8 / 12
勇者では無いかも。
しおりを挟む
ライラックはテントの中に、キメラをいれると、濡れタオルで身体を拭いて、スープで赤くした胸元にポーションをかけてやる。
「ちゅめたい…。」
ポーションが冷たいのか、ペチペチと胸元を叩く。
その様子が可愛くてニマニマするライラック。
みるみる赤さが無くなると、目を見開き、多分びっくりしたんだろう。
「ない!ないよ!」
キラキラの目がこぼれ落ちるんじゃないかと思うほど大きくして、胸元とライラックを交互に見ている。
「これは、ポーション。傷や痛み、魔力を治すんだよ。」
「ぽーちょん。」
「ポーション。」
「ぽーちょん。」
まだ無理そうだな。と頭を撫でる。
気持ち良さそうに、手に擦り寄り小さなキメラ。
可愛さに抱きしめ、毛布に2人して潜る。
「さあ、寝るぞキメラ。」
「ねんね?」
「そう、ねんねだ。」
ギュッと抱きこむと、キメラは寝る準備をする様に、指を口に含みしゃぶり出す。
ちゅぱちゅぱと指に吸い付くキメラを撫でると、ウトウトしだした。
男で剣士の俺が、こんなにも可愛く感じるとは思わなかった。
ジンクが夢中になるのもわかる。
結婚、子供なんて考えなかった。自分は戦場で死ぬと思ったが…
「今ならいいパパになれそうな気がする。」
いつのまにか寝てしまったキメラの体温を感じながら、眠りについた。
*****
ペチペチと頬を叩かれる、目を開くと、キメラが俺の顔を覗き込んでいた。
こんなにもぐっすり寝たのは久しぶりだった。
ヴィートがバリアを張っているにせよ、まさかここまでぐっすりとは。
キメラの力か。
「おはよう、キメラ。」
「はよじゃます。」
なんの呪文だ。
「おんも、こわい。ちゅよい。」
おんも?外か?
すると、ピリッと物凄い殺気が背筋を走る。
まさか!!バリア内に敵が!?
キメラが気づいて俺が気づかないとは不覚!!
ヴィート達は!?
バッと剣を持ち外にでると、夜と同じように、木の丸太に座り、こちらのテントを睨んでいるジンクがいた。
ドス黒いオーラに包まれたジンクがただならぬ殺気を出している。
本当に勇者か?
「お、おまえ、まさか一晩そのままか?」
俺が恐る恐る聞いても、無言でジッと見てくる。
魔王にしか見えない。
「……お前がキメラに変な事をしないよう、見張っていた。そして、もしかしたら、キメラが寂しがって出てくるんじゃないかと待機していたが、徐々に寝息が聞こえ、殺してやりたくなる感情が増えて押さえられなくなったら朝だった。」
こいつ、こんなに喋る奴だったか!?
なんか違う意味で怖いし、何言ってんの?
「もう、ずっとこんな感じで怖いんですよ。」
水を鍋いっぱいに汲んできたヴィートが困り顔で現れた。
「ヨシュアも殺気にやられて、早めに起きて、祈りを向こうでしてるよ。…ライラックだけだよ、珍しいね。あんだけの殺気の中…キメラ効果?」
そうかもしれない。
おずおずとテントから出て、俺の足に隠れるキメラに、ピクリとジンクが反応する。
シュルルルと殺気が消え、キメラを見る目が優しく変わる。
「キメラ…来い。」
ジンクは手を差し出すが、先程の殺気が怖かったのか、足の影から出てこない。
「こわい。」
キメラの言葉にショックを隠せず、ピシリと固まるジンク。
流石に後が怖いので、キメラを抱き上げ、ジンクの側に寄る。
「キメラ、さっきのジンクは、キメラが心配で堪らず、殺気を出しちまったんだ。だから怖くないよ。」
「しんぱい?おこんにゃい?」
チラッとキメラはジンクを見る。
ジンクはコクコクと頷く。
「怒っていない。」
その言葉に、キメラは、身体をジンクの方に傾けて、手を広げた。
抱っこの合図に、ジンクはライラックから奪うように抱きしめ、キメラの頭の匂いを嗅いだ。
スーハースーハーするジンクは気持ち悪かった。
「ちゅめたい…。」
ポーションが冷たいのか、ペチペチと胸元を叩く。
その様子が可愛くてニマニマするライラック。
みるみる赤さが無くなると、目を見開き、多分びっくりしたんだろう。
「ない!ないよ!」
キラキラの目がこぼれ落ちるんじゃないかと思うほど大きくして、胸元とライラックを交互に見ている。
「これは、ポーション。傷や痛み、魔力を治すんだよ。」
「ぽーちょん。」
「ポーション。」
「ぽーちょん。」
まだ無理そうだな。と頭を撫でる。
気持ち良さそうに、手に擦り寄り小さなキメラ。
可愛さに抱きしめ、毛布に2人して潜る。
「さあ、寝るぞキメラ。」
「ねんね?」
「そう、ねんねだ。」
ギュッと抱きこむと、キメラは寝る準備をする様に、指を口に含みしゃぶり出す。
ちゅぱちゅぱと指に吸い付くキメラを撫でると、ウトウトしだした。
男で剣士の俺が、こんなにも可愛く感じるとは思わなかった。
ジンクが夢中になるのもわかる。
結婚、子供なんて考えなかった。自分は戦場で死ぬと思ったが…
「今ならいいパパになれそうな気がする。」
いつのまにか寝てしまったキメラの体温を感じながら、眠りについた。
*****
ペチペチと頬を叩かれる、目を開くと、キメラが俺の顔を覗き込んでいた。
こんなにもぐっすり寝たのは久しぶりだった。
ヴィートがバリアを張っているにせよ、まさかここまでぐっすりとは。
キメラの力か。
「おはよう、キメラ。」
「はよじゃます。」
なんの呪文だ。
「おんも、こわい。ちゅよい。」
おんも?外か?
