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おお!神よ!ゲームなんてするな!

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「親父!!なんでダメなんだよ!?」
「駄目なものは駄目だ、曾祖父さんからの院なんだぞ?そんな簡単に変えられん!」
「別に、全てを変えたいわけじゃなくて、色んな事を試したいんだ!!絶対、俺は行きたいとこに行くからな!」
「陽和!」

バタン!!大きな音を立て、家から飛び出した。親父の俺を呼ぶ声がしたが、そんなの関係ない!

俺は香田陽和17歳、高校2年生だ。
うちは、曾祖父ちゃんの代から鍼灸院を開いている。なんでも香田の血筋は癒しの力があるとか無いとか、チートみたいな話でなく、先祖からそういった仕事を行なっていたようだ。
だから爺ちゃんも親父も引継いでいる。俺も引継ぐ予定。でも、俺、他にも挑戦したいことがあって…。

手に持つ進路相談の紙をぐしゃりと握りしめた。

親父は鍼灸の学校に行かせたいらしい。俺も鍼灸は好きだよ?爺ちゃんや親父が鍼を打つ姿がかっこいいし、患者を笑顔にするの、素敵だなって。
だから、俺!もっともっと院をでかくしたいんだ!
その為、他のことも出来るように、メニューも増やしたい!
そんな時YouTubeで見た骨格矯正?っていうカイロプラクティックを身につけたい!って思ったんだ。
鍼灸みたいに国家資格はいらないけど、また違うアプローチの仕方をやって見たかった。
だから、カイロの専門学校通ってから鍼灸の専門を考えてたのに…頭ごなしに…

俺だってわかってるんだよ。2つも通う金なんて無いしさ。でも筋肉、気の流れ、神経以外の方法も知りたかったんだ。専門過ぎて伝わらないか。

フーッとため息をつき、橋の上で沈む夕陽を見ていた。

ニーッ、

ん?なんか聞こえる?

微かに聞こえる何かに耳を傾ける。

ニーッニーッ

猫?

下を見ると、猫が川に流されていた!

「おおおっ!待って!待ってろ!」

俺は慌てて橋の下に降りて、川に飛び込んだ。

ふ、深い!!

先日の大雨により、川の流れも激しい。
必死に猫を抱き上げて、川から上がろうともがくが、流れに足を取られる。
俺は、猫に謝りながら、草むらへ猫を投げた。
ひょいっと体勢を直し、上手く着地する猫を見届けて、俺は川の中に沈んだ。

こんなことなら、親父と喧嘩なんかするんじゃなかった。ごめんよ。親父。




……!

………!

…なんだようるさいな…

…………!

「おい!!起きろよ!?」

パッと目を開けると、そこには真っ白な髪、ガラスのような瞳の男が俺の顔を覗き込んでいた。

「わ!!あれっ?い、生きてる!」
パタパタと自分の身体を触りまくる。
確か、俺、川で!!

「半分な?」

へっ?半分?
全身白い、よく見るとめちゃくちゃ綺麗な男。そして真っ白な空間にいた。

「ここは?…あんたは?」

白い男が口を開こうとした瞬間…

ドーーーン!!
俺は横からタックルされた。
うげっ!

「良かったーー!起きたー!ひーちゃん!!」
グリグリと抱きつきながら頭を擦りつけてくる男。
この男も全身真っ白のめちゃくちゃ綺麗な顔をしている。違いをあげれば、白1はつり目、白2は垂れ目だ。

なに?どういうこと?

「ひーちゃん!ごめんね?うちのバカ兄貴が!!」
あっ、兄弟でしたか。

「うるせーな、とにかく説明しろよ!めんどくせー」
つり目さんがイライラしながら垂れ目さんに言った。

「今するよ!元はと言えば兄貴のせいなんだからね!」

抱きつきながら、プリプリする垂れ目くんが弟ね。

「ごめんね?ひーちゃん。ひーちゃんは今、正確に言うと半分死んで、半分生きてる状態なんだ。」

「は、半分!?」

「順を追って説明するね?まず、僕たちは神なんだ。
兄貴はひーちゃんの世界の神で、僕はまた違う世界の神だよ。名前は多分ひーちゃんの脳では理解できないとおもうげど、兄が#&@\\☆で、僕が@*%##&だよ?@*%って呼んでくれると嬉しいな!」

よ、呼べません。

「なんでひーちゃんがここに来たかというと、本当はひーちゃん、死なないはずだったんだ。」

え!?

「死ぬはずの無い人間だったんだ。まず、猫は川に流されても、先の木に引っかかって助かるはずだったし、ひーちゃんが助けに入っても、すぐ人が気付き助けてくれるはずだったんだ。でもね、この兄貴がひーちゃんの国のゲームにハマり、F◯っていうのを夢中でやってて、溺れたひーちゃんを助ける筈の人に、気付かせるという行為を行わなかったんだ。」

俺の命がF○によって…?

「慌てて気付いた僕がお告げをして、ひーちゃんを救助してもらったんだけど、魂が弱くなって、身体もボロボロでさ。長く保てない状態なんだ。」

そ、そんな……

あまりのことに呆然としてしまう。

すると、弟がボワンッと鏡を出した。そこに写っているのは、紛れもなく俺で、病院のベッドにいた。そして、その側では親父とお袋が泣いている。

「…助ける予定だった人、それがひーちゃんのパパだよ。ひーちゃんが家を飛び出した後、探して居たんだ。ごめんね?お告げが遅れちゃったから、パパもひーちゃんを助けるの遅れてさ、パパ、自分を責めてるんだ。」

お、親父……。

まだ、理解が追いつかない…だけど、初めて見た親父の泣く姿に…俺は、もう親父に何も伝える事が出来ない事を理解した。

瞳から自然と涙が溢れてくる。俺はそっと、鏡に触れた。

「親父…ごめん!ご、ごめんな!」

「ひーちゃん、悲しいのはわかるけど、時間が無いからよく聞いてね?」

泣く俺の背中をポンポン叩きながら弟は言う。

「さっきも言ったけど、半分生きている状態で、そっちの世界では脳死?に当たるかな?だけど、僕の世界に来るなら、ひーちゃんは生きていられるよ?兄貴の世界より魂に優しいんだ。だから皆長生きだしね!魂だけでも無事なら身体は治せるから。兄貴の世界に存在している時間は今の弱った魂なら後ちょっとしかいられないし、消えてしまうから、早く決めて?」

ほ、他の世界で生きる?
これって従姉妹がよく読んでいた…異世界転移もの!?

「さあ!ひーちゃん!決断の時です!」
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