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ネフェリア、学園編

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あれから数日経つが、さらに様子はおかしくなる一方だった。

最初感じた嫌な視線は、徐々に纏まりつくねちっこいものに変化し、下から上にと舐めるような視線が多くなった。

どこにいても感じる視線に、負けるか!とばかりに堂々とした振る舞いをするが、意識すればするほど、緊張からか、疲労と精神を削られている気がする。


少しずつ、ことの原因の噂も耳にするようになった。


僕が男を手玉に取っているという内容の噂だ。

僕も男だけど!?

まぁ芳子さんいわく、BLの世界だから仕方ないか…。

しかも、ここ最近の連続での告白劇を考えると手玉に取るも否定出来ない…

ハァァ…。

ネフェリアは深く溜息をついた。


「ネフェリア、大丈夫?」 

エスティリオが心配そうにネフェリアの頭を撫でる。

ネフェリアはエスティリオに微笑みながら、大丈夫だと伝えて、手元の資料を渡した。


兄様や皆に心配かけないようにしないとな。


コンコン


生徒会室の扉を叩く音にサリファンが対応するとダーウィングが現れた。


「スマナイ。アピア国カラノ輸入品ニツイテハナシタイデス。ヴィヴァリアン皇子トナヴィルリアン皇子ハイルカ?」

ヴィヴァリアンはダーウィングを隣の部屋に案内し、キリウスにナヴィルリアンを呼ぶよう伝えた。

「すまない、暫く話す。国同士の話の為、個室に入るが、何かあれば呼んでくれ。」


ヴィヴァリアンはメンバーに声を掛けて、部屋に入っていった。


すると、立て続けに来客があり、対応に追われる。

馬術部の予算案について、確認の為に呼ばれ、カウディリアンが対応する事になり、馬術部顧問の元に護衛アリウスと向かう。


すると、今度は剣術部から備品が盗まれたと連絡が入り、エスティリオが向かった。


現在生徒会内はサリファンとネフェリアのみとなり、仕事に追われる。

するとまた来客があり、舞踊部の衣装が裂かれたとのこと。本日一部貴族を呼んで発表会があるらしく、慌てた様子だ。

僕が向かおうとすると、1人じゃダメだと、サリファンが付いてきてくれた。

舞踊部の衣装室に向かう途中、1人の小柄な生徒が慌てた様子でこちらに近づいてきた。


「ああ!良かった!!生徒会の方!大変なんです!今、この先の空き教室で、暴力を振られている生徒がいて!来ていただけませんか!?」

えっ!?暴力行為!?

ネフェリアとサリファンは目を合わせ狼狽えるが、本当であれば急いで向かわないとならない。

「サリファン!僕が向かうから、サリファンは舞踊部へ!」

「ダメだ!ネフェリア、1人で対応するな!!」

僕が生徒と現場へ向かおうとすると、サリファンが腕を掴み、止める。


「じゃあ、サリファン!もう、生徒会室にキリウスが戻っているはずだから、キリウスを呼んでこちらに向かわせて?それから、サリファンは舞踊部に!」

「ネフェリア!!」

僕は腕を振り払い、走り出す。

サリファンが慌てた様子で呼ぶ声が聞こえるが、舞踊部も至急対応が必要だし、こうするしか無い。
体術ならサリファンより、もしもの時は僕の方がいいし、キリウスが来るまでなら対応出来る。


生徒について行くと、かなり奥の今は使われていない教室だ。

…奥に進めば進むほど違和感を覚えた。


この小柄な生徒はなぜ、こんな奥に?
この辺りの教室は今は使われていない。


だが、虐めが起きているなら問題だ。

違和感を覚えつつも向かう。


そして、小柄生徒が指差すクラスに入ると、1人の大柄な生徒が、床に蹲る生徒を蹴ろうとしているのが見えた。

「やめろ!!」

僕は声を発して、2人に駆け寄ろうとした瞬間…

パタン…


背後から扉の閉まる音が聞こえ、振り向く。


そこには、ピンクの髪の青年が笑みを浮かべながら、扉に鍵を掛けていた。


「…フィフィル…カトローザ…。」

ネフェリアは笑みを浮かべるフィフィルに、一瞬驚くが、全てを理解する。


これは、フィフィルの罠だ。

何故ヒロインが?

…しかし、まずい状況で、あるのは確かだ。

フィフィルから視線を外し、大柄の男と、もう1人…蹲っていた男も立ち上がり、こちらを見ている。

僕は、その男2人を知っていた。

今世では、まだ関わりが無く、忘れていたが…前世では、かなりお世話になった…。


そう、僕を崇拝し、ネフェリア悪役令息の取り巻きの子爵の息子達。

まさか、フィフィルの取り巻きに?


ニタニタと笑う男達にネフェリアは自然と距離を取る。


しかし、背後からフィフィルがネフェリアに抱きつく。


「ネフェリア様…。逃しませんよ。」

クスクスと笑う姿には、ヒロインの影も無く、悪魔のようにいやらしく、顔を歪めていた。




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