すると、ピリッと物凄い殺気が背筋を走る。
まさか!!バリア内に敵が!?
キメラが気づいて俺が気づかないとは不覚!!
ヴィート達は!?
バッと剣を持ち外にでると、夜と同じように、木の丸太に座り、こちらのテントを睨んでいるジンクがいた。
ドス黒いオーラに包まれたジンクがただならぬ殺気を出している。
本当に勇者か?
「お、おまえ、まさか一晩そのままか?」
俺が恐る恐る聞いても、無言でジッと見てくる。
魔王にしか見えない。
「……お前がキメラに変な事をしないよう、見張っていた。そして、もしかしたら、キメラが寂しがって出てくるんじゃないかと待機していたが、徐々に寝息が聞こえ、殺してやりたくなる感情が増えて押さえられなくなったら朝だった。」
こいつ、こんなに喋る奴だったか!?
なんか違う意味で怖いし、何言ってんの?
「もう、ずっとこんな感じで怖いんですよ。」
水を鍋いっぱいに汲んできたヴィートが困り顔で現れた。
「ヨシュアも殺気にやられて、早めに起きて、祈りを向こうでしてるよ。…ライラックだけだよ、珍しいね。あんだけの殺気の中…キメラ効果?」
そうかもしれない。
おずおずとテントから出て、俺の足に隠れるキメラに、ピクリとジンクが反応する。
シュルルルと殺気が消え、キメラを見る目が優しく変わる。
「キメラ…来い。」
ジンクは手を差し出すが、先程の殺気が怖かったのか、足の影から出てこない。
「こわい。」
キメラの言葉にショックを隠せず、ピシリと固まるジンク。
流石に後が怖いので、キメラを抱き上げ、ジンクの側に寄る。
「キメラ、さっきのジンクは、キメラが心配で堪らず、殺気を出しちまったんだ。だから怖くないよ。」
「しんぱい?おこんにゃい?」
チラッとキメラはジンクを見る。
ジンクはコクコクと頷く。
「怒っていない。」
その言葉に、キメラは、身体をジンクの方に傾けて、手を広げた。
抱っこの合図に、ジンクはライラックから奪うように抱きしめ、キメラの頭の匂いを嗅いだ。
スーハースーハーするジンクは気持ち悪かった。
11
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
溺愛お義兄様を卒業しようと思ったら、、、
ShoTaro
BL
僕・テオドールは、6歳の時にロックス公爵家に引き取られた。
そこから始まった兄・レオナルドの溺愛。
元々貴族ではなく、ただの庶子であるテオドールは、15歳となり、成人まで残すところ一年。独り立ちする計画を立てていた。
兄からの卒業。
レオナルドはそんなことを許すはずもなく、、
全4話で1日1話更新します。
R-18も多少入りますが、最後の1話のみです。
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
悪役なので大人しく断罪を受け入れたら何故か主人公に公開プロポーズされた。
柴傘
BL
侯爵令息であるシエル・クリステアは第二王子の婚約者。然し彼は、前世の記憶を持つ転生者だった。
シエルは王立学園の卒業パーティーで自身が断罪される事を知っていた。今生きるこの世界は、前世でプレイしていたBLゲームの世界と瓜二つだったから。
幼い頃からシナリオに足掻き続けていたものの、大した成果は得られない。
然しある日、婚約者である第二王子が主人公へ告白している現場を見てしまった。
その日からシナリオに背く事をやめ、屋敷へと引き篭もる。もうどうにでもなれ、やり投げになりながら。
「シエル・クリステア、貴様との婚約を破棄する!」
そう高らかに告げた第二王子に、シエルは恭しく礼をして婚約破棄を受け入れた。
「じゃあ、俺がシエル様を貰ってもいいですよね」
そう言いだしたのは、この物語の主人公であるノヴァ・サスティア侯爵令息で…。
主人公×悪役令息、腹黒溺愛攻め×無気力不憫受け。
誰でも妊娠できる世界。頭よわよわハピエン。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる