きちんと連携が取れていれば普通に倒せる相手が出てくると聞いてる。

 王女様であるスピカ。
 剣士のレグルス。
 重戦士のサダル。
 魔法師のアリー。
 盗賊にウル。
 んで、俺の6人パーティ。

 貴族の3人は馬車の中。騎士のレグルスと総合組合ギルドのウルは御者席で馬車を引き、俺は馬車の横をのんびり歩いてる。護衛とかは居ない。
 そんなんで良いのかと思うかもしれないけど、スピカには転移魔法が込められたアーティファクトが持たされていて、それを使えば護衛騎士が召喚されるらしい。

 これ以上考えるとフラグが立ちそう……って思ってる時点でフラグ立ったか?
 まあ、なるようになるだろ。
 ちなみに今の俺のステータスはこれ。


(【鑑定】)



《名前:なし
 種族:幻獣種 ペガサス
 LV:5
 HP体力:209 107up
 PW攻撃力:678 408up
 DF防御力:231 107up
 SP素早さ:932 612up
 MP魔力:1541 511up
 称号:『転生者』、『幻ノ魔獣マボロシノマジュウ
 スキル:【水属性魔法】Lv.3 2up
     【風属性魔法】Lv.2 1up
     【雷属性魔法】Lv.2
     【重力魔法】Lv.2
     【回復魔法】Lv.2 1up
     【補助魔法】Lv.2 1up
     【身命】Lv.1 New
     【剛力】Lv.2 1up
     【堅固】Lv.1 New
     【俊足】Lv.3 2up
     【魔法師】Lv.2 1up
     【HP自動回復】Lv.2 1up
     【MP自動回復】Lv.4 1up
     【物理攻撃耐性】Lv.1
     【魔法攻撃耐性】Lv.3 1up
     【冷気耐性】Lv.1
     【氷結耐性】Lv.1
     【誘惑耐性】Lv.2 1up
     【視覚強化】Lv.2 1up
     【魔力感知】Lv.3 1up
     【思考加速】Lv.2 1up
     【索敵】Lv.2 1up
     【隠密】Lv.2 1up
     【領域支配】Lv.1
     【種族統制】Lv.1
      (称号:『次期王』特典、固有スキル)

     【鑑定】
      (称号:『転生者』特典、ユニークスキル)
     【念話】
     【威圧】
     【暗視】
     【第六感】
     【幻獣浄化ゲンジュウジョウカ
      (称号:『幻ノ魔獣』特典、固有スキル)
スキルポイント:2100》



 HPとDFを底上げしてくれる【身命】と【堅固】が取れたのは良かった。【身命】はLv.4の時、【堅固】はLv.3の時にゲットした。どっちもレベルアップ時にボーナスが付く嬉しいスキルだ。
 にしても、俺は爪楊枝か何かか?
 攻撃力は物理・魔法どっちも高い。スピードもそこそこある。けど、打たれ弱い。
 そんな俺だけど、やっぱり魔物なんだと実感できる。
 なぜなら……。



(レグルスを【鑑定】)



《名前:レグルス=サンフレイム・K・リオンクール
 種族:人族
 LV:24
 HP体力:226
 PW攻撃力:198+30(聖王国騎士の剣)
 DF防御力:191+15(聖王国騎士の鎧)
 SP素早さ:180
 MP魔力:34
 称号:『剣士』、『勇者見習い』
 スキル:【体術】Lv.3
     【剣術】Lv.4
      (称号:『剣士』ボーナス)
     【盾術】Lv.4
     【光属性魔法】Lv.1
      (称号:『勇者見習い』ボーナス)
     【身体】Lv.4
     【怪力】Lv.2
     【強固】Lv.2
     【毒耐性】Lv.3
     【移動阻害耐性】Lv.1
     【魔力感知】Lv.2
     【思考加速】Lv.1
 スキルポイント:300》



 俺よりレベルが19も上なのに、ステータスは俺の方が高い。
 ちなみに(称号:『剣士』ボーナス)とかってのは経験値が多くもらえたり、スキル進化しやすかったり色々特典があるっぽい。【鑑定】によれば。

 人間が弱いのか俺が強いのか……。そんな疑問が出てくるが、前に鑑定したことがあるスカイコニーやブラッドバット、ロックドックと比べると俺のがステータスは高かったから、単純に俺の種族値が高いんだろう。
 神様も長生きさせてくれるって言ってたしな。
 異世界転生なんてチートがあってナンボだろ。
 世界観が全く違うところに落とされて、訳もわかんないのにその世界の住人と同じステータスを持たされたら泣くね。

 そうしてゆっくり歩いていると、俺の【索敵】に敵が引っかかって【自動地図】の森の中に赤い点が現れた。近くには中立を表す緑の点が二つ。今にも襲われそうなほど距離が縮まっている。



(「レグルス、森の中で襲われている奴がいる。俺が先行して行ってくるから、なるべく早く来てくれ」)



 言い逃げのように言うだけ言った俺は、持ち前のSP素早さ932という駿足を発揮して襲われている誰かの元へと駆けつけた。
 【視覚強化】を使って見てみると、少しだけ鮮明になった視界の先に母娘おやこが芋虫っぽい形の魔物に襲われているようだった。


(【鑑定】!)



《種族:魔蟲族 レッサーワーム
 LV:3
 HP体力:56
 PW攻撃力:38
 DF防御力:35
 SP素早さ:8
 MP魔力:10
 称号:なし
 スキル:【毒魔法】Lv.1*
     【毒耐性】Lv.1
     【魔力検知】Lv.2*
     【射出】Lv.1
 スキルポイント:300》



 雑魚乙!

 トップスピードのままレッサーワームに体当たりをかます。
 それだけでレッサーワームはチリになった。

 お、ドロップアイテム。
 [ワームの糸]か。防具を作るのに意外と使うんだよな。
 ペガサスの俺はアイテムとか拾えないから、これはあいつらが来るまで放置で。



「あ、の……」



 雑魚から珍しくドロップしたアイテムに意識向けすぎて、助けた母娘の存在をちょっと忘れてたわ。



(「大丈夫ですか?」)

「……は、い」



 ビクビクおどおどしてる母親と、その母親の後ろからちょっとだけ顔を出して隠れる6才くらいの女の子。

 そりゃそうだよな。
 翼の生えた青い馬が【念話】で話しかけてきてるんだもんな。
 相手にとっちゃ俺も立派な魔物なんだろうな。



「おい! ペガサス!」



 やっとレグルス達が来たみたいだ。
 後は任せるか。



(「レッサーワームに襲われてた。怪我はしてないみたいだけど、恐怖心が残ってるから落ち着かせてやってほしい。あと、ドロップアイテム回収よろしく」)

「全く。なんでお前はいつも……はぁ」

「レグルス、ペガサス。大丈夫か?」

「相変わらず足速いわね。さすが馬だわ」

「アリー。ペガサスですよ。ただの馬ではなく天馬です」

「それくらい分かってるわよ!」



 御者席からひらりと降りたレグルスに文句を言われながら、馬車から賑やかに降りてくるサダルとアリー、スピカの邪魔にならないように場所を開けた。

 まだ森の入り口近くだからそんなに木も生い茂ってないし、そこまで大袈裟に避けることはないだろうけど、なんとなくだ。
 名前で呼び合えるまでには仲良くなったが、そこまで深い付き合いをしたいとは思わない。
 いずれ俺はこの国を出て、あいつらを探しに行くからな。あんまり付き合いを密にしたところで良いことなんてないだろ。
 俺は、広く浅くよりも狭く深く派なんだ。



「おうま、さん……」



 人付き合いについて考えていると、女の子が母親に促されておずおずといった感じで声をかけてきた。

 まあ馬だし、【視覚強化】で視野角広がってるし接近には気付いてたけど。悪意も害意もないし、何より小さい女の子って事で警戒はしてない。断じてロリコンなわけじゃない。



「さ、さっきは、たすけてくれて、ありがとうございました」

(「どういたしまして」)

「せいじょさまからききました。おうまさんはめずらしいんだって。だから、こわがらないでって」


(スピカめ。余計なお節介を……)


「だから、こわがってごめんなさい」

(「気にしてないから良いって」)



 チラリと母親に目を向ければ、申し訳なさそうに小さく頭を下げられた。
 彼女も同じ気持ちなんだろう。改めて謝罪と感謝の言葉を言われてしまった。

 俺としては困っている人が居たら自分のできる範囲で助けようとは思うし、それが女性なら尚更。別に女の人を弱いって言ってるわけじゃない。実際俺の産みの母親はめちゃくちゃ強かったし。肉体的にも精神的にも。
 そういう俺なりの正義感も、女性に対する優先的な思考も、両親がこうした方が良いって教えてくれて、俺がそうだなって納得して今の俺があるから……。
 なんて言ったら良いんだ?

 俺の見た目うんぬんはどうでも良い。
 ただ、謝罪は受け取らないけど感謝はありがたく受け取る。

 これに尽きる。
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