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ネフェリア、学園編

サリファンの初恋

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「ねえ、サリファン…ここわかる?」

珍しく僕の部屋に訪ねて来たのは、プロント の妖精。

僕の想い人。

部屋に彼が入ってから、僕の心臓は爆発するのでは?と思うほど脈を打っていた。

「どこ?」

僕が彼が指差す教科書を覗き込むと、甘い花の香りが鼻腔をくすぐる。

形がいい爪が艶やかに光、少し伸び始めたプラチナの前髪から覗くアメジストに、僕は飲み込まれないように必死だ。

「ああ…ここは…」

僕の説明を必死に聞きながら、ペンの頭を口に含む仕草に喉を鳴らしてしまった。

真剣な彼には届いてなかったようでホッとする。


「なるほど!さすがサリファン!カウディリアン抜いて、首席だもんね!」

フワッと笑う彼の笑顔が好きだ。

優しい彼、美しい彼は最強の男性達の初恋の相手。

僕も恋焦がれているが、実際彼らに僕は勝てないだろう。

何度も諦める努力をした。

彼を忘れようと一時期勉強に没頭した。だが、会いたくてたまらなくなり、騎士団に顔を出す。

そんな繰り返しだ。


もうすぐ、ヴィヴァリアン皇子は18歳を迎える。

彼はヴィヴァリアン皇子のモノになってしまうのか?


もし、そうなったら僕は何を目標に生きるのだろうか。

幼少期から何に対しても興味が湧かなく、ただ親の指示に的確にこたえる事に集中し過ごしていた。

だが、彼を見た瞬間から色の無い世界が、彼だけ美しく色鮮やかだった。

僕は紫色が好きになった。

いつしか、ただ指示に従う事が、彼の側にいるための目標となった。

そうだ、誰かのモノになったとしても、側にならいれる。


……それだけでいい。

……それだけで……


「サリファン?」

ネフェリアに呼ばれて、ハッと意識を戻す。

「どうしたの?…家から連絡あったんだよね?何かあった?」


僕の感情に気付くのは君くらいだよネフェリア。


「……ちょっとね。大丈夫だよ。後はどこ?」


少し心配そうに眉を下げながら、彼はまた教科書をめくり指をさした。

僕はそこを説明しながら、父からの連絡に頭を巡らせていた。

家からの使いの執事から聞いたのは、僕の縁談だ。


僕と婚約をしたいと言う申し込みが来たらしい。

伯爵の位の女性、歳は僕より下。

一度パーティーで会った事があり、向こうが一目惚れらしく、位が我が家より低い為、紹介と言う形で連絡が来たようだ。

父は僕がネフェリアに惚れているのを知っている為、今まで婚約の話が出ても断りを入れてくれていた。

僕が何かに夢中になった事を喜んでいたからだ。


そんな父が、僕に連絡をしたっ言う事は、その紹介先が厄介なのか、ヴィヴァリアン皇子のこともあるからか…。

だが、言伝には僕が嫌で有れば、すぐにお断りをしてくれると…

父の優しさを感じた。


もしかしたら、ここが唯一諦める事ができる瞬間なのかもしれない。

ここが潮時なのかもしれない。


そんな事を考えていたら、ドアをノックされ、僕の前に彼が現れた。


神様…なんて残酷なんだ。

やっと決心しようとしたら、彼を僕の前に遣す。


真剣な横顔が好きだ。

柔らかくサラッとしたプラチナブロンドが好きだ。

綺麗な彼の心を現すようなアメジストの瞳が好きだ。

フワッと笑う笑顔が好きだ。

僕を呼ぶ透き通る声が好きだ。

ネフェリア……

僕はどうしたら君を諦められる??




「サリファン…やはり、君はすごいね。すごくわかりやすかった!ありがとう。」

彼は振り向き、僕に笑顔を向ける。

「…好きだ。」


ポツリと呟いてしまい、ハッと口を塞いだ。


だが、彼の耳には届いてしまったようだ。

彼は大きな瞳をより大きく広げて僕を見ていた。



僕は気持ちだけはせめて伝えようと思った。


「ネフェリア…僕、ずっと君が好きなんだ。…君に何かを求めている訳じゃない、だけど…気持ちだけは伝えようと、思って……。」


初めて言葉にした瞬間、僕は涙を溢してしまった。


感情が湧き出るように流れる涙が止められず、情けなくなる。


必死に拭うが、止まらない。

最愛の人の前で……


くそっ……


すると、ふと、頬に触れる感触に心臓はが跳ねる。

ネフェリアは手で僕の両頬を包み、顔を覗き込んできた。

彼のアメジストの瞳が優しく光る。

そして、彼の瞳にも涙が浮かんでいた。


「サリファン…僕のこと…そんなにも想ってくれてたんだね。…気付かないでごめんね…ありがとう…。」

彼のフワッと笑う笑顔に僕は惚けながら涙を流す。


「僕ね、ある目標があるんだ。だから今はそれでいっぱいいっぱいで、どうしても好きとか、分からないんだよ…。考えれなくて。…だから、、。」


誰も好きではない?

皇子も?


キリウスも?


僕は切なく歪む彼の頬に手を添えた。

「まだ、恋をしていないの?」


僕の問いに彼は恥ずかしそうに頷いた。


「…ネフェリア…僕、何度も君を諦めようとしたんだ。だけど、諦める事が出来なくて…だから、君がその目標を達成したら、僕を見てくれないかな?…それでもダメだった時はちゃんと諦めるから…だから、それまで君を想わせて?……好きでいさせて下さい。」


僕は彼のおでこにキスをした。

彼の温もりが唇に触れ、幸せを感じる。

願いを込めたキス…


彼は戸惑いつつ、顔を赤らめ頷いてくれた。


「…かなり待たせて、それでも答えられるかわからないよ?」


僕はそれでもいいと、頷いた。


すると僕の好きな笑顔を浮かべ、僕の額にキスをしてくれた。


ネフェリアの唇の感触に僕はまた涙を流す。


ああ、僕の初恋。

父上…申し訳ございません。


まだ、諦められそうにありません。


情けない息子で申し訳ございません。
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